【短編集】現実だってファンタジー
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デフォルト・フェイス
前書き
何もしないこと、あるいは成すべきことが成されないこと。
それが、デフォルト。
ある日、偶然PCでその無料ゲームを発見した。
インターネット通信を前提としたオンラインゲーム。それも広告も謳い文句も無しで、更に誰も発見できないようなサイトの隅に隠すように置いてあったそのゲームは、タイトルを「Default(デフォルト)」といった。
プレイヤー総数は、致命的に低い知名度のせいか約1000人。ツイッターの類での宣伝は一切行っていないことと存在を知っても見つけられる人間が少ないことが相まって、なぜこのゲームがオンラインゲームとして成立しているのかもよく分からない状況のようだ。ネット掲示板の片隅の、既に落ちたスレッドにほんの少しだけ記述が残っていた。
やることはごく簡単。毎日運営側が決まった時間に『マジョリティ・ゲーム』というイベントを開くので、そこに参加すること。そしてそのイベントで得られる通貨を元手にゲームをするそうだ。擬態的な内容はよく分からなかったが、戦闘要素はないそうだ。
それは、電子掲示板への書き込みやチャットとどう違うのだろうと純粋に疑問に思った私は、その真偽を確かめるためにゲームをやってみる事にした。どうせ暇だし、たまにはそんな遊びもいいだろう。
登録はメールアドレスを送るだけ。住所の類は求められず、申し訳程度の利用規約の後に私はそのゲームを始めることが出来た。最初に名前を入力し、次にゲーム内で使用するプレイヤーキャラ、アバターを作成。それが終了して次は何だろうかと思った矢先に、ゲームは始まった。
ピコピコとレトロな音源のメロディを流しながら、画面に「Default」の文字が躍る。まだ始まらないだろうと思っていた私は、PCの音量が大きすぎる事に気付いて慌てて音量を下げた。賃貸住宅で騒音問題を起こすと後後で面倒事になる。改めてPCに向かい合い、マウスを操作して「GameStart」と書かれたバーをクリックする。
効果音が鳴って、「ようこそ、DefaultWorldへ!」というMSゴシックの安っぽい字体が浮かんだ。
説明を聞くに、このネット内の世界は「デフォルトワールド」という世界らしい。
まず、運営側が例の「マジョリティ・ゲーム」を行う。そして、そのゲームに勝利した人間にはこの世界で使用できる「フォリン」という通貨を結果に応じて得ることが出来る。今の所フォリンを得る方法はそれしかないようだ。課金の類は行うことが出来ないらしい。
フォリンを得たプレイヤーは、運営の用意した物品販売所で売っているアイテム――靴下等の装備アイテムから家などの大型オブジェクトまで、割といい加減な値段で置いてある――を購入してデフォルトワールド内で使ったり、設置したりできる。
デフォルトワールドはそもそもその店以外に物らしいものが用意されないまま始まったゲームらしく、プレイヤーはそのフォリンを使って勝手に家、道、草原、川、果ては山までいろんなものを作ってこの世界を開拓出来る。お金次第でプレイヤーの思うままに開発することが出来る。
プレイヤー間でのお金の貸し借りは出来るが、プレイヤーから金を奪う直接的な手段は存在せず、戦いの要素は一切存在しない。何とも退屈そうなゲームにも思えたが、それでも実際に形成された街を見てみると結構な大きさになっている。
金を用意するのもアイテム、オブジェクトを配布するのも運営のみ。他にイベントもなければ拾えるものがある訳でもない。完全な運営依存というのは、まるで運営がこの町を支配しているようでもある。であるならば、街づくりは自分の支配する世界を奴隷に作らせているのか。などとおかしなことを考えた。
ゲームとしての最終目的について運営は何も言わない。バグがあれば修正してくれるし、要望があれば新たなオブジェクトを追加してくれることもある。ただそこで思うように過ごせばいい、とだけ言われて、私は取り敢えずゲームをスタートしてみる。
「結構でかい街だなぁ。この辺は普通の鉄筋コンクリとか道路とか……いかにも町って感じ」
見覚えのない看板ばかりが無秩序に並んでいるのに、全てを通してみれば何故か統一感のようなものを感じる。それが都会の風景の不思議な所だ。誰もかれもが自分の目的のために建てている筈なのに、結局のところ建築様式は全て同じ。例え違うものが混じっていても、それはビルとビルの隙間に挟まれて見えはしない。
しかし、プレイヤーがいない。
ゲーム内にモブの類は一切いないとは聞いていたが、この町には見た所人が見当たらなかった。本来なら都会など掃いて捨てるほどに人がいるのが普通なのに、何故いないのだろうか。プレイヤー総数が少ないから、別の場所に人が集中しているという可能性もあったが、人がいないと途端に人工物が不気味に思えてくる。
と、他のプレイヤーが前から歩いてきた。
男性アバターだ。顔は、初期のアバター作成画面で最初に表示されたデフォルトの顔そのまま。
「……なんで、デフォルト顔?」
こちらの存在に興味があるのかどうかも分からないそのプレイヤーはそのまま通り過ぎて行った。なぜアバターがデフォルトのままなのだろう。それでは他と区別がつかないし、このゲームは後からフォリンを使ってアバターの姿を造り替えることも出来ると聞いている。なのに、何故だろうか。
「変なひと。あれじゃ悪目立ちするだけじゃないの?」
表情の変わらないデフォルト顔に内心で密かに「デフォ顔」という仇名をつけながらも、私はそのまま運営が定期的に開く「マジョリティ・ゲーム」とやらが行われる場所へキャラクターを進めた。
数分歩くことで漸く辿り着いた「デフォルトタワー」の前には既に多くのプレイヤーが集まっていた。
私もそれに並ぶように後ろに歩いていく。だが、不意に前を見て心がざわついた。
「……デフォ顔だ」
前にいたプレイヤーの一人がデフォルト顔のアバターだった。さっき街ですれ違った人と同じ顔だ。気のせいか服装も同じのような気がする。さっき見かけたデフォ顔は街の外側に移動していたからその人とは別人だろう。
1人だけ見たら偶然だと思うだろう。2人でも、まだ偶然で片づけられる。それでも移動した先にまた同じ顔がいるというのは不気味だ。そして――
「その隣もデフォ顔。後ろもデフォ顔。横、も………」
次第に言葉が失われていく。
煩雑に並んだプレイヤーたちの姿が、全て同じ背丈。
全て同じ服装。
全て同じ――顔。
目の前に広がる推定数百名の全員が、同じ顔をしていた。
その顔が、一斉にこちらを向く。一様に同じ目が、一様に同じ方へ。全てが管理されたように統一された顔達が、統一感から大きく外れた自分のアバターに集中した。
並ぶ並ぶ、顔、顔、顔。感情表現用のエンジンは一切使われない無表情が自分を見ている。見ている。埋め尽くすように、一部の隙もないように見ている。何も言わない。何もしない。でも、アバターの顔だけはこちらを見つめている。
「うっ……!?」
私は急に、それが恐ろしくなった。個性を表すはずの顔が一切その役目を全うせず、無個性の集団はまるで同じ顔であることに何ら疑問を感じないように当然としてそこに立っている。そして、個性があるというだけの理由でこちらを見つめているようだった。
異常だ、この光景は。それともこの世界には同じ顔でなければいけない暗黙の了解でもあって、こんな顔をしているのだろうか。
個性を塗りつぶしているようだった。自分という存在を塗りつぶして、ひとつのシステムとして動いているかのようだった。彼らの頭上には時折チャットを行っていると思われるアイコンが点滅しているが、内容はうかがい知れない。
この世界のチャットは視界にアバターが入ってさえいれば表示されるオープンチャットと、互いの合意の上でフレンド登録をした相手にしか見えないクローズチャットの2種類があるらしい。つまり、あのデフォルト顔達はフレンド登録を済ませているのだ。
非人間的だ、と思った。こんな形でのコミュニケーションなど成立するとは思えない。互いに積極的に話をするのならばともかく、彼か、彼女かも分からない大量の顔達は一切こちらにオープンチャットを送ってくることはなかった。
どうにか恐怖を抑え込み、私は意を決してオープンチャットで彼らに話しかけてみる事にした。
『こんにちわ』
しばしの遅れを要し、一番私に近かったアバターが返答にオープンチャットを使用してきた。
『>>こんにちわ』
これは単純に挨拶に返しただけなのだろうか。それともオウム返しの悪戯かもしれない。もう少し具体的に聞いてみなければ、この異常な光景に関しても何かわかるかもしれない。
いつのまにか、私は彼らがおかしい証拠を求めていた。自分が正常で彼らがおかしいのだと証明する証拠を求めていた。
『何故、ここの皆さんは同じアバターの顔をしているのですか?』
『>>目立ちたくないからです』
『それは何故?』
『>>目立つといいことはありません。目立って称賛される可能性はありますが、その逆の可能性はもっと高いです。だから私たちは固有のアバターを作りません』
何と返信すればいいか分からなくなって、息が詰った。
そんな風に自分を仕舞い込んでまで、その「逆の可能性」とやらは畏れるほどの事だろうか。不特定多数の人間が集まるネットの場においては確かにローカルルールや暗黙の了解を知らない人間が袋叩きのようにされることはある。だがそこまでされたくないなら、そもそもゲームをやらなければいいのではないだろうか。多人数型オンラインゲームなのだ、誰にも鬱陶しがられないということに拘る必要性は感じられない。
その事を伝えようとして、思い止まる。
この手のコミュニケーションツールは自分や相手の伝えたい事がすべて文字に表れていて、尚且つそれを相手が理解できるとは限らない。私のオクッタ意見も、彼らにとっては酷く偏った思想に映るかもしれない。キーボードに途中まで打ち込んでいた文字を消して、別の言葉を打ち込む。
『何故、ここの皆さんはオープンチャットを使わないのですか?』
『>>オープンチャットの表示は私たちが話をしたい相手以外にも見えてしまうので、普通は使いません。言葉と違って文字のチャットは読み返すことが出来ますし、ログが残ります。そのことを気にしない間柄ならともかく、他の人にまで見せるのは普通は恥ずかしいです』
『今のあなたは私とチャットを交わして平気なのですか?』
『>>20人の友達と話し合って平等に話し合った結果、ここで会話をしないのは変だという結論が出ました。また、20人全員があなたにオープンチャットで一斉に話しかけるのも変だという結論が出ました。友達の友達の間でも同じ結論が出ました。そのため、先ほどこの世界に存在する「抽選器」というアイテムで、あなたの近くにいるプレイヤーを抽選にかけ、選ばれた私が受け答えすることになりました。これは普通な事です』
『フレンドが20人であるという個人情報が洩れましたけど?』
『>>私たちは20人までしかフレンドを登録しないことにしています。また、他の人が登録しているフレンドと5人以上被らないように登録を行うことになっています。この場にいる全員が20人のフレンドを持っていますが、フレンドのフレンドを辿れば全体と人間関係が繋がっています。フレンドの数にも差は出ない。フレンド内では例えクローズチャットでもフレンド全員がメッセージを見る事が出来ます』
文章を送る都度、彼は誰かとチャットで何らかの内容を送ったり受信したりして、若干の間をおいて返答を行っている。毎回毎回、私の送った文章を吟味した彼のフレンドが意見を送っているのだろう。彼はそれを基に多数派な回答を探しているのだ。
「なにそれ……何でそんなシステム勝手に作っちゃってるの?」
PCの前で軽く呻く。彼らの言っていることは日本語として理解できるが、意図が全く掴めなかった。そもそも何故人間関係をシステム的に決めているのだろう。人間には好き嫌いがあるのだから、気が合う人間と組んで気の合わない人間はさよならすればいいだけだ。それが一番後腐れがない。
「人間の意志なんてそう画一的になる訳が無い……こんな自由の無いルール、長続きする訳ない」
ひょっとして、これこそが「マジョリティ・ゲーム」なのだろうか、と疑問が頭を過る。しかし、運営がイベントを開くと予告した時間にはまだ早い。つまり彼らは元々こうなのか、それともこれが「マジョリティ・ゲーム」を効率よくクリアするための方法なのかもしれない。
気がつけば、指はキーボードの上で滑っていた。
『いつからそんなことをしているのですか?誰がそんなルールを?』
返答に移るまでの間に、今までよりも活発にチャットのやり取りが行われている。私は今、目の前にいる多数のデフォルト顔の内のキーボードを叩いている一人と会話しているのではなく、この同じ考えを目指そうとしているかのようなデフォルトの集団と会話している気分だ。
『>>私たちの名前は全員がサイトの用意したデフォルトネームを使っています。だからそれが「こうすけ」なのか「ゆうた」なのか、はたまた「しょうた」なのか、果たしてどのデフォルトネームの人がそうなのかは判別がつきません。それに、犯人探しのように対象を見つけるのは普通の事ではないし相手を追い詰める。するべきではない』
一人が全員を、全員が一人を統括する。相互監視の上で得られた安心という利益は自由を捨てる事によって成り立つ。
『今までここに来た人で、翌日から来なくなった人はどれくらいいますか?』
『>>分かりません。ですが恐らく多くはないと思います。外ではこのサイトは話題になっていませんし、私たちも話題にしません』
『それは何故ですか?』
『>>私たちの平穏というか、今の環境を壊す要因になる人はこの世界に幾らでもいます。そんな人には出来るだけ来てほしくないと普通の人は考えます。だから私たちはこのゲームを宣伝しません』
果てしなく保守的で、行動が逃げと守りに特化している。例え偶然ここに辿り着いた人が「ここの風潮やプレイスタイルはおかしい」と主張した所で、このデフォルト人間たちはその話を多数決で押しつぶして平然とした顔をするだろう。何故なら彼らは――
『変化も冒険も何も求めてないんだ』
考える事と書くことが一致した。
怒るでもなく、すとんと腑に落ちた感覚だった。
彼等はゲームをしている筈なのに、何かがおかしい。その違和感の正体を掴んだ気がした。
『運営が何も言わないから、指示すべき模範的な方角が分からないからそうしているんでしょう?成功したらみんなのもの、失敗してもみんなの所為にできる。決めた範囲を超えなければ除け者にされることはない、除け者にされなければいい。ただ自分で考えてものごとを決めるのが嫌だから責任押しつけ合えて自分の傷つかない所に収まったんだ』
チャットに打ち込める文字数が限界に近づいたためいったん切って、立て続けに投下する。
『つまりあなた達はこのゲームを楽しんでなんかいない。単なる大衆迎合主義者が民主主義ごっこしてるだけ。こんなたいそうな町を作ってるけど、金は運営が握っているんでしょ?要は運営の配る餌を待って涎を垂らしてる犬じゃないか。少しでも運営に抗議してゲームシステムを変えてもらおうとか思わなかったの?』
今までで一番チャットのやり取りが活発になった。突然の処理にサーバーそのものに大きな負荷が勝遭っているようだったが、構うものか。別に私が悪いわけでもないし。
『だいたい、この町を見て見なよ。本当なら和風の町、洋風の町、いろんな町が作れたはずだ。でも出来上がっているのはコンクリートジャングル、ありふれた都会の光景だ。珍しさもない。個性もない。ただ、自分の周囲を真似て作っていた人とトラブルになるかもしれないからってそれに乗っかっただけでしょ。つまんない現実世界の延長線上につまんない仮想都市が出来上がっただけだ。生産性もなければ楽しくもない』
返答がこない。こそこそと見えない所で多数派議論をやっているらしいが、文句を言ってくる奴はいない。何故ならその文句が他の人間と同じ不満かどうかが確認できないから。これだけの人数が居ながら向きになって反論してくるプレイヤーが一人もいないという事実がまた恐ろしい。
それほどまでに彼らは出るのが嫌なのか。目立つのが悪いことなのか。どれだけ社会において個性を潰しているのだろうか。ならば、仮想世界でも個性を殺さなければならないのなら――
『デフォルトフェイスにしなきゃ他人と会話も出来ないようなつまんない世界はさっさと出て行ったらいいんじゃないの?本当に物事を楽しむには、楽しむための努力ってものが必要なんだよ』
そう、少数派の私は堂々と言ってやった。
やがて、運営の「マジョリティ・ゲーム」が始まった。
内容はただ、2つの選択肢のうちより大衆的だと思う事柄にイエスとノーのどちらかを答えるだけというゲームだった。多数の方がフォリンを得て、少数に行ったプレイヤーは何ももらえない。予め示し合せれば誰でもフォリンを得られるシステム。何が面白いのだろうか。お小遣いを待つ子供じゃあるまいし。
運営タワーの上層にあるモニターが結果を発表する。内容は「犬と猫とどちらが好きか」。私はどちらも好きだったので何も入力しなかった。このような出来レースに参加するのも馬鹿らしいし――
「って、あれ?」
犬、ゼロ。猫、ゼロ。これは一体どういう事だろう。誰も入れていない?
その後も次々に質問が出たが、いずれも回答数はゼロが続く。呆気にとられて見上げていると、デフォルトフェイスの一人がこちらに近づいてきた。
『驚きましたか?』
『>>とても』
『先ほどの言葉を受けて、私たちの内部で分裂が起きました。共感する者もいれば今までで通りを続けたいものもいましたが、意見はまとまりませんでした』
『>>でしょうね。容易に想像がつきます。でも、そうならばなぜこのような結果に?』
『一部の人達が扇動を始めたのです。このゲームを続けるためにやむなくデフォルトフェイスになっていた人たちが、運営のマジョリティ・ゲームなしで通貨を得られるシステムに変えるための抗議活動をしようと』
『>>誰も止めなかったの?』
『一人が言い出せばフレンドの20人に伝わります。その考えに共感した人が同じ発言をすればそれが別の約20人に。後は連鎖爆発です。運営が何故こんなオンラインゲームを、何所から利益をねん出して続けているのかは不明ですが、プレイヤーが行動をしなければゲームは止まっているのと同じことです』
不気味な無表情が、心なしか先ほどまでのデフォルトフェイスと違う印象を受ける。
その理由を探して、ひとつ気付いた。
『>>ふーん……ちょっとだけ見直した』
『恐縮です』
話しかけていた彼には、クローズチャットのアイコンは出ていなかった。
こうして「Default」というオンラインゲームは一度崩壊し、運営はここに至って初めて声明を出した。曰く――数か月後、この「Default」は「間界都市ウタカタ」というバトル要素の加わったゲームへと大幅改造するのでテスターを募集する、とのことだった。
デフォルトフェイス軍団は翌日より少しずつ個性あるアバターへと変化していき、「間界都市ウタカタ」が始まる寸前にはデフォルトフェイスはほとんど残っていなかった。
人は孤独と未知を恐れて身を守ろうとする。だが慣れてしまえばその欲望は何かのきっかけで噴き出す。その欲深さはある意味で、人間が人間らしいという事なのだろう。
後書き
主人公…性別不明のだれかさん。読者の妄想次第では女の子にも男の子にもなれる無限の可能性を秘めている。
フォリン…ハンガリーの通貨「フォリント」から。深い意味などない。
おまけ
「……どうだ、メリー?」
「黒ね。このデフォルトというゲームは……実体のないペーパーカンパニーが経営している」
「操ってる組織が裏にいる?」
「ええ。それも……物理的なネットワークを用いずに遠隔から直接プログラムを組み替えている。現代の人間の技術ではそんなこと、都市伝説か魔法でもない限りできやしないわ」
「そして怪異の気配は感じなかった。そうだな?」
「私たち都市伝説にとってネットの世界は無意識の集合世界なの。だけどここからは何も感じない。見えない力で遮断しているように」
「ヨクジン……いいかげん、尻尾を掴みたいところだな」
「私メリーさん、いまヨクジンを追いかけているの……そして」
貴方たちは都市伝説を遠ざけるために何かしらの力を使った。その力の残滓、覚えたから。
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