由実「私に関わった男って、皆タジタジになるもの」
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だが、俺の方が一つ年上という謎の優越感が興奮しそうな血を急激に抑えた。そして、平常心を保ったまま座っている女子に消しゴムを渡す。
「はいこれ」
「……葉山君だよね。君、なんか変わってるね」
こいつ、礼を言わないで俺を指摘してきやがった。まず最初にお礼を言うのが普通だと思うぞ。
「変わってる?俺が?」
いちいちそれを教える程、俺も義理難く無いので、あえて女子の言葉に乗る事にした。するとそいつは俺の言葉を肯定した。
「うん、変わってる。だってさ……」
そして、言葉の続きを俺の耳元で紡ぎ出す。周りには聞こえないボリュームでありながら、聞き間違いを否定させない力強い声で。
「私に関わった男って、皆タジタジになるもの」
……俺、こんなに典型的な腹黒初めて見たわ。間近に女の子の顔があるというのに、俺はドキドキもせず、そんな事を考えていた。気付いたらそいつの顔はさっきの位置にまで戻っており、優しい笑顔を浮かべている。
でも、俺はそいつの目が笑っていない事に気付いた。
「それ、どういう意味?」
小声で言われた事に対して、周りに気にする事無く真正面から問うと、そいつは太陽のように陽気な声を放った。
「え?それこそどういう意味かな?ていうか、私の名前覚えてくれてる?」
話を逸らされた。一瞬でそう感じたが、その前にこいつの名前が気になった。入学式から一週間以上経ったが、クラスメイトの名前は半数近く覚えていない。ちゃんと認識しているのは志乃と五十嵐、それと男子生徒を極わずか程度で、それ以外は事件後の質問で二言三言会話したぐらいだ。
だが、目の前のこいつは、それを除いても初めて喋る相手だった。自己紹介の時はパニックになっていたので、自分がどうやって家に帰ったのかすら記憶していない始末だし。
こうしてよく見てみると、先程の綺麗な肌といいスラリとした足といい、この女子はなかなかに女性としてのスタイルが完成している。身長は座っているので詳しく分からないが、背筋はピンとしているし、出るところは出ていて引き締まっているところはキュッとしている。
また、顔のラインはモデルのようにシャープで、全体を通して眉目秀麗を具現化しているように思える。
だが、先程の発言を聞いてしまった今では、それら全てが嫌味にしか聞こえず、その笑顔も計算し尽くされたものなのだと思えて仕方が無い。こんな女子が自分の近くにいた事にも気付かないなんて、俺は今まで何を見ていたんだよ。
「ああ、ごめん。実はまだ覚えてないわ」
相手の態度に仕返しをするつもりでそう伝えると、その女子は笑顔を全く崩さぬまま、自分の名を名乗った。
「ちゃんと自己紹介聞いてね。私は本山由実。
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