「銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)」の感想

DD13
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【第二百九十四話  財務官僚の悩み】
>元帥が頭を下げたので慌てて私も頭を下げた。
>軍事費の増大、遺族年金の増加、税収の減少からようやく解放されたと思ったのに……。

この絶妙な筆に、思わず吹き出しそうになりました。
候に財務尚書止まりと評され、また、その自覚もある子爵の小物ぶりが、(あくまでも候や元帥と比較してですが)この二行に凝縮されています。
門跡や政治家としての経歴は、元帥閣下より高いのでしょうが、帝国という先軍体制の中で、元帥の武勲の前には翳みます。しかし、三十年先を見据えている元帥閣下の力量を素直に認め受け入れるというのも、中々できる事ではありません。
軍務尚書を始めとする根からの軍人とは違い、すでに政治家としての役割を担い、辺境領域の開発や保護国への対応など着実に成果を出している事を素直に認め、財務官僚の頂上としての矜持より、帝国の行く末のために誠心誠意働く子爵の事を後世の歴史家は、高く評価することでしょう。(子爵の前任者があんまりなので)
小説や映画で、この時代を語らせる狂言回しとしては、最適の立場です。
※ たとえば、映画「ローエングラム伯」においては、出ずっぱりじゃないでしょうかね。演じた俳優は助演男優賞獲得は間違いない。