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こばやかわひであきさんのつぶやき
つぶやき
こばやかわひであき
2014年 10月 31日 23時 43分
ハロウィンネタ 前編
ハロウィンネタ前編
――――
「とりっく! おあ! とりぃと!」
大きな声と共に開かれた扉。仕事がまだ終わっておらず執務机に向かっていた秋斗は訝しげに眉を顰めてその方を見やった。
ブチ柄のケモノ手足とイヌミミにしっぽを付けた季衣。そしてその後ろでは、もじもじと恥ずかしそうに身体を揺らす……ゴールデンレトリバーさながらのたれ耳とふさふさのしっぽを付けた流琉が居た。
いきなりなんだ、と思った後に、自分の主に零してしまった話を思い出した。
「あー、そういや前にハロウィンの事、華琳に話したっけか……」
夏祭りも終わり、次の楽しい季節行事を組み立てるに当たってイロイロと吐かされた秋斗であったが、今回の事は聞いていない。
だから、内密で計画されていたのだ、と思い到る。
「そいやーっ!」
「おっと!」
呆けていると、季衣が突っ込んできた。
頭から突撃されたが、咄嗟の判断で彼女の軽い身体を流して受け止める。
速度と力を殺せるように一回転。くるりと回った後に、ストン、と着地。
「ちょ、ちょっと季衣!」
「とりっく!」
咎める流琉に、どや顔で振り向いた季衣であった……が、彼が意地の悪い笑みを浮かべている様を見逃してしまう。
「じゃあ、お菓子は無しな」
「ふぇっ!?」
「トリックされたから無し」
「そ、そんなぁ……」
苦笑する彼は意地が悪い。本来の意味をしっかりと理解していなければ騙される。
流琉の方をちらりと見やると……手でバッテンと作っていた。
「あうと、ですよ兄様。私はちゃんと知ってますからね?」
前々からカタカナ言葉を少しずつ皆に教えていたからか、最近はこのように返される。
ダメか、と目で問いかけると、首を振られただけで諦めるしかなかった。
「……お菓子なんざ用意してないんだが?」
「主催者の意向に従え、と言伝を預かってます」
――やっぱりか……あいつめ。いや、店長とも手を組んでやがるな。
常備してある琥珀飴も無い。城自体に無くなった為に発注はしてあるのだが、届いてない事からどういう計画か気付いてしまった。
「……悪戯とお菓子両方持ってく気なんだな?」
「え、えっと、娘娘に向かえ、との事です。それと、全員が悪戯を仕掛けるわけでは無いですよ?」
ぐしぐしと季衣の頭を撫でながら言うと、目を逸らして流琉が告げる。
気持ちよさそうに撫でられている季衣は、
「悪戯するのは絶対にボク達だけって華琳様に言われたんだー♪」
楽しげに語る。
なるほど、と思惑を読み取って頷いた秋斗は楽しげに顔を綻ばせた。
「さすがは華琳。よく分かってるようで」
「あの……どうして私達だけなんでしょうか?」
不思議そうに尋ねる流琉。秋斗は言っていいモノかと悩んだが……まあいいか、と説明を始めた。
「ハロウィンで悪戯していいのは子供だけだ。お前さん達はまだ字を持てないから……ってむくれるなよ、季衣」
「子供じゃないし!」
「クク、真っ先に悪戯した奴がよく言う」
「むぅ、兄ちゃんだっていっつも悪戯してるのに」
彼女がむくれて不足を示すと、流琉が溜まらず笑みを零した。
「ふふっ、兄様は中身が子供だから」
「……否定出来ないなぁ」
「じゃあボクが兄ちゃんのお姉さんだねっ」
「季衣、兄ちゃんって呼んでる時点でダメだと思う」
「細かい事はいいの! ってかそろそろ行こうよ!」
グイグイと手を引かれ苦笑を一つ。
「いや、先に行っててくれ。俺も何かしら仮装してから行くよ。それとな二人共、良く似合ってるぞ。ちょっとばかし肌とか出し過ぎな気もするけどな」
静寂。後に、ボン、と音が聴こえた気がした。流琉の顔が真っ赤に染まる。
季衣が騒いだから忘れていたが、彼女は結構きわどい格好をしているのだ。
もう寒い季節なのにビキニ的な衣服。実は普段の方が際どいのだが、どうやらこちらの方が恥ずかしいらしい。
「じゃ、じゃあ先に行ってますからっ」
「あーっ! 待ってよ流琉! 兄ちゃん後でねーっ!」
慌ただしく駆けていく二人を笑顔で見送り、彼はため息を一つ。
「仕事終わらせてから行くしかないな。ま、少しくらい遅れても大丈夫だろ」
また執務机に座りなおして、すらすらと書簡に筆を走らせていく。
彼女達がどんな衣装に着飾っているのかと思いを馳せ、楽しげに表情を綻ばせながら。
~ぶれいくたいむ、店の一コマ~
娘娘は何時にもまして大盛況であった。
普段の給仕たちは侍女服でお出迎えするのだが、彼の思いつきを取り入れた季節行事の時は何かしらコスプレをしているのだ。
夏祭りの後は浴衣で数日。運動会季節だと零した時は体操服とブルマにエプロンを掛けて。そして今回はハロウィンという事で、様々なコスプレをしている。
そんな中、店長は一人いつも通りのクッキングファイター。もとより料理をする時はこれしか着るつもりがない。料理人のこだわりであった。
忙しく手を進める中、上階の宴会場に次々と料理が運ばれていく。
「徐晃様はあの方々を見たらどんな反応をするでしょうかね……」
ぽつりと零した。邂逅を見てみたいが店長も忙しいので見れない。
クスリと笑って、
「まあ、鳳統様の思惑に気付いて釘づけになるのでしょうけども」
呆れてから、彼は中華鍋を器用に扱う。
楽しい時間まであと少し。店長はいつも通り願うだけ。皆の笑顔をさらに輝かせる料理を、と。
~ぶれいくたいむあうと~
後編に続きます
2014年 10月 31日 23時 43分