【完結】剣製の魔法少女戦記
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第六章 正義の在り処編
第百七十七話 『リオンの能力考察、そして黒幕の影?』
前書き
更新します。
今回は翌日の話になります。
ではどうぞー。
……………先日の襲撃者、リオン・ネームレスの正体が明かされてから一夜が経過した。
どうにかシホ達が護衛した監獄施設の最高評議会の関係者達は守ることができた。
だが悪いことに他の部署が守っていた場所が警備を抜かれて関係者達は数名殺害されてしまったという。
それでシホ達が守った施設は今も厳重な警備が敷かれていて再度の侵攻を許さない構えである。
そして機動六課は捜査を再度一からやり直していた。
オフィスフロアでは数時間仮眠をとった後にシホが画面に向かって色々と調べていた。
「(リオン・ネームレス………スバルとティアナの訓練校での同期で情報が正しければ現在スバルと同じ十五歳……)」
シホはリオンについて色々と調べ上げていた。
しかし、リオンの訓練生時代の前の情報と、そして卒業した後の情報が一切公開されていない事に思わず眉をひそめる。
情報は常に更新しているはずの管理局が彼女だけ情報を公開していないのはおかしいことである。
これはもしやとシホは思い、
「誰かが情報操作をした、としか言えないわね……。でも、そんな芸当、出来る人なんて……」
それでまだ情報が不足気味なために現状は手詰まり状態になってきてしまった。
シホはそれで一回「うーん……」と伸びをしてデスク作業で固まった背筋を柔らかくする。
そこに、「ピタッ」とシホの頬に冷たいものが触れられる。
それにシホは「ヒャッ!?」と声を上げる。
見ればそこにはフィアットがジュースを持ちながら持っていた。
「ふぃ、フィア……。驚かさないで」
「ふふ……。そんなつもりはなかったのですけど、お姉様がそこまで集中しているのも珍しいなと思いまして……」
「そうかしら? 基本、私は手を抜くという事はしないからいつも通りだと思うけどね」
「そうでしたね」
それでフィアットは笑みを浮かべる。
それからすぐに表情を引き締めながらもジュースをシホに渡しながら、
「それより、やはり今回の事件は混迷しそうですか?」
「ええ。まだ黒幕が誰かわかっていないから、それにまた被害者が出てしまったからね」
それでシホは眉間にしわを寄せる。
前の世界であったらどんな手を使ってでも首謀者を特定したらすぐさまに手を打っていたシホからすれば今の自分は甘くなったな、と自覚しながらもこれくらいがちょうどいいかもしれないかなとも思っている。
「………私がお手伝いできずにすみません。お姉様……」
そこでシュン……となってフィアットが謝ってくる。
「そう言わないの。今はフィアはお腹の子供の事だけ考えていて……。すずかと一緒でしっかりと産んでもらいたいんだから。私達の子供を……」
「はいです!」
シホがフィアットの頬を撫でながらそう告げると、フィアットも頬を朱に染めて嬉しそうに返事を返してくれる。
「ですが、今回の事件はさっきも言いましたけどスカリエッティ事件並みに業が深い事になりそうです。最高評議会のメンバーが殺害されていくというのがいい証拠ですね」
「そうね。これからまだ増えていくと思うと早く止めないといけないという気持ちにさせられるわ」
それでシホとフィアットの二人はこれからどうするかという気持ちになっていた。
「ところでフェイトの方はどうだったのかしら? なにか新しい情報でも掴めたかしら?」
「聞いてみましょうか」
「そうね。ちょっと待ってね……」
シホは今もどこかで捜査をしているフェイトに連絡をとった。
しばらくして画面が開きフェイトの姿が移り出す。
『シホ? どうしたの?』
「ええ。なにか新しい情報でも掴めたかなと思って連絡を取ってみたんだけど、状況は捗っている……?」
『うーん……事件現場の捜査はあんまり芳しくないね。ランサーがルーン魔術で探っているけど、あまりいい情報は掴めていないし……』
「そう。困ったわね。少しこちらも手詰まっているのよ」
『私の方もそうだね。今は昨晩に起きた殺害現場で捜査協力をしているところだけど、いい情報はあまりないから……。せいぜい機械兵士の残骸から少しでも情報が引き出せればという感じで、待つしかないけどね』
「あ、そうね。まだ機械兵士の解析は終わっていないのよね」
『うん。あ、そうだ。新情報かはどうかはまだ分からないけど、今からあるデータを送るね』
それでフェイトはシホにとあるデータを送ってきた。
「これは……?」
『見てみればシホならすぐにわかると思う。それじゃ私、これからまた捜査の再開をするからここで切るね』
「わかったわ。それじゃまた」
『うん!』
それでフェイトはシホ達に笑顔を見せながら画面を切った。
ブツンッ!と切れた後、シホ達はフェイトから送られてきたファイルを見ようとする。
「しかし、新情報か……。なにかしらね?」
「さぁ、なんでしょうか……?」
ファイルを開くとそこには最初の被害者の現場の映像が出た。
何度か撮影された画像らしく、もうシホが知っているものとそう大差はない。
これが新情報……?と思ったが、そこで画面端に書かれている文章を見てシホはある事に気づいた。
「これは……」
そこにはこう書かれていた。
『被害者のバラバラ死体は物理的にありえない切り方をされている。どんなに綺麗に切ったとしてもここまで綺麗には切り裂くことは現代の魔法技術ではほぼ不可能である』……と。
「これは、調べる必要がありそうね」
「そうですね、お姉様。私もこの内容にはピンと来るものがありました」
「フィアも? だとすると私の考えもあながち間違いないようね。まずは確認を取りに行きましょうか。
フィア、スバルとティアナは今はどうしてる……?」
「はい。今二人はすぐに出動できるように部屋で待機しています」
「わかったわ。それじゃ確認をしに行きましょうか。リオンさんの事について……」
◆◇―――――――――◇◆
それでシホはフィアットと別れた後、スバルとティアナの部屋の前にやってきて、呼び鈴を鳴らす。
中から「はーい」とスバルの声が聞こえてきた。
「シホよ。入っていいかしら?」
『あ、はい。どうぞ!』
それでシホは扉を開いて中にいるそれぞれマッハキャリバーとクロスミラージュを磨いているスバルとティアナの二人を見る。
二人の表情はやはりというべきか少し暗いものがあった。
やはりリオンの事を考えているのだろう。
それをシホもすぐに察することができたために、
「………スバル、それにティアナ。大丈夫?」
「はい……。大丈夫です」
「あたしもです」
気丈に笑顔を見せながらそう言ってくるが、それはどう見ても無理している笑顔にしか見えなかったためにシホは何回か視線をさまよわせた後に、二人の手に自身の手を乗せて、
「無理はするものではないわ。鈍感な私でもすぐに察せるくらいに今二人の顔は落ち込んでいるわ」
「……………」
それで二人は無言になる。
しばらくしてスバルは肩を震え出させて、
「……シホさん。リオンは、リオンはなんでこんな事をしてしまっているんでしょうか……?」
「スバル……」
「きっと、リオンにもなにか特別な深い事情があると思うんです。昨日のあの表情がそれを物語っているのは確かなことでした」
「そうね……。きっとなにかあるのでしょうね。ティアナもなにか思うことはあるんでしょう?」
シホは涙目になっているスバルの背中を優しくさすりながらも、ティアナにそう問いかける。
ティアナは泣きはせずとも苦い表情にはなっていた。
普段のクールさから考えればなかなか見れるものではないが、親友のためだと思えばなにも不思議なことではない。
それだけスバル、ティアナ、そしてリオンの三人は親友だってことだろう。
「そうね……。私から言えることは最後まで信じてあげることよ」
「信じてあげること、ですか……?」
「そう。決して訪れるだろう結末は綺麗なものではなくても、見限ってしまったらそこでリオンさんとの絆は切れてしまうわ。昔にね……」
そこでシホは少し昔のことを思い出しながらもある話をし出す。
「私にも親友と呼べる友がいたの」
「それって……もしかしてこの世界に来る前の話ですか?」
「うん、そう。その人はね、性格がかなり捻じ曲がっていたけど私にとっては数少ない友達だった。
でも、とある事情があって敵対同士になっちゃってね。最後まで分かり合えることは決してできなくてその人はあっけなくだけど死んじゃった……」
「そう、なんですか……」
そう。シホが語る友というのは間桐慎二の事である。
彼も聖杯戦争という歪んだ戦いの末に死んでしまった一人である。
シホ、もとい士郎は最後までわかり合おうとしたがそれは叶わずに終わってしまった。
シホはスバルとティアナの二人にはそんな悲しい想いをして欲しくないのだろう、シホの一方的なエゴかもしれないが語りをする。
「だから、二人にはそんな悲しい事にはなってほしくないのよ。だからなにがあってもリオンさんのことを信じてやって。
しっかりと捕まえて、事情を聞いて、なにか問題があったなら二人で手助けしてやるのよ。私達も昨日も言ったけど協力するわ。だから気持ちをしっかりと持ちなさい」
「「はい!」」
それで二人は重しになっていたなにかが抜けたのか暗い表情ではなくなっていた。
それでシホも当分は心配はいらないかなと思って、本来ここに来た理由を思い出したので二人に聞くことにした。
「それでだけど、ねぇ二人とも? リオンさんだけど、なにか特別な力がいくつかあるとか言う話を聞いたらしいわね? 少し私にも教えてくれないかしら?」
「あ、はい。いいですけど……」
「なにか気になることでもあったんですか?」
スバルとティアナはそれで怪訝そうにシホに尋ねる。
シホも気になっているために、
「ええ。ちょっと確認しておかなくちゃいけないと思ってね」
「わかりました」
それで二人はリオンの知っている限りの能力を教えてくれた。
それで主に上がったのが先読みの能力。超能力とも言うべき能力で内容は『五秒先の未来が見れる』というもの。
「五秒先の未来がね……。少し厄介な能力ね」
「はい。五秒先の未来を見ることで、いつもあたし達が起こすだろう騒動を事前に伝えてくれました」
「そう。それで他にはなにか能力を持っているって言ってなかった?」
「そうですね……」
それでティアナは少し考えながらも、
「あ! それとなにか特殊な目を持っているという話を聞きました。詳しくは教えてくれませんでしたが……」
「そう。なるほどね……」
それでシホはなにかに思い至ったのか少しすっきりした表情になる。
「シホさん? 何かわかったんですか……?」
「ええ。それで少し話は変わるけど、昨日のリオンさんの戦いでなにか違和感とかなかった? 違和感に感じた事ならなんでも言ってみて」
「……えっと、あっ、そうだ! ティアのフェイク・シルエットがリオンには全く通用しなかったんです!」
「……通用しなかった?」
それでシホは少し視線を鋭くする。
そのシホの変化に気づいたのだろう。
二人は少し緊張しながらも、
「は、はい。あたしとスバルの数人はいる分身をリオンはまったく無視してスバルに一直線に向かって来たんです」
「それに思い返せばあたしの魔法も切り裂いた時に破裂するだろうはずなのにすぐに消える、いえ……消滅といってもいい感じに消えちゃいました」
「ティアナのフェイク・シルエットを無視して、ね……。私でもたまに騙されるのに……」
そう。シホも教導中に希に行う練習試合ではティアナのフェイク・シルエットには思わず舌を巻く思いを何回かしている。
解析魔術を使えばどうということはないが、なにも練習試合で使うほどでもないという事で本物の戦闘以外では解析魔術は使用していないのだ。
それで今回の護衛任務もシホは解析魔術を使い、すぐさまに敵が機械兵士だとわかったのであるわけだし。
「そして切り裂かれて消滅するように消えた魔法……」
消える。それはまずありえないのだ。
なにがあろうと魔力は一回四散するものだ。
それが魔力反応もせずに消えるということは……。
確信に近づいてきた事をシホは思いながらも二人にある事を問う。
「その戦い方、どこかで体験した事はない? いえ、多分しているはずよ」
「えっ……?」
「体験ですか……? 今回が初めてだと………、いえ」
そこでティアナは何かに気づいたのか言葉を止めて考え始める。
シホも思い至ったわね、と思いながらも話の続きを聞く。
「何回か体験しています。そう、サーヴァントの皆さんとの戦闘で……!」
「あーーーっ!? そうだ! 志貴さんだ!」
「やっぱりね」
そう、フォワードの皆と隊長達 VS サーヴァント達という本格的な戦いも何度もやっているためにほとんどシホ達の能力は判明しているのである。
その中で志貴の戦い方はアサシンのクラスでもあり一撃でもくらったらダウンしてしまうほどに耐久値が低いので、練習試合でも魔眼を使用しているのだ。
そう、“直死の魔眼”を。
「これで分かったわね。まだ本当かはわからないけど、リオンさんのその目の能力は【直死の魔眼】だわ」
「直死の魔眼……」
でもそこでシホの中ではまた疑問が発生する。
リオンはその直死の魔眼をどうやって会得したのか……? そしてどうやって制御しているのか……?と。
志貴やライダーのように眼鏡に仕掛けがあるわけでもないし。
そもそも魔眼殺しの眼鏡は蒼崎橙子クラスの魔術師しか作れないものである。
この世界ではそんな魔術師などいるわけがない、とは言い切れない。
現に隻眼の魔術師……ヴォルフ・イェーガーと言ったまだ未知数の強力な力を持つ魔術師がいるのだから。
「(リオンさんについてはある程度推測できたけど、まさかヴォルフ・イェーガーが裏で糸を引いているんじゃないかしら……。これはもしかしたら本当に魔術事件対策課の出番かもしれないわね)」
現状、事件についてはなんの進展もなかったが、また新たな謎が発生した事は確かなことであった。
後書き
うーん……話を深くしようとすると話がまだ進展しない。
次の事件はいつ起こるのだろうか……? まぁ、起これば起これでまた進展と新たな謎が出てくるでしょうがね。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
では。
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