雲は遠くて
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20章 店長・佐野幸夫の誕生会 (5)
20章 店長・佐野幸夫の誕生会 (5)
「こんなすばらしい誕生日をしてもらえるなんて、
生まれて初めてで、感激しています!」
と佐野幸夫は、まためずらしく、声をつまらせる。
「夢を見ているように、ロマンチック(romantic)で、
涙が出ちゃいそうです」
真野美果は、そういいながら、ハンカチで目をおさえた。
「きょうは、わたし、幸夫さんが大好きだというので、
キッシュをつくったんです!
キノコとホウレンソウとアスパラガスとポテトを入れて、
生クリームやベーコンもたっぷりの!」
ほほえんで、そういうのは、森隼人の姉の留美である。
「ありがとう、留美ちゃん。おれの好きなものまで、
特別に、作ってくれるなんて、
おれの忘れることのできない誕生日になりますよ!」
キッシュは、フランス・ロレーヌ地方に伝わる郷土料理で、
サクサクの、パイの生地に、
生クリームと卵でつくる生地を、流しこみ、
それに、季節の野菜やベーコン、魚介類などの、
好みの具を加え、
オーブンで、じっくり、焼きあげたもので、
生地ごと、三角形に切って、皿に盛る。
ひとしきり、大感激の、幸夫と美果を、
森隼人が、テーブルの席に 案内する。
森隼人は、みんなにむかって、一礼すると、挨拶をはじめた。
「みなさま、お忙しいなかを、
本日は、お集まりいただき、ありがとうございます。
ただいまより、佐野幸夫さん、真野美果さんの
誕生パーティーを開きたいと思います。
司会は、僭越ではございますが、いいだしっぺの、
森隼人が、務めさせていただいきます。
誕生日は、
どなたにも、年に、1回は訪れるものでして、
毎年、1つ歳とることは、いやな感じもありますが、
この世に生まれてきたことを、
みんなで、おたがいに、お祝いしましょうという、
誠に、
心あたたまる、すばらしい人生のフェスティバル
(祝祭)だと思います。
本日は、心ゆくまで、楽しんでいただきたいと思いまして、
生ビールやワインなどの、お飲み物や、
お料理も、ご用意させていただきました。
ぜひとも、この貴重な、お時間を
明日への英気といいますか、元気のもとに、
したいただければと思います!」
みんなから、拍手がわきおこる。
パーティーの参加者は、都合がつかなくて、
不参加といっていた人も、参加できて、
20人以上が集まった。
すべて、恋愛進行中という、カップルであった。
森隼人と交際中の、山沢美紗や、
森川純と 菊山香織、
川口信也と 大沢詩織、
岡林明と 山下尚美、
高田翔太と 森田麻由美、
清原美樹と 松下陽斗、
小川真央と 野口翼、
矢野拓海と 水島麻衣、
平沢奈美と 上田優斗、
岡昇と 南野美菜、
谷村将也と 南野美穂、
北沢奏人と 天野陽菜。
≪つづく≫
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