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ドリトル先生と伊予のカワウソ
第三幕その八

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「ここにいるとね」
「じゃあ木を荒らさない様にしてね」
「登っていいんだね」
「チーチーは木が好きだからね」
 猿だからです、もう習性として好きなのです。
「迷惑をかけない様にするんだよ」
「うん、わかったよ」
 こうしてでした、チーチーは大喜びで木に登り木と木の間を手足を使って跳び回りました。ポリネシアとトートーも木のところに止まったりしています。
 その彼等を先生の足元から見てです、ガブガブはです。
 残念そうな顔になってです、こんなことを言いました。
「私はね」
「ガブガブは飛べないからね」
「飛べることは飛べるのよ」
 先生に答えます。
「けれどそれはね」
「苦手だったね」
「アヒルだからね」 
 それでだというのです。
「お水は得意だけれど」
「空はだね」
「そう、苦手だから」
「羨ましいのかな」
「そう思ったら駄目よね」
 自分でこう言うガブガブでした。
「誰かを羨んだりしたら」
「そこから何かをしようと思うのなら別だけれど」
「妬んだらね」
「うん、よくないよ」
 先生はガブガブに妬みはよくないと言いました。
「それは心を汚してしまうからね」
「だからよね」
「アヒルが空を飛んだり木に止まったりすることが苦手なのはね」
「仕方ないわね」
「僕だって出来ないよ」
 先生は笑ってご自身のことも言いました。
「そうしたことはね」
「先生には羽根がないからね」
「動きもね。チーチーみたいにはね」
 今も木と木の間をブランコみたいに飛び移って遊んでいるチーチーを見上げての言葉です。
「出来ないよ」
「人間だとなのね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「僕はこのことを羨んだりしないよ」
「羨んでもね」
「チーチーみたいに動けないよ」
「お空もね」
「そう、飛べないからね」
 微笑んで、です。先生はチーチー達を見上げながら言いました。
「そうしたことは思わないよ」
「そうあるべきね、私も」
「そう、羨んでも何にもならないから」
「妬むとね」
「僕は僕でね」
「私は私ね」
「僕にはガブガブみたいに上手に泳げないよ」
「先生泳ぐこともね」
「そう、苦手だから」
 先生は運動は全部苦手です。水泳もなのです。
「ガブガブとは違うよ」
「けれどなのよね」
「そのことを羨まないから」
 決して、というのです。そうしたことをお話しつつです。
 先生は公園の中を見ます。本当にたくさんおスポーツ施設があってそこを皆が利用しています。そうしてです。
 その中を見回してです、こう言うのでした。
「ううん、しようとは思わないけれど」
「それでも?」
「それでもなんだ」
「見ているとね」
 その爽やかに汗を流す人達をです。
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