志乃の独り言
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続けたんだ。
そして、中学一年生の時、私はついにピアノの全国発表コンクールに出場する事となった。
この時の私の中には、いまだに兄貴に対する思いがあった。このコンクールで良い成績を残せば、きっと兄貴も笑ってくれると、そう信じていた。
私の番が終わった後、コンクールに来てくれていた兄貴は笑顔を浮かべて見せた。正真正銘、私に対する敬意のこもった優しい笑顔だった。
でも、その時の私は兄貴の笑顔が偽りのそれだと考えてしまった。
だって、私はその全国コンクールで一次予選落ちしたんだから。
良い成績を収めれば兄貴は笑ってくれる。ずっとそう思っていたのに。兄貴はこの時、本当に私が凄いという風に笑みを形作っていたのだ。
――『志乃は俺の自慢の妹だよ。なにせ、全国に出場したんだしな』
そんな言葉も、私のピアノの実力を飾り付けるだけにしか聞こえなかった。
その時、私の知り合いでライバルの女が通りかかった。そいつは一次予選を通過し、次に控えるために動き出したのだ。
そして、そこで兄貴に対してこんな言葉を言い放った。
――『全国に出たのにすぐやられるんじゃ意味ないわよ。これは努力じゃなくて、才能のぶつかり合いなんだから』
兄貴はそれに対して反抗し、ちょっとした口喧嘩にまで発展した。それを各保護者が取り押さえ、事なきを得たのだが――
私は、我慢ならなかった。
その後の事を、私はあまりよく覚えていない。ただ、兄貴に必死に止められたのを覚えている。そして、その後兄貴との仲が疎遠になったのも覚えている。
あの時、私が兄貴に何か酷い事を言ったのかもしれないし、場をぶち壊すような行動を
取ったのかもしれない。
けど、あの時兄貴が私を止めていなかったら、と思うと、兄貴に本当に申し訳なく感じる。私のせいで仲が悪くなったと言ってもおかしくないんだからね。
こうして、また普通に喋る日が来るなんて考えなかった。今の自分の態度は、確かにムカつくのかもしれない。生意気なのかもしれない。
でも怖い。本当の自分を兄貴に曝け出すのが。兄貴が素の自分を拒否する様を、私は想像したくない。
こんなにも悩むんだったらピアノなんてやらなきゃ良かった。葉山伊月の妹として仲良く暮らすだけで良かった。そう考えた事もあった。
でも、もしそうだったら、私は兄貴に手助けする事が出来なかったかもしれない。何か励ます事は出来ても、それ以上先の事は出来ない。それなら関わらない方がマシだ。
きっかけは私だ。私の安直な考えが、『頑張ったら絶対報われる』という愚考が、そして何より、兄貴の精神的負担を重くしていたのは、誰でも無い、私だった。全てが積みに積み重なった結果、私は自滅したん
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