第二十五話 2人だけの修学旅行
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「権城くんがレギュラーじゃなかったのは残念だけど、実際君でもレギュラーとるのが難しいほど、レベルが高いな。でも、今日のタイムリーみたいな活躍を繰り返していれば、いつかはレギュラーになれるぞ。君は走塁も守備も良いからな。頑張れよ、これからも!」
高笑いしながら去って行く大利に、権城は頭を下げた。権城はこっそり、自嘲気味の笑みを浮かべていた。
(今日みたいな活躍をしてりゃ、レギュラーになれるよだって?)
遠くなった大利の背中に向かって、権城はあかんべーをした。
(俺、代打じゃもう5打席連続ヒット打ってんだよ)
心の中で呟いてみたが、あまりにも虚しくなったのでやめた。周りから見たら、自分がただの控えである事はどうしようもない。それが権城には分かっていた。
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「権城さん、待ちました?」
「いやぁ?待ってないよ」
「良いんですか?試合後に出かけるなんて」
「良いだろ。一年が入ったおかげで、洗濯からは解放されたしな。」
試合後のホテルのロビーで、権城はジャガーと待ち合わせしていた。南十字学園野球部は監督は采配すら紗理奈に奪われた形代なので勿論縛りなどはなく、主将の紗理奈も基本的には寛容なので、宿舎での過ごし方などは各自に任せられていた。
「中華街、ですか?」
「せっかく横浜に来たんだからな」
「うふふ、2人だけの修学旅行、ですね」
関東大会に出発する前から、2人は遠征先でのデートを決めていた。ジャガーはわざわざ、旅行カバンに外出用の私服を詰めてきていたくらいである。権城は実にラフな格好で、おめかししているジャガーと並んで歩くのは少しバツが悪いが、2人はホテルを出て行った。
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ホテルから徒歩で中華街へ向かおうとすると、横浜スタジアムの前を通った。勿論、横浜スタジアムも春季関東大会に使われている。
球場の周りには、試合前後の球児達がウヨウヨ居た。
「おう、権城じゃないか!」
声がした方を振り向くと、ユニフォーム姿の大友が走ってきていた。帝東はこれから試合らしい。ウォーミングアップに、球場の周りを走っているらしかった。
「こんにちは、大友さん」
「お前ェ!遠征先に彼女を呼ぶとはやり手だなぁ!デートかぁ!羨ましいなぁ!」
近くに寄ってきた大友は、一冬越えてさらに大柄になっていた。名門・帝東の4番捕手、そして主将を務め、春の選抜では4強に進出して関東大会には推薦出場していた。テレビの向こうで活躍するかつての先輩の姿に、権城は深い感慨を覚えたものである。
「あの、一応彼女じゃなくて、チームメイトです」
権城が言うと、ジャガーはにっこり笑って丁寧にお辞儀する。よそ行
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