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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第四幕その十一

 先生は加藤さんにです、笑顔で言いました。
「では次は」
「はい、松山城にですね」
「お願いします」
 案内をというのです。
「そうして下さい」
「わかりました、松山城も」
「あのお城もですね」
「とてもいい場所なので」
「では楽しみにさせてもらいます」
「そうして頂いて結構です」
「それでは」
 こうお話してでした、先生達は今度は松山城に向かうのでした。しかしその先生達がお店からお城に向かってからです。 
 お店にです、一人の飄々とした感じの小柄なお年寄りが来ました。お年寄りは色は地味ですが整った着物を着ています。
 その人がです、お店の中に入ってこう言うのでした。
「たぬきそばはあるかのう」
「あっ、今日もいらしたのですね」
「うむ、ではな」
「たぬきそばですね」
「やはり蕎麦はな」
「たぬきそばですね」
「わしはそれじゃ」
 お蕎麦ならというのです。
「だからな」
「はい、いつもの一杯を」
「頼むぞ」
「わかりました」
 こうしてです、お年寄りは二人用の席に座ってなのでした。
 たぬきそばを食べます、そのうえでお店の人に言いました。
「先程お店に面白い人が来ておったな」
「動物を一杯連れた外国の方ですね」
「うむ、その人じゃが」
「天麩羅そばを四杯召し上がっていましたよ」
「ほほう、四杯か」
「三杯ではなく」
「それはまた大層召し上がられたのう」
 お年寄りはそのお話を聞いて楽しげに笑いました。
「この店の蕎麦は美味いからのう」
「長老もいつも来て下さいますし」
「思えば金之助先生ともここではじめて会ったな」
「あの人が最初に三杯召し上がられましたね」
「その話は聞いておるな」
「はい、代々受け継がれているお話です」
 このお店にというのです。
「ですから」
「そうじゃな、しかしあの先生にじゃ」
「何かあるのですか?」
「またお話を聞こう」
 こう言ってなのでした、お年寄りは今はたぬきそばを食べるのでした。そのうえでお年寄りだけのことを考えていました。
 そして食べ終わってからです、立ってお金を置いてからお店の人に言いました。
「また明日な」
「はい、有り難うございました」
「さてな」
 お金を置いてからでした、、お年寄りはといいますと。
 先生達が去った方を見てです、こう言うのでした。
「では行こうかのう」
「どちらにですか」
「ほっほっほ、用事をしに行くのじゃ」
 お店の人に笑って言葉を返しました。
「それだけじゃ」
「そうですか、では」
 お店の人はお年寄りを見送りました、そうしてなのでした。
 この人もお店を後にしました、これが一つの出会いの前にあったことです。 
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