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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第7章:過去から未来への歴史
  第18話:大きな世界樹の木の下で……

(世界樹)
ビアンカSIDE

「終わったぞ。これで魔界へのゲートは閉ざされた……以後、開け方は俺の一族にのみ伝承させてゆく」
世界樹の地下から戻ってきたデスピーは、ロザリーに視線を向け頷き合いながら作業終了の報告をする。
きっとエロ事を妄想しながらよ……

「ふ~ん……ご苦労さん」
私の旦那は興味なさそうに鼻をほじりながら呟き返す。
「何お前のその態度!? ムカつくんですけど」

「だってこの時代の事に興味ないし……お前等の性生活に興味ないし……放っといたって勝手に腰振り合うんだろうから、どうでもいい事だし」
「リュ、リュカピ~……頼みがあるんだけどぉ(怒笑)」
デスピーは額に青筋浮かべながら剣を抜いて懇願してくる。

「最後にさぁ……手合わせをお願いできないかなぁ……記念って言うかさぁ……ぶっ殺さないと気が済まないから!!」
本気で()り合うつもりはないのだろうけど、怒りを知らせたいデスピーはリュカに殺気を振りまいてる。

「良いよ」
「え!?」
誰も(私も含まれる)が断るだろうと思っていた……
だがリュカの返答は肯定で、剣を抜いたデスピーを硬直させる。そして……

(ドムッ!!)「うぐっ!」
リュカの拳がデスピーの腹部にめり込み、鈍い呻き声を上げ膝から崩れた。
「はい。僕の勝ちぃ☆」
その卑怯を通り越した不意打ちで、リュカは高らかと勝利宣言をする。

「ふ、ふざけんな……不意打ちで……勝利宣言……す、するんじゃねー!」
「“不意打ち”って、お前先に戦う準備してたじゃん。剣抜いて準備万端だったじゃん!」
確かに……奴から戦いを所望したわけだし、何時始まっても対応できる様にしておくのが当然よね。

「今のを不意打ちと誹謗して敗北を認めないのなら、もう一度仕切り直そうか? じゃぁ今から攻撃するぞ~」
腹に喰らった一撃が大きくて、まだ立ち上がれないデスピーに向かい攻撃宣言と共に殴りかかるリュカ。

「ちょ、待て……まだダメージが……ひ、卑怯だぞコラ!」
蹲るデスピーに容赦なく(と言っても手加減はしてる)攻撃をするリュカ。
ドラゴンの杖でボコボコにされて行くデスピーは……面白い。

ビアンカSIDE END



(世界樹)
マリーSIDE

デスピーがボッコボコにされてゆく様を楽しく拝見した私は、一夜にして距離(特に肉体的な)を縮めたリューラ達の事が気になり、負けじとウルフに擦り寄りアピールする。
リューノも同じ気持ちだったのか、私と似た様な行動でウルフに近付いていく。

どうせ世界樹でも、デスピー等との別れを惜しんで一泊するのだろうから、もう気持ちは(とこ)の上だったのだが……
「ウルフ、お前はシンの故郷の近くにルーラできるんだろ? シンもシンシアも色々思う所があるだろうから、そこまでお前がルーラで連れて行けよ。僕達は先に天空城へ戻るから……」

あれぇ~? 別れを惜しんだ乱○パーティー開催じゃないのー!?
しかも何で天空城で待ち合わせなのー?
あとは元の時代に戻るだけなんだから、何処で待ってても問題なくない?

「どうしたんですか急に? シン君との別れも惜しむ為、皆さんと同じように気球で行きましょうよ」
「ダメ。気球はデスピーに託すんだ。ここに置いていった方が馬鹿共(浅ましい人間)が悪用できなくて良い。それにシンの故郷は滅ぼされたんだろ? 僕達が土足で入り込んでは失礼だよ」

エロエロ気分上昇中だった私は、ウルフの左腕に抱き付きブーイング757だったのだが、反対の右腕に抱き付いてたリューノが納得した感じで大きく頷き身体を離してしまった為、私だけが我が儘言ってる感じになっちゃった。

リューラはシンの村が滅ぼされた現場に立ち会ったから彼の気持ちが解るらしく、気取ってるわけではなく大人しく引き下がる。
正直言えば私は我が儘言いたいのだけど、それって凄くマイナスイメージでしょ。だから聞き分け良い娘を演じる為にウルフから身体を離します。

「おいリュカピー。だったら最初から俺達を最後に送り届ければ良かったんじゃないのか?」
おぉ……確かにその通りじゃん!
なんでこんな無駄な事してんの?

「お前は自分が滅ぼした村を見たいのか? その村の生き残りの悲痛な表情を愛でたかったのか? ドS大王デスピーだったのか?」
「あ、いや……そういう事では……す、すまん……」

「滅ぼされ荒れ果てた村跡なんて誰にも見られたくないだろう……僕等は他の仲間の故郷で存分に別れを済ませてきた……お前等は会おうと思えば何時でも会えるんだし、これ以上のお別れパーティーは不要だよ」
シンとデスピーの肩に手を置き、優しい笑顔で別れを告げるお父さん。

こうやって最後に格好いいとこ見せちゃうから、みんな勘違いして尊敬しちゃうんだろうなぁ……
ウルフの顔に視線を向けると、キラキラした瞳でお父さんを見てはるよ。
『リュカさん超格好いいっす!!』的な事思ってるんだろうなぁ……

「じゃぁシン君、シンシアさん……ブランカまで送りますよ」
お父さんの“終わり良ければ全て良いんじゃね?”的格好良さに、両目ウルウルになってる二人に近付き話しかけるウルフ。

シンもシンシアも、お父さんに何かを言おうと口を開けるが、当のイケメンが右手を翳して遮り、笑顔を向けて“別れ”の言葉を言わせない。
まるで『“さようなら”は無しだよ』と言わんばかりに……

だから二人は、唯々涙を流しながら頭を下げるだけ。
どんだけお前は格好いいんだコノヤロー?
サムズアップしてルーラを唱えたマイダーリンの心まで鷲掴みだぞコノヤロー!

ウルフを含む3人が居なくなり、寂しくなったパーティーの面々を見渡すと、他の連中……家族までもがウルウルEyeでパパを見てるんです。
あれ……私ってばマイノリティー?

マリーSIDE END



(ブランカ)
ウルフSIDE

「じゃぁ二人とも頑張れよ」
俺はブランカの入り口までシン君・シンシアさんを送り、寂しさを出さない様に笑顔で別れを告げる。
もう二度と会う事のない若者を見詰め。

「あ……色々ありがとうございました。リュカさんにも宜しくお伝え下さい……多々生意気な事を言ってしまいましたが、心から感謝しておりますと」
「あの私も……ビアンカさんに謝っておいて下さい。自分の事しか考えず、色々失礼な事を言ってしまいましたから……」

「ああ……良いの良いの、気にしなくて良いんだよ。あの二人も……いや、俺を含めたリュカ家全員も自分達の事しか考えてないからね。それに、こんな感じになるのが恥ずかしくて、俺に二人を送らせたんだから……面と向かって別れるのが辛かったんだと思うよ」

俺は鼻の奥がツンとする感覚に見舞われながら、懸命に泣かない様努力し明るく別れを伝える。
シン君は真面目で良い子だったから、俺も何だか弟が出来たみたいで楽しかった。
感情的に連れて帰りたい思いではある。

「俺……シンシアが殺されて発狂しなかったのはリューノちゃんのお陰だと思ってます。失意のどん底で気丈に振る舞えたのは、ウルフさんが導いてくれたからだと思います。再度シンシアを抱き締める事が出来たのは、リュカさん等ご家族のお陰だと思ってます。世界を平和に出来たのは仲間みんなの力だけど、俺が俺であり続けられたのはリュカ家のお陰です! 本当にありがとうございました」

「や、止めろよ……泣きそうになるだろ」
二人に背を向け涙を流しながら強がる俺……
今の俺にはこれが精一杯だ。

「私達……頑張って元気な子供を育てます。そして皆さんが居る未来への大切な絆を残していきたいと思ってます。こんな事しか出来ないけど……それこそが私達に出来る精一杯の恩返しだと思いますから!」

もう我慢できなくなった俺は、勢いよく振り返ると二人を抱き締め涙を流した。
「頑張れよ」
本当はもっと色々言いたいのに、そんな言葉しか出てこない。

この二人ならきっと大丈夫。

ウルフSIDE END



(世界樹)
マスタードラゴンSIDE

また戻ってきやがった。

「おい、皆との別れは済んだのか? もうここには用無いだろう」
「うるせー馬鹿。僕だって戻りたくなかったけど、未来へ帰るタイミングはお前次第なんだ。そのタイミングを知らせる為に、わざわざ戻ってきてやったんだろが。別れを惜しんでる最中にタイムスリップさせられたら興ざめだからな……」

「それはそれは優しい心遣い、痛み入りますよ。で……もうタイミングとしてはタイムスリップ開始して宜しいのですかな?」
「よく見ろ馬鹿。一人足りないだろ馬鹿。ウルフが合流してからだ馬鹿」
“馬鹿馬鹿”と連呼しおって……

「それにしても最後は随分とアッサリした別れでしたねお父さん」
詳しくは知らないが、マリーと呼ばれる娘の口調から最後の別れは淡泊だった事が窺える。
この男の事だから最後まで騒がしいと思ってたのだが……

「え……だって面倒臭いじゃん。もう人数も少なくなってきたし、アイツ等を怒らして終わり程度じゃん。もういいよ、最後だけ綺麗に終わらせれば好印象が残るからね」
最低な理由だ。

「リュカらしいわね……ウルフ君には言っちゃダメよ。結構思い入れしてたみたいだから」
「解ってますよ奥さん。だからアイツにシン達を任せたんだから。きっと赤い目で僕等に合流するぜ。思わず笑うなよ(笑)」

コイツはどんだけ人を馬鹿にしてるんだ?
そんな事を考えてたら、最後の一人が部屋に入ってきた。
リュカの言う通り目を赤く腫らして……

「ぷっー! お前目が赤いよ? 泣いてきたの? 号泣してきちゃったのぉ?」
お前さっき笑うなって言ってたよな!?
「泣きますよそりゃ……弟みたいで可愛かったんですから。アンタも少しは泣けよ!」

「僕だって泣きたいよぉ……先祖があんなんなんだから(笑) 素晴らしいのは顔だけだったじゃん!」
「アンタの先祖なんだから仕方ないだろ」
放っておくと何時までも漫才を続けそうなので……

「ではタイプスリップ開始して宜しいのかな?」
私は切り上げさせる為に、コイツ等の会話に割って入る。
すると……突然連中の姿がぼやけだし、見る見るうちに消えてしまった。

多分、未来の私がこのタイミングで戻ってくる様セットしておいたのだろう。
はぁ~……また未来であの連中と会うのか。
今のうちから人間になれておいた方が良さそうだな。

マスタードラゴンSIDE END



 
 

 
後書き
次話より舞台はグランバニアです。
完結まであとちょっと……
頑張ります。
だから感想下さい。 
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