魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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StrikerS編
74話:機動六課設立! 士も動く!?
前書き
StrikerS編、どんどん行くよ~
075年4月。遺失物管理部・機動六課の隊舎。
その廊下を俺は歩いていく。向かう場所は、この隊の部隊長・はやての部屋―――部隊長オフィス。
「う~む…やっぱこの手の制服とかって、堅っ苦しくていけねぇや」
首元を広げるように制服をいじる。だがあまり変化もなく、少し息苦しいのは変わらなかった。
そうこうしている間に、俺は部隊長オフィスの前までやってきた。
「ま、いっか」
おし、とネクタイを締め気合を入れる。そして部屋のブザーを鳴らす。
「どうぞ~」という声を聞いて、扉を開く。
「失礼します」
「おぉ、士君!お疲れさんやな~」
その部屋のイスに座っていたのは、俺の幼馴染で部隊長のはやて。彼女は席から立ちながらそう言ってきた。
「なんや、茶色の服も案外似合うんやな?」
「俺はそこまで似合っているとは思わないが」
「そんな事ないですよぉ。すっごくカッコいいですよ!」
「お、ありがとうなリイン」
肩をすくめて答えると、自分のイスに座っていたリインフォースⅡが俺の元まで飛んできた。
ふと見ると、はやてが座っていたイスや机とは別に、側に小さいサイズのデスクがあった。
「その小さいデスク…あったんだな。リインサイズの」
「あ、うん。丁度えぇの、エイミィさんが見つけてくれたんよ」
「へぇ…よかったな、リイン」
「えへへ、リインにぴったりサイズです!」
両手を挙げて回転するリイン。ものすごい喜びようだ。
すると再びオフィスのブザーがなり、はやては「どうぞ~」と呼びかける。
「「失礼します」」
扉が開き入ってきたのは、同じ茶色の制服に身を包んだ二人の女性―――なのはとフェイトだ。
「あ、お着替え終了やな!」
「お二人とも素敵です!」
「にゃははは…」
「ありがとう、リイン」
二人はリインの言葉に笑顔を見せつつ、視線を俺に向けてきた。なんだその目線は?
「はいはい、似合ってますよ」
「なんか無理やり言わされたっていう雰囲気がする…」
「そうだね」
「お前らがそういう感じでいただろ」
確信犯かよ、と呟くと、はやてはなのはとフェイトの近くにやってくる。
「四人で同じ制服姿は、中学校の時以来やね。なんや懐かしい」
「あはは」
「まぁ、なのはちゃんは飛んだり跳ねたりしやすい、教導隊制服でいる時間の方が多くなるかもしれへんけど…」
「まぁ事務仕事とか公式の場ではこっち、ってことで」
そう答えながら笑顔を見せるなのは。それに対し、はやても笑みを浮かべた。
「それじゃあ…」
「うん。士君もやってないんでしょ?」
「わかったよ、やればいいんだろ…」
俺はなのはの横に立ち、足を揃える。
そして三人一緒に、はやてに向けて敬礼をする。
「本日ただいまより、高町 なのは一等空尉」
「フェイト・T・ハラオウン執務官」
「門寺 士三等陸佐。三名共、機動六課に出向となります」
「「どうぞ、よろしくお願いします」」
「はい、よろしくお願いします」
三人揃って出向の報告をすると、はやても敬礼で返してきた。しかしここにいる全員が知り合いだ。形式だけの敬礼などすぐにしなくなり、そこには笑顔が残っていた。
機動六課隊舎のロビー。
そこには六課のフォワード陣を初め、メカニックやバックヤードスタッフなど、六課の部隊員とスタッフが全員集合していた。
全員が待機している先には、小さな台が設けられていた。そしてその台の上に、高町教導官とハラオウン執務官、八神部隊長とその副官であるグリフィス・ロウラン准陸尉。そして副部隊長である門寺三佐の五人が立っていた。
その内、中央に立っていた八神部隊長が一歩前に出た。
「機動六課課長、そしてこの本部隊舎の総部隊長、八神 はやてです。
平和と法の守護者、時空管理局の部隊として事件に立ち向かい、人々を守っていく事が私達の使命であり、為すべきことです。実績と実力にあふれた指揮官陣、若く可能性にあふれたフォワード陣、それぞれ優れた専門技術の持ち主の、メカニックやバックヤードスタッフ。全員が一丸となって、事件に立ち向かっていけると信じています。
ま、長い挨拶は嫌われるんで…以上ここまで。機動六課課長及び部隊長、八神 はやてでした」
部隊長の挨拶が終わり、その場が拍手に包まれた。
それから四日後。
俺はようやく書類仕事から解放され、体を伸ばしていた。
「ん~…と、あと残っている書類は…とりあえずなしっと」
デスクの上に出していた書類ウィンドウをしまい、どっこいしょと立ち上がる。
時間は丁度昼飯時、食堂にでも行って飯食うか。そう思って足を向けた。
[士君、今いいかな?]
その途中、なのはからの念話が飛んできた。何事かと思いながら、今食堂に向かっているところだと伝えた。
[じゃあ書類仕事は落ち着いた?]
[まぁ一通りは]
[実はお願いがあるんだけど、いい?]
お願い事?と疑問に思いながらも、俺は了承の返答をしてなのはの言葉を待った。
「はい!こちらの食堂で案内は一通り終了です。食堂使い方は、もうわかってますよね?」
「「「「はいッ」」」」
「丁度お昼休みです。これにて解散としましょう」
「「「「ありがとうございました!」」」」
この日、六課のフォワード陣は遅ればせながら施設や人員の紹介を、リインフォースⅡから聞いていた。
それも一通り終わり、時間もお昼休みなので4人はついでに昼食を食べることになった。
そこでエリオとキャロの他人への接し方で一悶着あったが、4人は揃って昼食を運ぼうとキッチンに向かった。
その時ふとした拍子にある人物が、スバルの視界に入った。それは自分達と同じ茶色制服を肩に掛け、ゆっくりとこちらに歩いてきていた。
「ねぇティア、あれ…」
「ん…?」
スバルはティアナに話しかけその人物の存在を気づかせる。エリオもキャロもそれに合わせるように気づき、視線を向けた。
4人の視線に気づいたのか、その人物も4人に視線を向けた。
「おっ、丁度いいや。スバル、悪いがこれ頼む」
「え?わ、わっ…!」
士はそう言うと丸めた上着をスバルに投げ渡し、自分のYシャツの袖を捲り始めた。
「か、門寺副部隊長!いったい何を…!?」
「何って、昼飯作るんだよ。お前らもいるか?あぁ後、門寺副部隊長とか言い難いだろうから、役職は抜いて呼んでいいぞ」
ティアナの言葉に士は軽く答えそのままキッチンに入って行った。
キッチンの中で、「門寺三佐、何故ここに!?」「あぁ、飯を作りに来ただけだ」「そ、それなら私達が…!」なんて会話が行われていて、四人は呆然としていた。
「え~っと…」
「何この状況…」
スバルとティアナは状況がうまく飲み込めず、何をすればいいか戸惑っていた。
しかしその傍らにいるエリオとキャロは、二人と違って目を輝かせていた。
「あれ…?二人共なんでそんな顔を…?」
「だ、だって士さんの料理って、とってもおいしいんですよ!」
「まだ一度しか食べたことないですけど、それがおいしかったんです!」
「そ、そうなの…?」
二人の言葉に意外だな、と内心思いながら士の料理を見守っていた。
「ほれ、できたぞ」
ゴトッと音を立ててテーブルの上に置かれたのは、炒められた米や卵、長ネギやチャーシューがドーム状に盛られたもの。日本でいう〝チャーハン〟だ。
あまり米文化が薄いミッドで育ったスバルやティアナは首を小さく傾げ、エリオとキャロは目を一層キラキラさせていた。
「量が少ないかもしれないが、おかわり分がないから勘弁してな」
「い、いえ!そんな…!」
「大丈夫です!」
士の言葉にスバルとティアナの二人が遠慮がちに答え、彼の作った料理を見る。
見事に湯気を立て、見事な色合いでドームを築く食材達。そのフォルムは、四人の食欲をそそるのに十分なものだった。
既にエリオとキャロは、そのそそられた食欲に身を任せかねない勢いだ。それを見た士はニヤリと笑う。
「それじゃあ、食おうか」
「「はい!」」
「「は、はい…」」
それぞれがスプーンを取る。だがここで士とライトニングの二人は両手を合わせる。
「「「いただきます!」」」
三人揃って言い、エリオはかき込むようにチャーハンを食べ始める。
その様子を見て、スターズの二人も「いただきます…」と言って、スプーンで一口目をすくう。そしてゆっくりと口に運び、口にする。
「「っ!!」」
旨い。一口目を口にし、噛んだ瞬間に感じたのはその一言のみ。
どう言葉で表せばいいのか少し戸惑いつつも、顔を上げて二人は士を見た。見られた士はまたもニヤリと笑い、持っていたスプーンで二人の食べたチャーハンを指した。
「どうだ?旨いか?」
「は、はい…」
「おいしいです!ものすごく!」
「そう言ってもらえると、こっちもうれしいな」
二人の言葉により一層嬉しそうな笑みを浮かべ、自分も一口食べる。
「―――あ、お久しぶりです士さん!」
「そうでした!お久しぶりです!」
「なんだ、改まって。何度も会ってる仲なんだから、そんな硬くならなくていいんぞ」
にしても、と二人の頭を撫でて士は続ける。
「二人共大きくなったな~、子供の成長は早い早い」
「そ、そんな…」
「えへへ…」
撫でられた二人は本当に嬉しそうに笑い、士も満足そうに笑っていた。
さっきまでコミュニケーションの話をしていた二人が、思った以上に表情豊かだしなんか副部隊長と仲いいし……
「あぁ、そうだそうだ。スバル、ティアナ」
「「あ、はい!」」
そんな中急に声をかけられて、二人は体を強張らせる。それを見た士は面白そうに笑い、頬杖をつく。
「そう緊張しなくていいぞ?今は別に上司とか関係ねぇから」
「は、はぁ…」
「にしても、お前らは二人よりも久しぶりだな」
「そう、ですね…私はあれから会話するだけで、直接会うのは六年ぐらい前ですかね?」
「私は空港火災の時以来ですから…四年前ですね」
「あぁ、なのはが言ってたやつか。俺あの時お前だって気づいてなかったんだよな~」
「えぇ!?そうなんですか!?」
実はそうなんだ、と少し照れながらチャーハンを口にする。
そして「それに、なんだ…」と言ってなんか言いよどむ士。それの様子に少し疑問を覚える二人だったが、
「二人共、大きくなったな」
「っ…!!」
「なんていうか、結構見違えたぞ」
士の言葉に、またも動きを止める。急に言われた事でびっくりしたというのもあるが、それ以上にあまりそういう事を言われなれていなかった。
だから二人は止まってしまったし、不覚にもうれしいと思ったのだ。
「あ、ありがとうございます!」
「恐縮です…!」
「ま、お前らが一応部下だって事は、不思議に感じるけどな」
あははは、と乾いた声で笑う士。その笑いが照れ隠しなんだろうなと、二人はなんとなく気づいた。
それから数十分、四人は色々な話をした。それぞれの近況やらなのはの訓練やら、時間を忘れるぐらい話し合った。
「そう言えば、なんで副部隊長は急にお昼ご飯なんかを?」
「あぁ、ちょっとこの後体動かすからな。しっかり飯を食わねぇと、体もたねぇんだ」
「でも、昼食ぐらいなら任せても…」
「残念ながら、俺はご飯派なんだ。パンや麺類じゃもたないんだ」
「はぁ…」
その時、ふと士が腕に付けたブレスレットに映る時計に目が行き、あることに気づく。
「おっと、お前ら時間大丈夫か?」
「え?―――あっ、午後の訓練!」
「マズい、遅れちゃうかも!」
「あぁ悪い、食器とかは俺がやるから先に行ってろ」
「「「「は、はい!」」」」
四人は慌てて立ち上がり、走り去っていった。その後ろ姿を見ながら、食器を重ねる。
「…さて、行くか」
士は食器を持ち、キッチンに向かった。
「さて、じゃあこれから第一段階に入っていくわけなんだけど、まだしばらくは個人スキルはやりません。コンビネーションとチームワークが中心ね。四人共それぞれの得意分野をしっかり生かして協力し合おう!」
「「「「はいっ!」」」」
時間は午後へ移り、フォワード四人となのはは海辺の訓練所にきていた。
「個性を生かして能力をフルに活用して、まずは四人チームでの戦いをしっかり身につけよう」
「「「「はいっ!」」」」
「それで、今日の訓練なんだけど……」
なのははそう言うと笑みを浮かべた。その笑みはいつもの優しい笑みではなく、少し裏のある黒い物だ。
その笑みにゾクリと寒気を感じた四人。だがそれを知ってか知らずか笑みを消さないなのは。
「悪い悪い、遅くなった!」
その時、なのはの後ろの方向から声が聞こえた。四人は少し顔を上げると、なのはの後ろにある柵と飛び越えて何かがやってくるのが見えた。
それはなのはの隣に着地すると、ゆっくりと立ち上がる。そこに立ったのは、先程会った自分達の上司―――門寺副部隊長だった。
「ふ、副部隊長!?」
「遅いよ士君」
「だから悪いって言っただろ?反省してるから」
「後悔は?」
「してない」
自信満々に答えた士に、なのはは蹴りを入れる。冗談だよ冗談、と士は笑いながら足を摩る。
その光景に四人は呆気に取られた。それを見た士は四人に近づき、それぞれの肩を叩く。
「そらそら、どうした四人共。元気ねぇな。さっき飯食ったばっかだろ?」
「そ、そうですけど…え、副部隊長がなんでここに…?」
「なんでって、やるからだよ。訓練」
その言葉に四人は今度は驚きで呆気に取られる。副部隊長が訓練?それっていったい……
「今日の訓練は、四人で士君と戦ってもらいます」
「え……?」
「「「「えええぇぇええぇえぇぇぇぇ!?」」」」
なのはの言葉に、四人は驚きの声を上げた。
その声は、訓練スペースのあるミッドの海に盛大に響いた。
後書き
次回はフォワード陣対士です。盛り上げていきますよ~!
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