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相棒は妹
由実「私に関わった男って、皆タジタジになるもの」
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気配を見せず、今もまだ変な感じが続いている。

 こうしていつも通りが繰り返されるのも、今だけなのでは無いかという妙な憂惧が取り憑いている。これが予知なのだろうか。この場合、嫌な方向にどんどん進んでいる気がするが。

 「考えても仕方ないか」

 なんとなく声に出してみると、すぐに隣から視線を浴びた。そして視線を送った妹はただ一言呟く。

 「……厨二病?」

 「安心してくれ、とっとと飯食って行かないと」

 いちいち構ってられない。俺と志乃は弁当を詰める時間が増えたというのに、起きる時間が先週と全く変わっていないのだ。下手すると遅刻する恐れがある。よし、明日からは二〇分ぐらい早く起きよう。

 そうして普段通りに支度を終わらせ、やや遅めの時間で登校する。

 「まだ間に合う。走るぞ」

 「自転車使おう」

 「俺達はチャリ通じゃないから無理だ」

 「じゃあ兄貴自転車役よろしく」

 「俺を人間として見なさい」

 もはや趣旨の見えないダラダラしたやり取りだが、それも日常の一つとして受け入れる。

 だが、俺の心の胸騒ぎは、起きた時から今までに上乗せするように、学校に近づくにつれて肥大化していくのだった。

 *****

 教室に着いたのがHRの一分前。今日は本当に危なかったんだな。下らない話ばっかりしてたら危機感どっかすっ飛んでたわ。

 先週配布された時間割を見て、一時限目が現代文である事を知る。お、いきなり俺の得意分野かよ。朝のモヤモヤはきっとあれだ、夢の中で恋人とデートしてた余韻なんだよ。……自分で考えて悲しくなってきた。

 俺がわざとらしく嫌な感覚に見切りをつけ、ロッカーに向かって教材を取って来ようとした時、突然右斜め前の席から消しゴムが飛んできた。

 それは教室のタイルを軽く弾み、俺の足下で動きを止めた。勿論、人の落とした物を拾わないで無視するわけにもいかないので、日常的な手つきで――腰を屈めてそれを拾い、消しゴムの落下方向に目をやる。

 この時、日常的な動きをした俺だったが、それが俺の平穏な日常をぶち壊すきっかけになろうとは、全く思っていなかった。

 腰を屈めた俺の視線の先、ちょうど真っ直ぐを見据えるように動いた俺の頭の位置は、右斜め前の女子の膝辺りだった。

 荒れやシミ一つ無い、真っ白な肌。そしてそれが形成する足の先――スカートの中までもがわずかに見えそうな、ある意味ベストなポジションだった。

 恐らく、俺がその状態で固まった時間は二秒。しかし、二秒というわずかな時間が俺には永遠に感じられた。

 まるで急速に育つタケノコのように、膝を伸ばし直立になった俺。うわー、今のはヤバい。初めて女子のスカートの中見えそうになった。


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