美しき異形達
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第十八話 姉妹の力その十二
「先輩にも言ってくれよ」
「いえ、それはね」
「遠慮するわ」
鈴蘭も黒蘭もすぐにだった、薊に答えたのだった。
「あくまで私達は二人よ」
「二人で充分だから」
「折角の申し出だけれど」
「いいわ」
「そうか、まあそう言うと思ったよ」
薊も二人がそう答えるとわかっていた、それでだった。
この話を止めてだ、こう言ったのだった。
「じゃあ今度はな」
「今度は?」
「寮に来てくれよ」
自分達の場所にというのだ。
「お茶とかお菓子は出せるからさ」
「それにお風呂もいいから」
裕香はこちらを出した。
「ゆっくり楽しんでね」
「中々面白い場所だからな」
「そうなのね、それではね」
「機会があれば」
鈴蘭と黒蘭も二人のその申し出には素直に応えた、だが黒蘭はその中でこうしたことも言ったのだった。
「漫画もあるかしら」
「ああ、漫画な」
「それはあるのかしら」
「娯楽室に一杯あるぜ」
「それにそれぞれのお部屋にね」
二人共こう答えた。
「ライトノベルとかも多いしな」
「読む分には困らないわよ」
「ライトノベルもなのね、それもなのね」
黒蘭はライトノベルもあると聴いてさらに喜びを見せた。
「わかったわ、それではね」
「来てくれるかい?今度」
「機会を見てね」
こう話してだ、そうしてだった。
四人はここからは談笑をした、それが終わってからだった。
いい時間になってだ、薊と裕香は姉妹がいるマンションを後にした。姉妹は二人をマンションの出口まで案内した。
そのうえで別れようとする、だが。
ここでだ、薊と姉妹がだった。瞬時に鋭い目になった。
そしてまずは薊がだ、顔を右にやって言った。
「出て来たらどうだよ」
「おや、わかったか」
「あからさま過ぎるだろ」
その気配がだというのだ。
「すぐにわかったよ」
「そうか、ではな」
薊に応える形で怪人が出て来た、今度の怪人の身体の色は黒だった。
その頭は牛、雄牛のものだった。漆黒の毛に覆われた身体に頭には二本の大きな角がある。黒蘭はその怪人を見て言った。
「ミノタウロスみたいね」
「そう言うか」
「牛と人間の合いの子の怪人ね」
「その通りだ」
まさに、とだ。怪人も答える。
「俺は牛、それも水牛と人間の怪人だ」
「そうね」
「俺が出て来た理由はわかるな」
「私達に倒されに来たのね」
「違うな、御前達を倒しに来たのだ」
その逆だ、というのだ。黒蘭が言っていることとは。
「俺はな」
「そうなのね、では」
「待って」
黒蘭が出ようとしたところでだ、ここでだった。
鈴蘭が出て来てだ、こう彼女に言った。無論薊にも。
「ここは私に任せて」
「姉さんが戦うのね」
「この前は黒蘭ちゃんが戦ったから」
それでだというのだ。
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