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雲は遠くて

作者:いっぺい
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26章 TOP 5入り・祝賀パーティー (3)

26章 TOP 5入り・祝賀パーティー (3)

「ライブ・レストラン・ビート の 赤レンガ って
わたし、好きなの!」

清原美樹(きよはらみき)が、11 の 石段 になっている
エントランス(入口)を、松下陽斗(まつしたはると)
手をつないで 歩きながら、そういった。

ライブ・レストラン・ビートの建物の、おしゃれな 深い味わいの
赤レンガの建物は、下北沢でも人気のスポット(場所)でもあった。

「赤レンガ (つく)りって、1(いっこ)ずつ、
()()げるわけだから、
手作りのよさのような…、
(ふる)()き 時代とでもいうような…、
ノスタルジック とか、 郷愁(きょうしゅう)とかの、
(なつ)かしい 雰囲気(ふんいき)があるのかもね」

「うん。そうね。見て、(はる)くん、
花束(はなたば)が すごく きれい!」

エントランス(入口)の 石段を ()がった
フロント(受付・うけつけ)の手前には、
『祝・ヒットチャート・TOP 5 』という (ふだ)の ついた、
色とりどりの スタンド(ばな)が、(はな)やかに
(かざ)られてある。

12月1日、日曜日、12時15分前で、
開演まで、あと 15分。
フロントには、チケットを手にする 来場者たちがいる。

TOP 5入り・祝賀パーティーの チケット(入場券)には、
招待(しょうたい)配布(はいふ)したものと、
予約販売(よやくはんばい)したものとがある。

「いらっしゃいませ!」

フロント(受付・うけつけ)の、2人の若い女性 スタッフの、
丁寧(ていねい)で 気持ちのよい 挨拶(あいさつ)に、
美樹と 陽斗は、微笑(ほほえ)む。

「美樹!」

美樹は (かた)を、ちょんと (たた)かれて、
()()く。

小川真央(おがわ まお) と 野口翼(のぐち つばさ)の
ふたりが来ていた。

清原美樹も、小川真央も、1992年 生まれの、
早瀬田(わせだ)大学、教育学部の3年の、21歳。

ふたりは、下北沢に住んでいる 幼馴染(おさななじ)みで、
小学校、中学校も同じ学校で、同じ教室だったことも、
何度もある、かけがえのない 無二(むに)の親友であった。

野口翼は、1993年 生まれ、早瀬田(わせだ)大学、
理工学部の 2年で、
松下陽斗と 同じ、20(はたち)だった。

「美樹ちゃん、TOP 5入り!おめでとう!」 と 真央は
満面(まんめん)笑顔(えがお)で いう。

「美樹ちゃん、おめでとう!」 と (つばさ)も いった。

「どうも ありがとう。真央ちゃん、翼くん。
真央も、もうすぐね、お誕生日。お祝いしようね!」

そういって、美樹は 真央に ハグをする。

「ありがとう…」 と 真央も 美樹を 抱きしめた。

下北沢にある、ライブ・レストラン・ビートは、
280席の キャパシティ(収容力)があって、
下北沢でも 最大級。

下北沢でも、20年にわたって 運営してきた、
ライブハウスの ライブ・レストラン・ビートは、
今年の 1013年の 2月に、
株式会社 モリカワによって、
友好的 買収が 成立したのであった。

モリカワの、ライブハウス事業を 全国 展開のための、
布石(ふせき)として、
ライブ・レストラン・ビートは、
収得価額(しゅうとくかがく)、9千万円で、
ある 有名 ミュージシャンの設立した会社から、
買い取ったのであった。

全株式を取得し、1013年 2月3日付で、
ライブ・レストラン・ビートは、モリカワの
完全 子会社となった。

モリカワは、ライブ・レストラン・ビートの 子会社化によって、
将来へ向けて、 創造的に、音楽 事業に 取り組むための、
ライブハウス 運営に関する ノウハウ(know-how)などを
効率的に 収得(しゅうとく)できたのであった。

≪つづく≫  
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