遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜
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エピソード5 〜入学式のいざこざ
「・・・・・・・・・であるからにしてーーーーーーーーー、というわけで、皆さんには健全なデュエリストを目指してがんばってください。私からは以上です。」
鮫島校長の長い長い挨拶もようやく終わりを迎え、さて解散となったところで、
「えーーー、叢雲 紫苑君。校長室まで来てください。」
予想していた通り、呼び出しをくらう。ちょうどいい。こっちも幾つか問いただしたい事があるからな。
配られたPDAにインストールされている地図を頼りに校長室へと向かう。
「呼び出してすいませんね。紫苑くん」
「えぇ、こちらも幾つか聞きたいことがあったので……まず、俺の制服が何故コレなんですか!!」
バンっと音を立てて、机に叩きつけられたのは青のラインが入った白色を基調とした制服ーオベリスク・ブルーの生徒が着用する制服だ。
基本、配属された寮によって制服の色が変わる。
オシリス・レッドは赤色、ラー・イエローは黄色、オベリスク・ブルーは青色だ。
しかし、問題はそこではない。何故俺がオベリスク・ブルーに配属されているかということだ。
このデュエルアカデミアに高等部から入学する生徒は男子で入試の成績がよかった者はイエロー、悪かった者はレッドに入れられる。そして、ブルーは中等部で成績優秀だった者と女子生徒全員が入れられる。
そして、俺が渡された制服の下はスカートになっている。
つまり、俺は女としてこの学園に登録されてしまっている。
「女の子が女子用の制服を着るのは当たり前ですよ」
「俺は男だ!」
「今から2000年前に若い男が中国で…」
「そんな泉に落ちた覚えはない!!いい加減にしないと怒りますよ!」
「えぇ、すいません。ふざけ過ぎました」
悪びれもせず言う鮫島校長
「紫苑君の制服や寮に関してはうちの職員のミスですね。すいませんね」
「あともう一つ。シェアルームはわかるんですけど、よりにもよって女子寮、しかもなぜ実の姉と一緒なんですか!!」
まだ家で一緒に過ごす分には問題は……たぶん無い。だがしかし、アレと一緒に学園生活を送るとなると俺の平穏な生活が木っ端微塵に粉砕されること間違いなしなのだ。
「それは私がやりました」
「原因はあんたかよ!?なんで!?」
「シェアルームと言っても優等生用に作られたVIPルームでかなり広いですし、あと紫苑君が女子と登録されてしまっていた以上、見ず知らずの女子生徒と部屋をシェアさせるわけにもいかず、一度登録されたのを変更するのも手間ですので、どうせならあなたのお姉さんと一緒にしてしまえと思ったわけです。それに、お互いに他人に見られたくないカードとかあるでしょう。」
「あんたの怠慢が原因だな!?それと社長がなんか俺ら用の家建てやるとか無茶苦茶なこと言ってたんですが、どうなったんです?」
「あぁ、アレはですね、今建築中です。一学期の終わり頃には完成予定です。なので、今の部屋は一時的なものですよ。」
「姉との同室は変わらないんですけどね……」
はぁ、やっていけるかな?心配になってきたよ…トホホ
◆
「じゃあ用が済んだんでもう戻りますね。」
「ちょっと待って!私の話がまだですよ!」
「っち……なんですか」
めんどくさそうなのでさっさと帰ろとしたが止められてしまった。荷物の整理とか色々やることがあるんだが…
「あまり長いのは嫌いなので、手短に」
先に釘をさしておく。校長挨拶だけで1時間するような人とまともに会話したくないからね
「では、単刀直入に。紫苑君、君は実技試験でサイバー・エルタニンとキメラテック・オーバー・ドラゴンを使いましたが、それはどこで手に入れたのですか?」
「キメラテックはアンティデュエルを申し込んで来た身の程知らずが居たので返り討ちにしたら、泣きながら喜んで渡してくれました。エルタニンは普通にパックで出しましたが、なにか?」
アンティを申し込んで来たバカはデュエルを始める前に女やら男装やら罵ってきたのでパーミッションで何もさせずにじわじわといたぶったら、泣きながら喜んで渡してくれた。今考えると相手はドMだったのかね?
「使用を禁止してください。あのカードは相手に全力でぶつかるサイバー流のリスペクト精神に違反するという理由で使用が禁じられたカードなのです。」
「断る。リスペクト精神に反するという理由で使用を禁止するルールは無い。そんなに使わせたくないのなら、コ○ミにでも問い合わせて禁止・制限リストに載せればいいじゃないですか。最も今の理由じゃあふざけるなと言われて突っぱねられるのがオチですがね。」
「しかし、リスペクトが」
まだ渋るか……鮫島
「カードを大切にして、カードの無限の可能性を切り開き、新たな戦術を生み出すこともリスペクトです。サイバー流のリスペクトを押し付けられる義理は無いですよ。」
「・・・・・・・・では、デュエルで決着をつけましょう。私が勝ったらあのカードの使用を禁止してもらいます。」
いうが早いか早速デュエルディスクを構える。
こいつも、デュエル脳か。理責めで攻めれば、すぐに諦め、なんでもそうやってデュエルで決めようとする。大概にして欲しいね
「嫌ですよ」
「なぜです!デュエリストたるものデュエルを申し込まれたら受けるものです」
俺の拒否に驚いた様子を見せる
「今からやるのはデュエルではなく賭け勝負です。俺には何のメリットも賭け事なんて受けだけ無駄です」
「リスペクトに反するカードを使用を許可します」
「そんなものあなたが許可を出すまでもなく、平等に与えられた権利です。そんなもの賭け金にすらなりません。」
しばし、沈黙の後、鮫島が口を開く
「なら、紫苑君が勝ったら単位をあげましょう」
その言葉に首を縦に振る
「「デュエル」」
紫苑LP4000 鮫島LP4000
「先行は譲りますよ」
白々しい。元々サイバー流は後攻を取るんだろ
「ドロー。トレード・インを発動して手札のレベル8のモンスターを捨てて、2枚ドローする。俺は【ガーディアン・エアトス】を捨てて、二枚ドロー。さらに永続魔法【未来融合ーフューチャー・フュージョン】を発動して、【キメラテック・オーバー・ドラゴン】を選択し、デッキから16体のモンスターを墓地に送る。さらにカードを3枚伏せ、永続魔法【生還の宝札】を発動してターンエンド。」
墓地に送ったモンスター
サイバー・ドラゴン×3
プロト・サイバー・ドラゴン×3
サイバー・ドラゴン・ツヴァイ×3
サイバー・ヴァリー×3
サイバー・エルタニン
サイバー・ラーヴァ×3
紫苑
LP4000
手札1枚
魔法・罠伏せ3枚
永続魔法【生還の宝札】
場無し
すまん、エアトス…アレ使うぞ
『大丈夫です。それにあの腐れハゲ達磨を切り刻みたいんで。サクッと殺っちゃいましょう。』
「私のターン、ドローです。【強欲な壺】を発動して2枚ドロー。いきますよ。手札から【パワーボンド】を発動して、手札の【サイバー・オーガ】二体を融合召喚。
現れよ!【サイバー・オーガ2】!!
さらにこのカードの攻撃力はパワーボンドの効果で二倍になりますよ。」
鮫島手札6→7
【サイバー・オーガ2】 ☆7 ATK2600→5200
「いけ!サイバーオーガ2!ダイレクトアタック」
「トラップ発動【リビングデッドの呼び声】。これで墓地から【ガーディアン・エアトス】を攻撃表示で特殊召喚させる。さらに墓地からモンスターが特殊召喚されたので【生還の宝札】の効果で1枚ドロー。」
紫苑手札1→2
「バトルは続けます。オーガ2でエアトスに攻撃!」
「【ガード・ブロック】を発動して、ダメージを無効にし1枚ドロー。」
「だけど、これで紫苑君の壁モンスターはいなくなりましたよ。私は手札から「待った!!」なんですか?」
「【ガーディアン・エアトス】が戦闘もしくは効果で破壊された時、手札から【ガーディアン・デスサイス】を特殊召喚できる!」
「なんですと!?」
エアトスの翼が黒く染まり、その身を闇が包み混み、それが晴れると禍々しいオーラを放つ悪魔になる
「漆黒の翼を持ちし、最凶の守護者よ。全ての魂を狩り尽くせ!蹂躙せよ!ガーディアン・デスサイス!!」
【ガーディアン・デスサイス】 ☆8 ATK2500
「ふ、ふん。そのモンスターでは私のモンスターは破壊できませんよ」
「デスサイスの効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、デッキから装備魔法【死神の大鎌ーデスサイス】を装備できる。」
デスサイスの手に大鎌が握られ、禍々しい黒いオーラを放つ
「装備したところでどうってことないですよ」
未だに自分の勝利を確信しているのか強気な態度を見せる鮫島。
「【死神の大鎌ーデスサイス】は互いの墓地に存在するモンスターの数×500ポイント攻撃力を上昇させる。俺の墓地には17体、あんたの墓地にはオーガ2体。合計19体。よって、9500ポイントアップさせる。」
【ガーディアン・デスサイス】 ☆8 ATK2500→12000
「攻撃力…12000…だと。【サイバー・ジラフ】を召喚して生贄にしこのターン発生する効果ダメージを無効化する。さらにカードを二枚セットしてターンエンド。」
鮫島
LP4000
手札1枚
魔法・罠伏せ2枚
場
【サイバー・オーガ2】 ☆7 ATK5200
紫苑
LP4000
手札1枚
魔法・罠伏せ1枚
永続魔法【生還の宝札】
装備魔法死神の大鎌ーデスサイス
場
【ガーディアン・デスサイス】 ☆8 ATK12000
「ドロー。【強欲な壺】を発動して、二枚ドロー。さらにもう1枚【生還の宝札】を発動しておく。
バトル、デスサイスでオーガに攻撃!」
「かかった!トラップ発動【聖なるバリアーミラーフォース】。これでデスサイスは破壊ですよ。プロでもあるあなたが勝負を急ぎましたね。………え?」
強烈な閃光がデスサイスを焼き、俺たちの視界を一時的に遮断する。
そして、フィールドには今だ健在なデスサイスが
「な、な、なぜ!?なぜだ!」
「どのみちもう勝負はついてんだよ。デスサイスはフィールド上から墓地に送られた時、手札を1枚墓地に送ることで何度でも蘇生する。さらに【生還の宝札】のおかげで俺の手札は尽きることはない。さぁ、誰が勝負を急いだなんでしょうねぇ?マスター鮫島さん?
ついでにデスサイスの第二の効果は発動はしない」
無限ループ。何をしようが蘇り、確実に相手の息の根を止める。
さて、どうやっていたぶったものか?
「『さぁ、蹂躙の時間だ!!』」
俺とデスサイズの声が重なる
「速攻魔法【死者への供物】を発動!次のドローフェイズをスキップする代わりに、モンスター一体を破壊できる。効果でオーガを破壊!」
地面から手が伸びてきてオーガを地面にひきづり込もうする
「させません!速攻魔法【融合解除】!オーガ2をデッキ戻し、墓地の【サイバー・オーガ】二体を特殊召喚します。」
「トラップ発動【激流葬】!場のモンスターを全て破壊!そして、蘇れ!デスサイス!さらに効果でデッキから死神の大鎌ーデスサイスを装備。生還の宝札の効果で二枚ドロー。ついでにデスサイスの効果で墓地に送ったのがモンスターだったため攻撃力が上昇します。」
ガーディアン・デスサイス ATK12000→12500
「デスサイスでダイレクトアタック!切り刻め!フォビドゥン・レクイエム!!」
『さぁ、貴様のくだらないリスペクト精神やらで迫害されたカードたちの怨念をその身に受けるいい!!』
「ぐ…ぐわぁぁぁぁぁぁ」
鮫島LP4000→-8500
「まだだ!速攻魔法【死者への供物】を発動して、デスサイスを破壊し、もう一度蘇れ!デスサイス!第二の効果でデッキから大鎌を装備し、蘇生時、捨てたカードがモンスターだったため攻撃力が上昇。さらに生還の宝札の効果で2枚ドロー。
バトルフェイズ中に特殊召喚されたため、もう一度攻撃できる。やれ!デスサイス!!
切り刻め!フォビドゥン・レクイエム!」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
鮫島LP-8500→-21500
「もう一度【死者へと手向け】を発動して、デスサイスを破壊、手札を1枚墓地に送り蘇生、生還の宝札の効果で2枚ドロー。さあ、ラストだ!デスサイス殺れ!フォビドゥン・レクイエム!!」
鮫島LP-21500→-24000
◆
「死んだか?……6回キルはやり過ぎたな…」
『いや〜、なんかスッキリしました』
いつの間にか闇堕ちした筈のエアトスが元に戻っていた
「う、うぅ……」
吹っ飛ばされ、少しの間気を失っていた鮫島校長が目を覚ました。今だフラフラとしているので、衝撃は相当のものだったらしい
「さて、俺が勝ったんで約束は守ってくださいよ」
「いいえ、紫苑君、あなたのデュエルはリスペクトに反しています。相手に反撃の隙を与えず、高攻撃力でねじ伏せ、決着がついても攻撃する。そこにリスペクトなど感じることはできません。だから、このデュエルは無効です!」
この禿げまだそんなことを言うか!?
『今度は物理的なダイレクトアタックで切り刻みましょうか??』
エアトスが大鎌を手に持って構えている。え?闇堕ちせずにそれできるの!?
『エアトスよ、そんなものでは生温い!我々が精神を汚染して一生廃人にしてくれようぞ!』
やめて!アバター!おまえがそれを言うと洒落にならない!!しかも、実際にできてしまうことが恐い…
自分でなんとかするからお前らは落ち着いてろ。
「鮫島校長…先にやっといたやつがどの口でそんなことを言えるんだ?」
「な、なんですと?」
まだわからないのか、この禿げ
「パワー・ボンドで攻撃の上がったサイバー・オーガ2のダイレクト・アタックで俺は負けていたし、それにその攻撃を防げたとしても、デスサイスが出てこなければ、俺に壁モンスターは居なくて、融合解除でオーガ2体が召喚されて、追撃も防げずに負けていた。
先にやっといて、どの口が批判するんだ?」
「そ、それは全力でぶつかりに言っただけであって、決してそういうわけでは」
「なら、俺がやったこともあんたが言うリスペクトやらに当てはまるよな?
それと今使ったデッキはサイバー流じゃあない。エアトスとデスサイスの能力をフルに活用したデッキだ。サイバーはただ布石だ。ついでにこのデッキは俺の作ったデッキの中で最弱で、所為ネタデッキだ。」
実際は融合召喚もできるがパワー・ボンドは採用しておらず、あくまで墓地融合して、モンスターを除外するだけだ
それとエアトスがどうしても作ってくれと頼まれて作ったデッキで展開力も無いし、効果破壊を苦手とする。まぁ、それでもなかなか強いんだが
「な、何故そんなデッキを…」
「サイバー流のリスペクトやらを真似てみたからだよ。相手を見下し、手加減するデュエルをね」
「リスペクトと手加減することは全くの別物です!」
「違わない。相手に全力を出させ、それ以上の力で捻り潰す。それのどこが手加減とか見下していないとか言えるんですか。」
そこまで言うと反論の余地もなくなったようで悔しそうな顔をしながら、押し黙る校長。
それすら、気にも止めずさっさと校長室を後にする。
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