志乃「あ」
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から」
サラッと無視されたが、今はそこに批判する気すら起きなかった。志乃が丁寧な手つきで段ボールの中を徘徊する。そして、箱の横にくっ付いているように挟んであった説明書を見つけ出し、俺に視線で合図する。さっきの指示通り、俺は箱を自分の方に引き寄せ、中身を確認出来る状態を作った。
そして、志乃が機材の名前をはっきりした声で呼ぶ。
「オーディオインターフェイス」
名前と説明については自分でも調べて覚えている。今の機材は、動画を作る上で最重要である機具だ。パソコンとマイクの中継基地であり、音質を綺麗にしてくれる役割を担っている。
別にこれが無くても、マイクとパソコンをUSBで繋げば録音は出来るのだが、周りの音を拾ったり、プツプツという雑音が入る場合があるので、本気でやる人には必要不可欠だろう。
マイクの他にも、ギターやピアノの録音にも仕様可能である。幸い、妹のピアノはUSB接続可能なので、音を録る事が出来る。
俺の予想では、もっとデカい物なのだと思っていたが、実際のサイズはティッシュを二倍ぐらいにした程度で、重さも言うほどでは無かった。というか軽い。これなら近くに持ち運ぶのも簡単かもしれない。
教師が生徒の名前を呼ぶように、志乃が点呼を続ける。
「DAWソフト」
「ある」
これは、ネットでも無料配布されている音源編集ソフトだ。ネット版はダウンロードだが、スターターセットにはCDとして付属している。ここからパソコンにダウンロードすれば、すぐに使える筈だ。
音源を編集する他、カラオケ音源と歌声を合成させる事も出来る優秀なソフトだ。これを所有している人はいっぱいいるだろう。
「ヘッドフォン」
「ある」
「USBケーブル他ケーブル」
「ある」
志乃の問いに対して確信を持って答える。それを繰り返していくうちに、俺の中に曖昧なビジョンが浮かんできた。
それは、コンサート会場で歌う俺とキーボードを担当している志乃の姿だった。
俺は観客の盛り上がりを楽しみながら、喉を広げて歌っている。眩しいライトの光に、額の汗が照らされる。まさに、よくテレビとかで見るライブ会場そのものだった。
しかし、それは志乃のデコピンによってあっさりと割れ、俺は我を取り戻す。
「兄貴眠いの?なら、睡眠薬使って本気で寝る?」
「すんません」
こいつの睡眠薬、なんか一生起きなくなりそう。
「じゃあ次、マイクスタンド」
「えっと、ああ、あった」
「ポップガード」
「ある」
「コンデンサーマイク」
「あるよ。よし、とりあえず全部揃ってるな」
「良かった」
そして、同時に安
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