[ 原作 ] オリジナル作品
エブリスタ、カクヨムに投稿。
瞬きをした瞬間、勉には見えたのだ。司書の吉田さんの隣に、両目が胸元まで落ち体が半分以上溶け出した異様な姿の人間が、座っている。皮膚が溶けて赤い筋肉組織が露出し、かすかに骨すら見えている。勉の隣には、すでに骨だけになっていて、クモの巣に覆われた骸骨が座っている。二人とも美味しそうに生温い水を一気に飲み干し、満足げに椅子の背にもたれているのだ。
気味が悪いが、無視することにした。
(二人の死人は、何の目的があってここに座っているのだろう?)
……勉の思考は、ここで唐突にさえぎられた。吉田さんのなせる超能力だろうか? 彼女は、右側が少し上に歪んでいる口を動かさないで、勉の脳に直接響く【言葉】で語った。勉と同じような超能力を使った。自分の想念を他者の頭脳に進入する超能力が、吉田さんには備わっているらしい。
(きっと、吉田さんは、自在にテレパシーを使える超能力の持ち主に違いない。同時に、勉にもテレパシーを「言葉」として認知出来る超能力を持っているのを再確認したのだ)
「私にも、あなたと同じ男の子がいたわ。仕事を終え、買い物を済ませて家に帰ってきた。でも、家の中は真っ暗で何も見えない。この時間には息子が奥の部屋で宿題をしている筈なのに……。嫌な予感が胸をよぎったわ。手探りで、やっと探し当てたキッチンの蛍光灯をつけた。
その瞬間、義雄≪よしお≫の姿が、強烈な印象を伴って目に飛び込んできたわ!
四畳半と奥の六畳の間を仕切っている鴨居に――ああああぁぁぁぁ……何ということなの! 義雄の首には、太いロープが食い込んでいる。殆ど風はない筈なのに、ブラブラと揺れている。義雄を見上げて、わなわなとその場に座り込んでしまった。
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