つぶやき

こばやかわひであき
 
バレンタインネタ
思いついたので息抜きに投下です。
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「「ばれんたいんでぇ?」」

 雛里と朱里の二人と昼食を取っていた時の事。ふいにここに来る前の世界の事を思い出して彼女達に話していた。

「ああ、大陸の外の国ではそういった日があったりもするらしい。旅をしていた時に耳にはさんだだけだが」

 未来の事なので今は無い、とは言わないでおいた。
 どうせこの時代の中国では他国の文化はそこまで密に伝わってこないから問題ないだろう。シルクロードから伝わるローマの文化はまだまだ薄いし。

「それはどのようなモノなのでしょうか!?」

 大陸の外の話に興味深々な様子の朱里が身を乗り出して尋ねてきた。
 その様子に雛里はびくっと驚いたが、こちらも知りたくて仕方ないらしく瞳に知性の光が輝いていた。

「国によって様々だが……恋人や親しい者に贈り物をする事が多い。ある国ではお菓子を送ったり、それに乗じて募る気持ちを異性に伝えたりとか――」

 と、説明の途中で二人は一瞬だけ鋭く目を見合わせ、

「その日はいつなのでしょうか?」
「どんなお菓子を贈るんですか?」

 二人ともが真剣な表情で問いかけてくる。その鬼気迫る様子に少しばかり引いてしまった。

「……日にちは正月からひと月と十四日だから明後日くらいか。贈るお菓子は大体がチョコというモノだが材料が特殊で作れないな」

 言うと二人はそれぞれがしゅんと落ち込んだが、どうして落ち込むかの予想が立った。
――ああ、そうか。二人は親友だから友チョコでもしたかったんだろう。
 どの時代の女の子も変わらないのかもしれないと少し苦笑が漏れ、それを見てか二人は不思議そうに見つめて来る。
 一応、チョコじゃなくても構わないことを伝えておこう。

「送るのはチョコじゃなくてもいいんだ。ほら、チョコが苦手な人もいるだろう? ああ、お菓子じゃなくてもいいぞ。要は伝える気持ちがあればいいわけで、どんなモノでも贈られる人には嬉しいモノになるだろうよ」

 途端に表情が明るくなったが……また二人は互いに見合わせて真剣な表情になる。

「……では、好きなお菓子の話をしましょう」

 お菓子の話が出てきたからか目を輝かせて朱里が提案してきた。ただ、軍師モードの凛とした空気を放っているのは不思議だが。

「そうだね朱里ちゃん、私はほっとけぇきが好き」

 雛里も朱里と同じく瞳に知性の光が輝く軍師モードとなって発言した。
 何故、二人ともそんなに気合を入れているんだ。

「私もだよ雛里ちゃん。秋斗さんはどうですか?」

 話を向けられ、思考に潜るがこの世界で食べられる大概のお菓子は好物な為にどれか一つとは決められない。この時代の人に生クリームたっぷりのショートケーキが一番好きだと言っても分からないだろうし。

「お菓子ならなんでも好きだしなぁ。甘いモノ全部じゃダメか?」
「「一つに絞ってください」」

 重なる声は俺の背筋に冷たい汗を流すほどの力強さがあった。

「……そうだな。前に幽州でお前たちに作ったが、クッキーとかいいな」

 バレンタイン繋がりでホワイトデーのモノが思い浮かんでしまった。
 店長にオムライスついでにバターも教えたら作ってくれたし、一応俺も料理好きだから城に揃えてある。
 そういえば、クッキーなら二人は作り方を見てたから贈りあいには最適なんじゃないだろうか。

(くっきぃ……焼くときに形を変えられるサクサクした食感のお菓子だね)
(たくさん作れば桃香様達にも贈れるし)
(そうだね雛里ちゃん。形は……)
(秋斗さんが前に教えてくれたはぁと型も作ろうよ)

 誰かに贈るならそれにしたらいいかもなと提案しようとしたが、二人は急にこそこそと内緒話を始めてしまった。
 話しかけようとするもそのあまりの真剣さに割って入る気にもなれずにいると、

「お兄ちゃん! 仕事の時間なのだー!」

 後ろから鈴々が勢いよく抱き着いてきたので二人に仕事に戻ると伝えてその場を後にした……しかしこちらを見てもくれなかったのが少し寂しかった。
 バレンタイン、日本以外なら男からも何か贈るし俺も準備しておくか。

 †

 秋斗殿と入れ替わり、遅れて食堂に行くと朱里と雛里が何やらこそこそと内緒話をしていた。不思議に思って声をかける。

「二人とも、なんの話をしているんだ?」
「あ、愛紗さん。秋斗さんから聞いたのですが、明後日は『ばれんたいんでぇ』という親しい人に贈り物をする日だそうでして」
「二人でお菓子を作ることにしたんです。あ、お菓子じゃなくてもいいらしいんです」

 秋斗殿の知識は広い事は知っていたが……それなら息抜きにもなっていいかもしれない。
 この二人のお菓子作りの腕は高い。きっとよいモノを作ってくれるだろう。

「ふむ、それはいい日だな。日頃の感謝も込めて贈り物をする……か」

 明後日か。私も皆に何か贈ることにしよう。


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続きは明後日にでも