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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第六十三話 Dynamo

 
前書き
イレギュラー発生地区を調査し終えた、その時。 

 
エックスがバーン・ディノレックスと戦っている最中、ハンターベースでは突然施設内に響き渡るけたたましいアラーム音。

「な…何だ?」

ワクチンプログラムをイレイズしたイレギュラーに摂取させようとしていたライフセーバーは足を止め目を見開く。
放送にてシグナスの怒号にも似た声が轟いたのはその次の瞬間であった。

シグナス『緊急事態だ!!奴が…ダイナモが再び姿を現した!!ルイン!!至急応戦を!!』

ルイン「了解!!」

放送を聞くや否やルインの行動は迅速だった。
エニグマの時の失敗を繰り返さない為にハンターベース周辺の警戒を強化していた事が功を奏し、しかも丁度ルインとゼロがいるという幸運にも恵まれたと言えるだろう。
しかしゼロはペガシオンとの戦いのダメージが癒えていない。
だからルインだけの戦闘になる。
既に待ち受けていたルインを前にダイナモは目を見開いた。

ダイナモ「君達が噂に名高いルインちゃんか。また遊びに来たよ。暇だったでしょ?」

ルイン「おかげ様でね。のんびり休んでいる暇も無いくらいだよ」

ルインはZXバスターにエネルギーを集束させようとする。

ルイン「はっきり言っていい加減しつこいよ君。一体何がしたいの?」

ダイナモ「だから君達の邪魔をするだけ、君らもシグマの旦那も正直理解に苦しむよ。何時も何時もマジな面しちゃってさ。ちょっとは肩の力抜いて生きてみたらどうなんだい?」

ルイン「君達のおかげで肩の力を抜く暇すらないんだよここで仕留めてやる。覚悟して」

ダイナモ「教えてやるよ。この世界で誰よりも冷静でまともなのはこのダイナモ様だって事を!!」

笑止の沙汰だ。
ゲーム感覚でシグマに加担し大量虐殺を目論んだこのイレギュラーの何処がまともだと言うのか。
しかもそれを自身で言うように冷静にこなしているとしたら、まさしくこの男こそイレギュラーの中のイレギュラー。
シグマよりもずっとイカれた殺人鬼だ。
しっかりとした目的を持っているシグマの方がまだ潔いと思える。

ルイン「よく言うね。そうやって斜に構えて他人を見下して悦に入ってるだけの小者の癖にさ」

繰り出されたダイナモの拳を受け止めルインが微笑む。

ルイン「軽いね。この程度のパンチなんか、アルマージやドラグーンにも及ばないよ」

そして次の刹那、ルインの蹴りがダイナモの側頭部を勢い良く殴り飛ばす。

ダイナモ「ぐあぁぁっっ!!」

フェンスに強かに叩き付けられ呻くダイナモ。

ダイナモ「クッ…やるじゃないか。こりゃあ想像以上…」

体勢を建て直そうとしたダイナモの頬にルインの拳がめり込んでいく。

ルイン「残念だけどそんな時間を与えてやるつもりなんかないしこっちも時間がないの…私の真の力を今こそ見せてやる……」

ダイナモに笑みを向けながら、徐々にルインのアーマーが朱から紅に色と形状が変化していく。

ダイナモ「なっ…ま…まさか君は…」

ルイン「でやあっ!!」

Ωナックルがダイナモの鳩尾に炸裂し、背後のフェンスを突き破りダイナモの身体が宙を舞う。

ダイナモ「がはぁっっ!!」

床に激しく叩き付けられるダイナモだが、どうにか踏み止まり地上への落下ばかりは免れた。

ルイン「逃がさないよ」

ダイナモ「っ!!」

ダッシュからのダブルジャンプで一瞬の間にダイナモの背後に回り込むルイン。

ルイン「うおりゃあああ!!」

チャージしたアルティメットセイバーを一閃させダイナモの胸部を斬り裂こうとするルイン。
しかし…。

ダイナモ「燕返し!!」

セイバーを振り下ろしたルインの背中を目掛け、ダイナモは跳躍すると同時にDブレードで一閃する。

ルイン「っ!!」

咄嗟にもう1本のアルティメットセイバーで防ぐ。

ダイナモ「パワーだけじゃ俺には勝てないよ!!アースゲイザー!!」

アースゲイザーの閃光をまともに浴びるルイン。

ルイン「舐めるな…!!オーバードライブ!!」

紅いオーラを身に纏うとバスターショットを向ける。

ルイン「ダブルチャージウェーブ!!」

ダブルチャージショットとセイバーショット(衝撃波)の連続攻撃をまともに受けるダイナモだが、バスターを放ち、ルインに直撃させ、追撃を阻害する。

ルイン「っ…やるね」

ダイナモ「ハァッ…ハァッ…そっちこそやるじゃないかルインちゃん。だが…些か自信過剰が過ぎたな!!」

更に間髪入れずダイナモはDブレードでルインに切り掛かる。

ルイン「甘いよ!!」

アルティメットセイバーとDブレードがぶつかり合う。
紫と紅の刃がぶつかり合い、放電現象が起きる。
互いに全身に強大なエネルギーを纏いつつ猛烈な勢いで刃を交えるルインとダイナモ。
我流ながらダイナモの剣技は極めて完成度が高く、最強のアーマーであるOXアーマーを纏うルインと渡り合いながら些かも後れを取らない。

ルイン「喰らえイレギュラー…滅閃光!!」

ダイナモ「甘いっ、アースゲイザー!!」

そして互いにエネルギーを収束した拳をぶつけ合うが、互いの威力を相殺しただけに終わり、相手に致命打を与える事は出来ない。

ルイン「どりゃああああ!!」

電刃がダイナモに炸裂し、空中からバスターショットを向けるとダブルチャージショットを繰り出す。

ダイナモ「Dブレード!!」

ルインの巨大なフルチャージショットを粉砕しながらルインに迫る。

ルイン「はああああっ!!」

チャージセイバーを繰り出し、Dブレードを弾く。
更にもう1度ジャンプして、ダイナモの脳天にチャージナックルを喰らわせる。

ダイナモ「っっ…どりゃあ!!」

一瞬、意識が無くなりそうになったが、ダイナモはDブレードを一閃し、ルインの胸に深い傷を負わせる。

ルイン「ぐっ…」

ダイナモ「ふう…やっぱり強いわ…マジだもんな?でもここまでさ」

ダイナモがバスターをルインに向けた瞬間である。
ルインの周りにシグマウィルスとゼロウィルスがルインの体内に入り込むとたちまち、傷が修復された。

ダイナモ「お…おいおい。何だよそれ…再生能力なんて反則だろ……?」

傷だけではなくエネルギーもフルの状態になっていくルインを見てダイナモの笑みが引き攣っていく。

ルイン「な、何…?これ…?」

動揺しているのはルインも同じだ。
ウィルスを取り込んだ瞬間、傷が修復され、エネルギーもフルの状態になったことにルインは激しく動揺する。
心なしか力が漲って来る感覚さえ覚える。

ルイン「………」

迷っている場合ではない、今はダイナモを倒し、零空間へ向かわねば。

ダイナモ「いやはや、こりゃもう笑うしかないね。良いよ。ゲームってのは一見して勝てそうに無いボスキャラを倒すことに面白みがあるってもんだからね」

ダイナモがDブレードを構えながらルインに突進する。
ルインもアルティメットセイバーを構え、突進する。

ダイナモ「そりゃあ!!」

ルイン「てええぇい!!」

互いの刃が再びぶつかり合う。
そのままダイナモは腕に力を入れてルインを弾き飛ばそうとするが出来ない。
いや、寧ろこちらが押されている。

ルイン「おりゃあああ!!」

力で強引にダイナモを弾き飛ばす。

ダイナモ「チッ、ウィルスを吸収する度にパワーアップするってのかい?こりゃ、早めに決めないとまずいな…」

持久戦に持ち込まれれば、ウィルス吸収により再生&回復とパワーアップするという出鱈目な能力で確実にやられるだろう。

ダイナモ「アース…」

ルイン「甘いよ」

アースゲイザーを繰り出そうとした瞬間、低空ダッシュジャンプで一気に距離を詰められる。

ルイン「はあああああ!!!!」

アルティメットセイバーによる連続斬りと龍炎刃を組み合わせた連携技をダイナモに叩き込む。

ダイナモ「アースゲイザー!!」

ダメージに構わず、エネルギーを収束させた拳を直接ルインの腹部に叩き込む。

ルイン「うぐっ!!」

あまりの威力に思わず膝を着いた。

ダイナモ「これで終わりだ!!」

Dブレードで四肢を両断してアースゲイザーのエネルギーを込めた拳を顔面に受け、意識を失うのと同時にルインの頭部が弾け飛んだ。

ダイナモ「やれやれ…可愛い顔してとんでもない奴だったな…さあて、お次はルナちゃんかな?またあの能力を見れれ…ば…?」

ダイナモは足を何かに掴まれたような感覚を覚えた。
ふと、足元に目を遣ると、切断されたルインの右手がダイナモの足を掴んでいた。

ルイン『ふふふ…』

ダイナモ「なっ!!?」

ルイン『はーっはっはっは…』

頭部を失った胴体が右腕と接合し、更に残りの両断された四肢も接合、頭部が凄まじい勢いで再生していく。

ダイナモ「ば、化け物かあんたは…!!?」

ルイン「我が化け物?違う、我はメシアなり、ククク…ハーッハッハッハッハ!!」

狂ったように笑うルインにダイナモの背に冷たい何かが走る。
ダイナモが注意深く見ていれば、彼女の言葉遣いが変わり、瞳の色がいつもの翡翠ではなく血のような紅になっていたのに気づけたかもしれない。

ダイナモ「じょ…冗談じゃない……無茶苦茶だ。メモリー吹っ飛ばしても復活する再生能力に加えて回復&パワーアップ能力なんてチートとかそんなレベルじゃないよこれ…。こっちもマジで戦ってるって言うのに全然勝てる気がしないよ…」

ルイン「ふはははは!!」

チャージセイバーを繰り出すルインにダイナモは跳躍してかわし、バスターをルインに当てるが、直ぐさま再生してしまう。

ルイン「ククク…メシアたる我にその程度の攻撃が効くと思うのか?答えは否…」

ダイナモ「あんたのどこがメシアなんだ…俺から見てもあんたはメシアどころか悪魔にしか見えないけど…(逃げなきゃ…こんな化け物相手にしてたら命がいくつあっても足りないよ。)」

下手をしたらシグマ以上の怪物であるルインをこれ以上相手にするのは無謀だ。
ダイナモはそう決断すると簡易転送装置を利用してその場を去ろうとするが…。
携帯端末をルインがΩナックルで奪うと同時に握り潰す。

ルイン「逃がしはせん。ここで確実に仕留めてやろう」

ダイナモ「チッ…勝つには再生出来ないほど粉微塵にするしかないか」

アルティメットセイバーとDブレードがぶつかり合う。
出力ではほぼ互角だが、最早ダイナモでも防ぐのがやっとなくらいルインはウィルスを喰らい、パワーアップしていた。

ダイナモ「くっ…やべえ…ウィルスでパワーアップするなんて反則過ぎだろ…」

ルイン「砕け散れ…アースクラッシュ!!」

繰り出されるアースクラッシュ。
今まで放たれたアースクラッシュとは隔絶とした破壊力を誇っていた。
あの衝撃波をまともに受ければ言葉通り砕け散るだろう。

ダイナモ「燕返し!!」

片手にもう1本のDブレードを取り出し一気にルインに対して振り下ろす。

ルイン「ぐっっ!!」

丁度アースクラッシュ発動後の硬直を狙っての必殺の一撃に呆気なく縦一文字に真っ二つとなるルイン。
普通のレプリロイドであればこれで終わっているだろうが、今のルインはレプリロイドの物差しで計れる存在ではない。

ルイン「ククク…」

真っ二つになった身体が即座に接合する。

ダイナモ「真っ二つにしても駄目なのかよ…」

ルイン「その程度の力で我の命を奪えると思っているのか?」

ダイナモ「全く…これじゃあどっちがイレギュラーなのか分から無くなってきたね……」

再びぶつかり合う両者、ダイナモはこれでは埒があかないと判断し、一気にケリをつけるべく疾走した。

ダイナモ「(頭を吹っ飛ばしてアースゲイザーで粉微塵にしてやる!!)」

一気に斬り上げ、アルティメットセイバーを弾き飛ばす。

ダイナモ「とどめ!!」

ダイナモがルインをもう一度真っ二つにしようとDブレードを振るおうとした瞬間、ルインはニヤリと笑うと手刀を構えると凄まじいスピードでダイナモの懐に入り、ダイナモの右腕を切断した。

ダイナモ「っ…ぐうぅ…!!」

痛みに顔を顰めながら膝をつくダイナモにルインは手に付着した人工血液を舐めとりながらますます笑みを深くしながらダイナモに歩み寄る。



































ダイナモが右腕を奪われてからは一方的であった。
ルインに腕をもがれた状態で一方的に弄られるダイナモ。

ダイナモ「がふっっ!!」

息も絶え絶えに倒れ伏すダイナモを心底楽しそうに眺めながらルインは馬乗りになってダイナモの首を締め上げる。

ダイナモ「ぐっ…ぐああああああああっっ!!」

ルイン「ククク…ハーッハッハッハ!!!!」

周囲に響き渡るは苦痛に絶叫するダイナモの悲鳴と、狂気に支配されたルインの哄笑。
しかし…。

『ストップ!!』

突如光が2人を覆ったかと思うと、2人の姿は何処にもなかった。




































ダイナモ「ん…?ここは…?」

ダイナモは目を覚ますのと同時に、辺りを見回す。

「目が覚めた?」

ダイナモ「!?誰だあんた」

気配を全く感じさせなかった女性にダイナモは警戒するが、女性は笑みを絶やさずにダイナモに指を向ける。

「どうやら怪我は大丈夫のようだね」

ダイナモ「え…?」

自分の身体を見るとルインから受けた傷が癒えていた。

ダイナモ「あんたが直したのか?」

「ま、そんなとこ。まさかルインちゃんのアーマーにあんな欠陥が出るとはねえ、アーマーを再現し過ぎたか…」

ダイナモ「まさか、あれを造ったのはあんたなのか?」

「造った…うん、まあね。どうやらウィルスを浴びていた状態で頭を吹っ飛ばされたから暴走したらしいね」

ダイナモ「ああ、あれか…」

シグマウィルスとゼロウィルスを取り込んでいた途中でメモリーを破壊されたから人格が変化したのだろう。
女性が手を翳すとルインのアーマーがいつもの朱いアーマーに戻り、女性は直ぐさまOXアーマーのプログラムを変化させると、ルインに再び戻す。

「さてと…君もこれで懲りたでしょ?イレギュラーハンターやシグマの目の届かない場所に送るから次からは気をつけるんだね」

ダイナモ「あんた何者だよ?見たところ人間のようだけど…違うだろ?」

「正解、でも教えられないの。悪いけど君の記憶は改竄させてもらうよ。君の口から漏れてルインちゃんがイレギュラー扱いされたら堪らないからね」

ダイナモ「はっ!?ちょ、ちょっと待て!!」

「待たない♪」

女性が手を翳すとダイナモは光に包まれ、空間から消えた。

「さて……後は頑張ってね…ハンターベースの皆の記憶は改竄しておいたから…」

女性がルインに手を翳すとルインの姿が消えた。

「あ…ヤバ、ルインちゃんの記憶を改竄するの忘れてた……」

顔を青ざめさせながら呟く女性。

ライト「女神殿…」

呆れたように女性もとい女神を見遣るライト博士。

「んあああ…どうしようどうしよう…」

ライト「大丈夫です女神殿。ルインなら…エックスもいるのですから……」

「そうだね…エックス君に任せよう。何だか娘を嫁に出す気分だよ……任せたよエックス君…」

女神はルインをエックスに任せて、ライト博士と共に空間の奥へ歩みだした。 
 

 
後書き
平行世界のメシア降臨。

これは女神にとっても思いもよらないことであり、元々このアーマーは平行世界のゼロのオリジナル・ボディを元にした物でありオリジナル・ボディを再現し過ぎたのが原因だと思われる。
キャラは自称メシアのオメガ。 
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