雲は遠くて
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14章 美樹と詩織のテネシー・ワルツ (3)
14章 美樹と詩織のテネシー・ワルツ (3)
「わたしね、詩織ちゃんが、この女の子だけのバンドに、
参加してくれたなら、バンド名を、グレイス・フォー
(GRACE・4)って、いいかなって、考えているのよ。
詩織ちゃん、抜群にかわいいし」
と、親しげに、美樹は、話す。
「そんなことないですよ。わたしより、美樹さんのほうが、
すてきです。香織さんも、すてきですし、奈美ちゃんも、
わたしなんかより、かわいいですよ」
といって、詩織は、照れた。
「じゃあ、わたしたち、みんな、かわいいってことにしましょう。
グレイスって、優雅とか、神の恵みとかの意味ですから、
優美な、4人っていう、バンド名なんです・・・」
美樹は、詩織に、気持ちをこめて、そういった。
「すてきなバンド名だと思います!
ぜひ、仲間に入れてください。
美樹さん、香織さん、奈美さん、真央さん、岡くん」
大沢詩織は、みんなに、ていねいな、お辞儀をした。
「詩織ちゃん、ありがとう。感謝するのは、
わたしたちのほうよ。これからは、ずーっと、いつまでも、
よろしくお願いしますね。
あ~、よかったわ、詩織ちゃんが、バンドに入ってくれて!」
よほど、相性も、良いのだろう、
みんなも驚くほど、
親友のように、なってゆく、美樹と詩織であった。
「でもさあ、岡くんてさあ、なんで、いつも、詩織ちゃんと、
一緒なことが多いのかしら?」
菊山香織が、岡に、そう聞いた。
「それはですね。詩織ちゃんとは、お話ししていて、
楽しいからです」
といって、ちょっと、口ごもって、いうのをためらう、
岡昇であった。
「はあ、岡くん、それって、詩織ちゃんのことが・・・」
そういって、菊山香織も、言葉を止める。
詩織ちゃんには、何かと、癒されるんですよ。
そっれで、知らず知らずのうちに、
詩織さんと親しくなってゆくんですよ」
なぜか、岡は、そういって、顔を紅らめた。
「なーんだ、それって、岡くん、詩織ちゃんのことが、
好きだってことじゃないの!?」と香織。
「ピンポーン!正解です。けど、これは、
おれの叶わない恋だったということなんです」
と、岡は、気持ちを切り替えたように、声を大きくした。
「おれ、詩織ちゃんに、おれの気持ちを、
告ったのですけど。
見事に、フラれちゃったのです。
逆に、わたしのこと、ほんとに、好きならば、
わたしに、川口信也さんを紹介してくれないかな?
って、詩織ちゃんには、頼まれちゃいました。
それで、おれは、愛のキューピットの役を、
引き受けたんですけどね。
詩織ちゃん、信也さんと、うまくいっているようですし、
おれとしては、つらいところもあるんでしょうけど、
これって、しょうがないことですよね!」
そういって、岡は、みんなに同意を求めるから、
みんなは、うんうん、と、うなずいたりする。
だから、おれは、男らしく、身を引きながら、
詩織ちゃんのしあわせを、
いまも、願っているわけなんですよ」
岡は、うつむき加減に、言葉を確かめるようにして、
そんな話を、締めくくった。
「岡くん、偉いわ。男らしいわよ」
菊山香織は、隣にいる岡の左肩を、
励ましをこめて、軽く、さすった。
「岡くんは、立派だと思うわ」と、美樹もいう。
「岡くんは、いまに、詩織ちゃんみたいな、
かわいい彼女が、絶対に現れるわよ!」
岡と、同じ1年の、ベースギターの、平沢奈美も、
そういって、励ました。
≪つづく≫
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