第5章 契約
第95話 オメガの扉
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しょう。
この部分に関しては素直に感心するしかない。そう、心の中でのみ首肯く俺。
普通の人間ならば見たい物……。見たい現実だけを見ようとする。この場合の固定観念はブリミルの降誕祭の間は戦闘行為が禁止されている、と言う同じ人間相手の時にのみ通用する約束事。
更に言うと、ガリアの聖戦に対する態度は保留の状態。確かに国内の空気は戦争回避と言う方向に流れつつある事は、少し情報収集をしていたのなら判るでしょう。
しかし、それでも尚、ガリア国としての正式な回答を待たずの侵略行為。こりゃ、ゲルマニアやロマリアからガリアの人間は、同じブリミル教を信奉する人間扱いはされていない可能性も有りますか。
もっとも、備えあれば憂いなし。相手がハルケギニアの常識に囚われない戦略を講じて来るのなら、こちらはハルケギニアの魔法使いの常識に存在しない魔法が有ります。
少なくとも、リュティスには湖の乙女と妖精女王ティターニアが。ゴアルスハウゼン……ヘルヴェティア地方には未だマジャール侯爵麾下の飛竜騎士団が存在して居るので、そう易々と国境を侵されるとは思いませんが。
何故ならば、イザベラにはデカラビアとオリアスと言うソロモン七十二の魔将の中でも諜報。特に、軍の動きを探らせたのなら双璧の能力を持つ魔将と契約を結ばせているのです。更に、彼女の傍には俺の式神。黒き智慧の女神ダンダリオンも配置してあるのですから。
おそらく、ゲルマニア軍が国境を侵した瞬間に、陸軍はティターニアや湖の乙女。それに地霊たちが目の前に立ち塞がり、飛竜や飛空船の前には、マジャール侯爵率いる飛竜騎士団やリュティスに残して来たソロモン七十二の魔将第四席ハルファスが立ち塞がる事と成るので……。
リュティスに関しては、今のトコロ問題はないでしょう。
問題は――――
現有戦力で、この場をどうやって切り抜けるか、と言う事だけですか。
刹那!
一瞬にして数メートルほど離れた灌木の影にタバサを生来の能力。重力を操る能力で移動させる俺。
それと同時に、その跳ばされたタバサの方向。右側が紅い霧に覆われた。
紅い液体を撒き散らせながら上空に向かって跳ぶ細長い物体。そして、その物体を追うかのように俺の右肩から十センチ程下の部分より吹き出す紅い液体。まるで、その部分に鮮やかな紅い花が咲き誇って居るかのような場違いな感想さえ思い浮かんで来る非現実的な光景。
そうして――
そうして、重力の法則に従い跳ばされた俺の右腕と、飛び散った紅い液体が大地へと到着した瞬間。
その時、ようやくふたつの悲鳴が周囲に響き渡った。
ひとつは、生まれてから三度目に聞く事と成った少女の悲鳴。
もうひとつは、俺が傷付いた事に因って悲鳴を上げてくれるのか、と感謝すべき
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