雲は遠くて
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29章 清原美咲 と 新井幸平 の デート (1)
29章 清原美咲 と 新井幸平 の デート (1)
2014年、1月26日、日曜日のちょうど、正午。
風向は、北北西、
気温は15度くらいの、よく晴れた空である。
清原美咲 と
新井幸平は、
自家焙煎珈琲屋の
カフェ・ユーズ(cafe use)で、待ち合わせをした。
カフェ・ユーズ(cafe use)は、下北沢駅・北口を降りて、
歩いて 5分、コンビニのローソンの 十字路を
左に曲がった、一番街 商店街内にある カフェで、
世田谷区 北沢の 3丁目にある。
店の幅1メートルほどのドアには、濃い青の、
無地の暖簾が かかっている。
店の両隣(りょうどなりには、時計店と 酒店がある。
店内には、オーナー、自ら、買い付けた
古木が使かわれている。
そんな古木のぬくもりに包まれた、
温かみのある、禁煙の店内の
カウンター席とテーブル席では、
静かに、ゆっくりと、世界トップレベルのコーヒーや、
評判の おいしい自家製スイーツを楽しめる。
新井幸平は、テーブル席で、ラフな
テラード・ジャケットにジーンズという服装で、
清原美咲 を待っている。
「幸くん、おひさしぶり!」
キャメル(camel=ラクダ色)の ウールの ロングコート、
ワインカラーのプリーツ(ひだつき)・ロング・スカート、
そんなファッションで、清原美咲は 現れる。
店内のカウンターにいる、20歳くらいの
男女2組のカップルが、人目を引く、美咲の姿に、
ちょっと振り向く。
「美咲さんも、お元気ですか?」
「うん、元気よ。幸くんも、お元気そうね!」
「ええ、絶好調ですよ」
清原美咲と 新井幸平は、テーブル席で
向かい合うと、声を出してわらう。
ふたりは、慶応大学の学生だったときの、
合唱サークルの仲間であった。
合唱サークルは、混声合唱団・楽友会という名称で、
合唱音楽を愛好する学生たちの交流の場であった。
戦後、間もない頃に創立されて、60年の歴史もあり、
入学式などの大学行事で歌ったり、
毎年12月に行われる、定期演奏会に向て、日々、
練習をしていた。
団員の半分以上が、合唱の初心者として、
入団している。清原美咲も 新井幸平も、
入団当時は、合唱の経験のない、初心者であった。
清原美咲は、1989年6月6日生まれ、
24歳。身長、164センチ。妹の美樹より、6センチ髙い。
法学部の卒業で、司法試験にも、2013年に合格して、
現在は、弁護士として、父の 法律 事務所に勤めている。
新井幸平は、1991年3月16日生まれで、
22歳。身長、176センチ。
商学部の卒業で、現在は、東証1部上場の、父の経営する会社、
エターナル(eternal)の、M&A事業部で、企業の合併、買収 の
仕事をしている。
最近まで、幸平は、サービス業が主体という、
事業の形態が似ている、株式会社・モリカワとの、
M&A(買収、合併)の、プロジェクト(事業計画)を 進めていた。
その成約に向けての、モリカワとの ディール
(deal=交渉、取引)は、新井幸平と、M&A事業部の
ベテランのふたりが中心となっていた。
しかし、エターナル(eternal)の社長たちの描いていた
当初のシナリオどおりに、M&Aは 実現できなかったのだ。
≪つづく≫
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