第5章 契約
第95話 オメガの扉
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ラグドリアン湖の異常増水事件も、矢張り、こいつらの仕業だったと言う事ですか。
もっとも、先にヤツが言った台詞。人が望んだから事件を起こした。……と言う言葉を信用するのなら、事件が起きる事を誰かが望み、それをこいつ等が叶えようとしたと言う事に成るのですが。
おそらく、ルルド村自体が異界化現象に巻き込まれているのでしょう。まして、この場にはヴィルヘルム。いや、妙な東洋的笑みを浮かべ続け、他者をシニカルに見つめ続けて居る存在が顕われている以上、この場所自体も既に異界と化して居る可能性が高い。
しかし……。
少し思考がずれ掛かったのを元に戻す俺。少なくとも、この目の前の薄ら笑いを浮かべたイケメンと、忌まわしき書物に記されているアイツとがイコールで繋げられる存在ならば、こいつ自身がこの場で俺に仕掛けて来る可能性は低い。
それよりも今重要なのは――
今までこの目の前の薄ら笑いを浮かべた男や、自称名付けざられし者が関わって来た事件は、最悪の結末を迎えた場合は世界自体の破滅を招きかねない事件だと思うのですが……。そんな事件が起きる事を願う人間って……。
そこまで考えてから、しかし、少し考え方の方向を変えて見る俺。
それは……。
それは、本人たちが破滅する未来など予測をしていなかっただけ、……と言う、非常にマヌケな可能性が有る事に気付いたから。
そう、今まで俺たちが巻き込まれた事件を直接起こした連中を思い起こして見ると、この可能性が高いように思えて来る。
かなり甘い見通しと、敵対者の存在すら考えて居なかったかのような行動。それに、自らが何モノかに選ばれた存在だと言う思い込み。
特に、この思い込みの部分が大きかったようには感じるのですが。
「それに、ここ。ルルド村の事件に貴方とシャルロット姫が派遣されて来た、と言う事は、リュティスを挟んで反対側。鬼門の封じは既に破られたと言う事ですね」
鬼門の封じ!
次から次へと動く事態に対処する為に、思考がダッチロールを繰り返していた俺を無理矢理、現実界に引き戻すヴィルヘルムの言葉。
確かに、ここルルド。ガスコーニュ地方は、リュティスから見ると裏鬼門と言う方角に当たる。そして、北東に当たる方角と言えばゲルマニアとの国境付近。ゲルマニアとの戦端が開かれれば、其処は最初の主戦場と成る可能性の高い地方。
ブリミルの降誕祭の間は戦闘行為が禁止されている、と言うから、流石にその間にゲルマニアが国境を侵して来る可能性は低いと考えて居たので……。
しかし現実は、そんな宗教的禁忌などを超えた場所で推移する、と言う事ですか。
それに、流石は電撃戦で第二世界大戦の緒戦を制した国ですか。自らが強く信奉する宗教の教義よりは、戦の勝ち負けの方が重要だと言う事なので
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