つぶやき

海戦型
 
提督日記6 4/19更新
 
「提督が体調不良で倒れました」
「「「な、なんだってー!!」」」

 その知らせは、大いなる衝撃を以てして艦娘たちに伝えられた。
 普段の態度からは想像もできないほど粛々と報告する漣の姿に周囲の喧騒は留まる事を知らない。

「あの!質問を……」
「どうぞ、潮さん」
「その、提督の具合はどう、なんでしょうか……?」
「全治1週間です……インフルです……面会時はマスク着用と、出入り口に設置したアルコールで手を消毒の上、なるだけ手短に要件を済ませてください」

 妙に具体的な回答に、艦娘の多くがひとまず安心する。倒れたというから何事かと思ったが、インフルエンザなら確かに1週間もあれば復帰出来るだろう。無論、感染拡大や病状悪化の可能性はあるが、少なくとも面会の許可がある以上はそう悲観的に見るものではなさそうだ。

「れ、レイテ沖は?扶桑お姉さまとの共闘は!?」
「僕たち気合入れて白い鉢巻とかしちゃったんだけど……?」
「不参加です」

 ここ最近様子のおかしかった山城と密かに準備していた最上が「そんなー!?」と絶叫。しかしながら元々ここの鎮守府の規模と練度1級には程遠かったため、どっちにしろ主戦場へ送られる可能性は低いだろう。参加艦隊の数もぶっちゃけ鎮守府インフレのせいで足りまくっているし、上層部からは不参加でいいから養生しなとフルーツ盛り合わせまで送られてきている有様である。
 そしてもう一つ。

「なー、俺も質問」
「何でしょう木曾さん」
「テートクが寝てる間、ダレが鎮守府を回すんだ?ウチは副提督とかいねーし、代理提督とか来んだったら面くらい知りたいぜ」
「……………来ません」
「は?こ、来ない?おいおいそれじゃ誰が指揮すんだよ!何で来ないんだよ!?」
「人材不足と言うか、そもそも副提督みたいなポジの人材が求められていないので来ません。つまり――提督が復帰するまで、我々艦娘がこの鎮守府を回しますッ!!」

 直後、晴天である筈の空に霹靂が奔り、艦娘たちの顔をシリアスな感じに照らした。


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 漣「まずですね、開発します。全資材は最低の10でいいです」
那智「む?しかしそれでは碌な装備が出来ないのではないか?」
 漣「失敗狙いです」
那智「えぇ……」
 漣「あ、霧島さん開発時には秘書艦になってください」
霧島「え?どうしてです?」
 漣「失敗狙いです」
霧島「えぇ……」


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那智「失敗したぞ……」
 漣「失敗した場合、開発資材が残ります。つまり成功です」
那智「分からん……失敗が成功?では成功は失敗なのか?真実は一体どこにある……」
 漣「これによって本営に開発が行われたという事実だけが伝わり、補充資材として開発資材と開発に費やした以上の資源が送られてきます。提督はこれを錬金術と呼んでいます」
那智「違法行為の香りしかしない!?」
 漣「で、これを基に艦娘を建造します」
那智「なに?ちょっとまて、艦娘建造は確実に開発資材が消費されるではないか!選択自体が失敗ではないのか!?」
 漣「開発が行われた事実が伝わり本営から開発資材と資源が送られてくるので成功です」
那智「し、しかし建造される艦娘はその、戦力としては……」
 漣「解体要員として後で資材を錬成できます。これも本部からです」
那智「やめろ!もう聞きたくない!!」
霧島「ええと、1日に開発を4回と艦娘建造を4回、これを繰り返すのが最もローリスクでハイリターンな資源補給方法である、BY提督………そんなルールの裏道みたいなこと考えてたんですかあの人……」


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那智「や、やはりもっと正規の方法で資源を手に入れた方がよくないか!?」
 漣「なら出撃ですね。最小限の艦を攻略済みの敵の攻撃が薄い海域に出します。出したという実績によって本営から……」
那智「あああああああ!そうじゃないんだ!私はこう、政治家の裏金みたいな稼ぎ方ではなく敵地からの資材確保とか真っ当な補給を――」
 漣「那智さん、いけません!ほら、執務室の扉の向こうから注がれる視線を!」
伊168&伊58「………………(オリョクル行きの段ボール箱に詰められた潜水艦のような瞳)」
那智「う……う………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」



 大人の汚さ、現実の厳しさ、恥と人情の狭間を彷徨った那智は、暫く執務室に行く度にひどく憔悴した顔をしていたという。


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 比叡「…………ぐぅ」
 千歳「あらあら、見事に立ったまま寝てるわねぇ。提督に代わって罰を与えておこうかしら?」
千代田「ち、千歳おねえ……?」
 千歳「そうね、頭の艤装に修復剤の入ったバケツを二つぶらさげて、零した分だけ御飯抜きとか、或いは外のクレーンに艤装を引っかけて吊るしてみるのも面白いかも!そうと決まれば……千代田!私は指示を出すから貴方が実行なさい!」
千代田「千歳おねえ!?」
 比叡「……ハッ!?ね、寝てない!寝てないです!!」


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青葉「青葉、監督の自室に『かんむす印象ノート』なるものを発見しました!さっそく見てみます!」

翔鶴さん……鎮守府四天王最強の一角。瑞鶴はよのオーラすごい。
赤城さん……食いしん坊。翔鶴さんと違って相方の加賀さんの話一切しないのが逆に怖い。
(中略)
千代田っち……性格雑っぽくて元ヤンっぽいけど内心乙女なのきゅんとする。
 千歳さん……見た目おしとやかそうなのに性格勇ましい。一緒に酒飲むのつらい。
(中略)
加古さま……見た目ロックマンに出てきそう。
五十鈴ちゃん……艦娘界の初音ミク感。
(中略)
もがみん……隣で運動したくなったとか言われると時々ムラっとする。
北上……駆逐艦の娘との間にいったい何の確執が……。
 追記:まさか子供好きじゃないのに子供に好かれる性質?要観察。

青葉「ふむふむ。なんか呼び名もさることながら、一部本人に見せたら反応が楽しみなものもありますねぇ~♪ちなみに青葉はっと……」

青葉……大葉のきざみって万能薬味。

青葉「………………提督って時々意味不明ですね。というか印象ですらない!?もしかして提督の中の青葉ってイメージ薄いのッ!?」

 翌日から暫く、提督の看護に青葉も参加したとかしないとか。
 なお、漣の欄には一言筆ペンで「漣が如く」と書かれていたそうな。