「銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(旧版)」の感想

不来庵
不来庵
 
コメント
>>諜報工作で反乱を扇動してから攻め込むというのは、私から見れば極めて戦略の常道に近い作戦なのですが

これを否定できる人は少ないと思いますが、問題は本作フォーク案(仮称)の場合、より重要な原則である「兵力上の優位」をまるで無視している結果、読者視点から見た場合本案は作戦の常道とは全く言えない代物になっている点でして(兵力の問題を軽視していないなら、本作現時点での軍事的最適解はトリューニヒト派の方針にありますし、トリューニヒト派とシトレ派の間の相違は和平を求めるか否かだけのことです(シトレ派にしても、アスターテでの損害を回復せず即時軍縮を、とまでは主張しないでしょう)から、現時点では政治的にはともかく軍事的にはそこまで大きな相違ではありません)。

ですが、作者であれ読者であれ、無理に本案をかばう必要はないと小生は考えます。

本作はほぼ原作の大まかなストーリーラインに沿った展開になっていますから、どんな作戦案が出ようと帝国領進攻作戦はどのみち原作通り失敗するだろう、と、読者は予断を持っていると思われます。
そうした背景を考えると、作中に提示されうるフォーク案(仮称)は
(1)原作並みかそれ以上の愚劣な案で、エリヤ君ですら鼻白むような代物故にフォークの壊れっぷりを強調、
(2)作中では充分な説得力があってエリヤ君レベルでは突っ込みどころがない案だが、作中ならヤンやウランフあたり、あるいは二次創作故に神の視点を持てる読者からは穴だらけに見える案でその後の展開を暗示、
(3)最も口うるさい読者ですら唸らざるを得ない、神がかり的な芸術的作戦案を提示して先読みを不可能にする、
の3通りがあり得ます。(3)は同盟側を原作破壊レベルで強化しない限りほぼ不可能、(1)は単なるフォークのヘイトものに堕してしまう、とあれば、(2)に属する本案は物語的によくできていると思われます。

むしろ、感想欄では突っ込みコメが大多数、くらいの案の方がこの場合は正しいとすら言えます。
 
作者からの返信
作者からの返信
 
戦いに必要な兵力の優位とは、正確に言うと戦場に集中できる兵力の優位です。総兵力がどれだけ多くても、集中できる兵力が少なければ意味がありません。諜報工作というのは、兵力の集中を妨げる最もポピュラーな手段です。実現性については、おいおい明らかになります