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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第五幕その五

「ドリトル先生じゃな」
「はい、そうです」
「はじめまして」
 長老さんは先生にも挨拶をしました。
「仁左衛門狸じゃ」
「お話は加藤さんからお聞きしていますが」
「わしが伊予の狸の総大将であることをじゃな」
「まさかお会い出来るとは思っていませんでした」
「話は聞いていてもか」
「はい、またどうしてこちらに」
「実はじゃ」
 長老さんはこう先生に言うのでした。
「先生ならと思ってな」
「僕ならですか」
「うむ、それでじゃが」
「それでとは」
「まあ団子か餅でも食べながら話をするか」
 長老さんはこう言ってでした、先生達をお城の外に案内してです。
 そしてです、茶店に案内してこそこでお団子とお抹茶を楽しみながらです、先生に言うのでした。
「先生はカワウソを知っておるかのう」
「ニホンカワウソですね」
「そうじゃ、もうこの愛媛にもおらんで」
「その様ですね」
「日本にもおらん様になったようじゃな」
 こう寂しいお顔になって言う長老さんでした。
「残念じゃが」
「そのカワウソのことでしょうか」
「とはいってもここの動物園のカワウソではない」
 先生達も観たそのカワウソ達ではないというのです。
「とはいってもニホンカワウソでもない」
「その絶滅したかも知れない」
「カワウソはカワウソでもじゃ」 
 それでもだというのです。
「他所から来たカワウソじゃ」
「他所からといいますと」
「人間には気付かれておらぬが今松山は揉めておるのじゃ」
 微妙な顔になってお茶を飲みながら言う長老さんでした。
「ここは狸達の街でもあったが」
「四国自体がですね」
「そうじゃ、、しかしイギリスからな」
 ここで先生のお顔を見た長老さんでした。
「カワウソが来てな、勿論相当に長生きして人の姿になれるカワウソ達じゃ」
「長老さん達と同じ」
「その連中が来てな」
 それでだというのです。
「こちらに住ませて欲しいと言っておるのじゃ」
「移住ですか」
「そうじゃ、カワウソでもな」
「イギリスのカワウソだからですか」
「どうしたものかと思っておるのじゃ」
 その移住を認めるかどうかというのです。
「そのことでじゃ」
「僕に相談をしたいと」
「そう思ってな」
 それでだというのです。
「先生と是非お話をしたいと思い」
「ここに来られたのですね」
「そういうことじゃ。先生はイギリス生まれじゃからな」
「イギリスから来たカワウソ達は、ですか」
「あちらの話も聞いてな」
「仲裁をですね」
「そして知恵も授けて欲しくてな」
 先生のところに出て来たというのです。
「先生が松山に来られたのを機にお邪魔した」
「左様でしたか」
「そうじゃ、それでなのじゃが」
「僕で宜しければ」
 先生は団子を食べながら長老さんに微笑んで答えました。
「お願いします」
「そう言ってくれるか。それではな」
「はい、それではですね」
「カワウソ達のことをお話しようか」
「一体どうした方々でしょうか」
「カワウソではあるがな」
 それでもだとです、長老さんは先生が自分の申し出を受け入れたことを喜んでからすぐに微妙なお顔になって言いました。 
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