第二十五話 2人だけの修学旅行
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きの態度が上手いというか、立ち居振る舞いが実に上品であった。
「あ、そーなの!凄く可愛いチームメイトじゃないか!サザンクロスは女の子多くて良いなぁ!ウチなんか、神島みたいなのしか居ないのに」
「呼びましたか?大友さん」
大友が豪快に笑うと、その背後には不機嫌な神島飛鳥が立っていた。昨夏、南十字学園との対戦で好リリーフを見せて以降、飛鳥は帝東投手陣の一角として活躍、勿論選抜でも好投を披露した。華奢な体も少し芯がしっかりして、少女ながら精悍な顔つきになっていた。
「権城、久しぶりね。女連れてる所に出くわすとは思ってなかったけど」
「……相変わらずトゲがありますなぁー世田谷区の飛鳥様は」
唐突に睨みつけられた権城は、やれやれといった風でその敵意を受け流す。両者はこういったやりとりを中学時代に数え切れないほどしていた。ライバルチームの中軸同士として、火花を散らし続けていた。
「……ま、中華街にでも行くんでしょ?楽しんできなよ。どうせ明日には帰るんでしょ?愉快で楽しい南の島に」
「おっ、そうだな。お前らこそこれからの試合負けたら、このまま都内に帰宅だろ?電車混むからなー気をつけて帰れよー」
「そうよ。私達は負けたらすぐに帰ってダイヤモンド100周。週三のあんた達と違って、負ける事なんて許されてないからね。あんた達と違って、本気だから。」
飛鳥と権城の睨み合いになる。大友は苦い顔、ジャガーは穏やかな苦笑いを浮かべていた。
「飛鳥、そうやって尖るのはよせ。何の得にもならんだろうが。ほら、行くぞ。」
このまま放っておけば激しい言い合いでも始めそうな雰囲気を憂いて、大友は飛鳥を引っ張って権城とジャガーから離れていった。大友は別れ際に振り向いて「ごめん」のポーズを取るが、権城はそれにニンマリとした、わざとらしい笑顔で返した。
「やっぱり、名門からすれば、私達はまがい物に見えてるのですね……」
「気にすんなって、あんなオトコ女の言う事なんざ。ほら、さっさと行こうぜ。まがい物なんだったら、とことんまがい物でいこうじゃねぇか。さぁー何食おうかなー」
「あ、私はアンティークの店に寄りたいです」
権城とジャガーの2人は再び中華街へと歩き出す。権城には、自分達が真っ当な名門校とは程遠い適当な野球しかしていない事など分かり切っている。もうこの頃になると、そんな“まがい物”な在り方を受け入れられるようになってきた。
(でもよ、そんなまがい物にも、五分の魂があるって事、いつかお前に教えてやるよ。見てやがれよ、飛鳥!)
権城の内には、“まがい物”の闘志が生まれつつあった。
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