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大切なのは中身
第四章
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第四章

 皆はその作る様子を見て。こう言うのだった。
「あれっ、いいじゃねえか」
「いい感じで出来てるよな」
「佳澄さんがいるおかげですよ」
 薫はその佳澄の横で話す。
「僕はただ焼いてるだけですよ」
「焼いてるだけっていうかよ」
「皮を焼くことこそが難しいんじゃないのか?」
「なあ」
 皆は自分の功績ではないという薫に対してまた言う。
「っていうか御前本当にはじめてか?」
「随分手馴れてるけれどよ」
「何でそんなに上手いんだ?最初なのによ」
「鈴元さん凄く努力されたんですよ
 佳澄が皆に話してきた。
「それでなんですよ」
「いえ、私は全然」
 しかし薫自身はこう言うのだった。話は平行線になっていた。
「高坂さんに教えてもらったおかげで」
「高坂さんって?」
「誰なんだよそれ」
 皆はその高坂という名字に眉を顰めさせた。その間に佳澄からそれぞれクレープを受け取る。そうしてそのうえで食べはじめるのだった。
「はじめて聞く名字だぞ、おい」
「誰なんだよ、本当に」
「私です」
 ここで佳澄が言ってきた。
「私の名字なんです」
「えっ、そうだったの?」
「あんたの?」
「はい、御存知なかったですか?」
 薫がその彼等に問うた。
「前にお話しましたけれど」
「初耳だぞ、おい」
「そんなの何時話したんだよ」
 皆眉を顰めさせて彼に突っ込みを入れた。
「お話しませんでした?」
「だから聞いてねえって言ってんだろ」
「いつも聞くのっていったらよ」
 おのろけだろうと言おうとした。しかしそれを今言おうとしたその時だった。その佳澄が皆に対して言ってきたのであった。
「それでです」
「あっ、ああ」
「それで何かな」
「鈴元さんってすごい努力家なんですよ」
 佳澄はその天使の如き清らかな笑みでまた皆に話すのだった。
「毎日熱心に練習されて。お掃除とかも一番頑張っておられるんですよ」
「まあそれはわかるけれどな」
「こいつ真面目なことは真面目だからな」
 それは皆わかっていた。彼等にしろ薫のことはよく知っている。当然その真面目なこともだ。それで知っているのであるがそれでもだった。
「けれどそれでもな」
「その緩みきった顔どうにかならねえのかよ」
「緩んでますか?」
 その薫は全く自覚していなかった。
「そんなに」
「緩んでるよ、思いきりな」
「どうにかしろよ、それ」
「見ているこっちが恥ずかしいぞ」
 皆こうまで言う。しかしだからといってその顔が元に戻るわけではない。本来は整っていると言っていい顔なのだが今はそんなことは全くなかった。
「しかしそんなに幸せかよ」
「そこまでか」
「ですから幸せどころじゃなくてですね」
 薫ののろけは止まることがなかった。

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