美しき異形達
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第十八話 姉妹の力その十四
「この勝負も勝つわ」
「格闘スタイル的に相性が悪くてもだな」
「格闘スタイルの相性が悪ければ」
それなら、というのだ。
「変えればいいわ」
「格闘スタイルをだよな」
「そうよ」
その通りだというのだ、黒蘭はこう言って安心している顔で姉と怪人の闘いを見守っていた。薊と裕香も彼女の言葉を聞いてそうした。
そしてだ、ここでだった。
鈴蘭は怪人の突進を前にした、そうして。
その角と身体が自分を襲う直前にだ、その身体を。
左に動かした、それも最低限の動きで。
その動きで怪人の突進を紙一重でかわしてだ、両手に持っている刀を。
斬ったのではなかった、突いた。怪人のその身体に。
そうしてダメージを与えた、刀には光も宿らせて突きだけでなく力でもそうした。その一撃を加えてそうしてだった。
また怪人を見た、怪人は一旦突き抜け振り替えてから鈴蘭に対して言った。
「闘牛か」
「その要領よ」
その通りだとだ、鈴蘭も微笑みと共に怪人に応えた。
「成功したわね」
「そうだな、どうやら突進ではな」
「こうしてね」
敵の攻撃をかわしつつだ、かわしながらだというのだ。
「攻めてあげるわ」
「蝶の様に舞い、か」
「蜂の様に刺してあげるわ」
「わかった、ではな」
「突進はしないわね」
「俺の動きを見切っている」
だからこそかわしつつ攻められる、それでだというのだ。
「ならやる意味がない」
「それならどうするのかしら」
「俺にはこれもある」
こう言ってだ、怪人はその手に何かを出してきた。それはというと。
斧だった、しかしその斧はただの斧ではない。
柄は槍の様に長く怪人の背丈のそれに近い、しかも。
斧は一つだけでなく左右両方にその柄の上の方にある、そして柄の先には槍の刃がある。この斧はというと。
「バトルアックスね」
「ゲームとかで出て来るあれか」
「ええ、戦闘用の斧よね」
「だよな、あれを出してきたのかよ」
薊は裕香の言葉に応えて言った。
「あれは重いから使いにくいらしいな」
「そうらしいわね、けれどね」
「使えるだけの力があればか」
「相当に強力な武器よ」
それになるというのだ。
「一撃でそれこそ」
「鈴蘭ちゃんの体格だとな」
しかも鎧を着けていない、その防御力ではだった。
「攻撃受けたら終わりだな」
「そうなるわね」
「だよな、まあそれでもな」
「鈴蘭ちゃんならなのね」
「大丈夫だよ」
薊もだ、黒蘭と同じく確かな笑顔で言い切った。
「あの怪人がそんな斧出して来てもな」
「攻撃を受けないのね」
「そうさ、じゃあな」
「このまま見るのね」
「そうするよ、あたしは」
「じゃあ私も」
裕香は薊と同じく闘いを見守ることにした、鈴蘭を信じて。
黒蘭は言うまでもなかった、今も完全に信頼している顔で姉を見ている。彼女のその怪人との闘いを。
怪人は距離を詰めてきた、そのうえで。
両手に持っているバトルアックスを振るい鈴蘭を襲う、斧を右から左に一閃させて身体を両断せんとする。
鈴蘭はその一撃を上に跳んでかわした、それも垂直に。
そしてだった、跳んでから。
刀を一文字に振り下ろし怪人を斬ろうとする、だが。
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