世界は閉ざされた。/初回ロット一万本を瞬時に売り上げた、人類初のフルダイブ型MMORPG”ソードアートオンライン”は、死のゲームだった。HPの消滅イコール現実からの永久退場を示すその世界。開始から一年。生存者は約7000人。昔、”奇術師”と呼ばれたその男もその内の一人だった。/鳥が好きだった。重力に縛られず、飛び続けられる彼らが。俺は売れないサーカスに生まれた。親もサーカスも正直そんなに好きじゃないけど、唯一空中ブランコだけは好きだった。ブランコに乗ってさえいれば、俺は一瞬だけでも鳥になれた。だが、たった一つのゲームが俺の人生をいとも容易く狂わせ、更には唯一心を開いた人さえも失なった時には、もう俺は鳥ではなかった。/奇術師は地に落ちた。目についたレッドプレイヤーを片っ端から切りつけた。力への執着。力任せの剣技。先など見えない。見ない。過去だけを見て歩いた。/翼の折れた奇術師(ピエロ)が一人の少女と出会う時、再び”弱者の舞台"(マジックショー)が幕を開ける。///争って、知った。殺されかけて、分かった。正面から向かい合うことで、感じた。俺の拘っているものの、なんと弱いことか。仲間とふれあうことの、なんと心地よいことか。目の前で笑ってくれた彼女を見て、そう思った・・・ |