つぶやき

C.D./hack
 
バーサーカー外伝。
「ウォァアアアアアッ!!!」

叫び。

私の後ろには青年。しかし、私はそれよりも先に目の前の老人へ目を向けていた。

何を隠そう、私はこの男を何よりも恨んでいた。

殺してやる……と。

この醜悪で歪に歪んだ正義を振りかざして――――――――――




時は遡る。




戦争。戦争。戦争……戦争戦争戦争!!

争いしかないのか、この世界は!?

火の雨が降り注ぐ。

周囲の人を守るように爆炎を薙ぎ払う。

人は逃げる。私に石を投げる。

英雄などなる気はない。

それで人が救えれば――――――――

「充分だ!!」

人に認められなくてもいい。痛めつけられてもいい。いや、死んでしまったっていい。

人の気配に気付く。子供だ。子供が逃げ遅れている。

火の雨が降り注ぐ。

幼子の命を焼き尽くすべくして、無慈悲な爆炎が降り注ぐ。

加速する。加速する。加速する。加速する。

手を伸ばす。大丈夫だ、救える――――――――――!

だが。

「な………ッ!?」

止まる。体が光り始める。輝いて―――――――潰れる!?

子供がこちらを見る。絶望の表情で上を見上げる。

そして、悲鳴を上げることもなく燃えて――――――――






ここはどこだ。

ここはどこだ。

声が聞こえる。

美しい女の声。

そして傍らで喜びの声を上げる和服の男。

なんだ。何をそんなに喜んでいる。

子供が死んだからか?ならば貴様が死ね。

耳がエコーで人物の骨格、声の音域などを解析、肉付けして人物を作り上げる。

「やりましたね、ユスティーツァ!これで聖杯へ一歩近づきました!」

聖杯。頭の中に刻まれた知識の中からそれを出す。

聖杯。

キリスト教などで願いを叶えるとされる願望器。

人のエゴで使いまわされる、都合のいい存在。

今の私か?いや、私は違う。私は……都合のいい存在などではない。

「都合のいい存在などでは……ない……!」

思わず、巨人の大剣を想像して作り上げる。

かつて、古代の英雄が強固な鎧を纏って使用していた無二の大剣、タイタンソード。

思わず振り上げるが、踏みとどまった。

――――――――――――――何を見ている?

その聡明な瞳で、私の何を見ている?

なぜ涙を流す?なぜ?

「悲哀の英雄」

ビクリと。この体がはねた。

「本当に、かわいそうな人」

カワイソウ?そんな、あの人が言ったような――――――――

「危ないですよ!」

近付いた瞬間に男が間に入る。

悲哀の英雄。私の総称。それを、この女は一瞬で見抜いた。

ただ、言おう。

私は数億年、数兆年ぶりに人間というモノを気に入った。




あれから幾何かたった。

そして、私を呼び出した女のことを知った。

ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルン。

北の魔術師の大家で生まれたホムンクルスである。

そして和服の男。

彼の名前はマキリ・ゾォルケン。

正義の理想を掲げる男。私と同じ理想の保持者だ。

だが、遠坂という奴だけは気に入らなかった。

それを差し抜けば、楽しいとも思ってしまうほどだった。

日々というのは過ぎるのが速いというモノ。

私達は互いに認め合い、理解しあえていたと思っていた。

だが、あっさりとそんなものは崩れ去った。




「答えろ、マキリ!!なぜそんなことを隠していた!」

私は思わずマキリに掴みかかった。

「すまない……君だけには言うなと彼女が言っていたから……!」

大聖杯。願いをかなえる聖杯その物。

私は急ぎ足で移動を始めた。

「その魔術回路に彼女をするだと……!」

赦さない。そんなもの、人の死に方ではない。

「どういう事だ、ユスティーツァ!!」

私は憤怒の表情でユスティーツァの寝室の扉を開けた。




という事でここまで。明日には第二部を!多分!! 
八代明日華/Aska
 
ん?
アインツベルンの党首の名前って『ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルン』じゃなかったでしたっけ?

違ったらすみません。