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つぶやき
N.C
2016年 06月 05日 01時 00分
再掲:突発的アイディア⑥
『苗床の化外』
『羽虫』という人種があった。人型の昆虫とも、昆虫に似た人類種とも言われた。
そう言われる所以は、彼らが『完全変態』に似た行動を取るからだ。『階梯変異』と呼称されるそれは、自身を硬質な繊維で覆い肉体を溶融させ再構築することで、 より肉体を強靭に頑強にし成長することだ。
『羽虫』は階梯変異を起こすまで肉体的成長を見せないため、判別は容易であり、幼年期に駆除してしまえば個体数を減らすことは簡単だ。基本的に無害であるが、暴威を揮った時の被害は計り知れない故に行われる処置である。しかし、一回の階梯変異をした『羽虫』は既に駆除できるレベルを超越している。
岩を割り。
人を砕き。
鉄を破る。
たった一回の階梯変異で、彼らはそこまで変貌を遂げる。彼らは十年ごとに五歳ほど肉体を老化させ、既定の寿命を迎えたと同時に死滅する。階梯変異は合計で四回。それを経て、『羽虫』は異常なほどに成長する。
昆虫とは優秀だ。遙か昔に世界を席巻し、今でも動物種のおよそ七割を占める。生存のための進化と適応を怠らず、常にその場所に同化してきた。短命故に突然変異が多く、その種類を増やし適応してきた昆虫だが、『羽虫』は多種多様な寿命と機能を持つ昆虫とは違い、平均化され、多様化したそれを持つ。
平均化された寿命と多様化した機能。昆虫という総体を体現したような機能統合の象徴。人類が知能を代表し、昆虫が機能を代表するのに対し、『羽虫』は全能を代表する。
人類と昆虫の能力全体を統廃合し、君臨する全能の代表――――『羽虫』。
それは果たして何の発端になるのか。
それははたしてどの戦端になるのか。
それを知る者は、未だどこにもいない。
2016年 06月 05日 01時 00分