第5章 契約
第95話 オメガの扉
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…。根拠のない自信で事に望んで力及ばず、自分の生命を失っただけ。
確かに自分で考え付く限りの策を打つのは間違いない。しかし、それでも足りずにギリギリの部分で生命を落としているのでしょう。
まして、残されるよりは先に逝く方がマシだと言う、少し後ろ向きに考えた結果の可能性も高い。
もっとも、俺の事を買いかぶり過ぎて居ると言っても、わざわざ指摘してやる必要もない相手なので、この場は沈黙を持って聞き流す事で充分でしょうが。
会話が途絶えた。頭上に五山の送り火が輝き、除夜の鐘が響いて居た時のこの森の中は様々な生命の息吹に溢れた、生命のるつぼと言う世界で有った。
但し、今では……。
静寂と停滞に支配された白の世界へと変化して居た。
しかし……。遅い。
状況が状況だけに、この場で腕時計を確認する訳には行かないのですが、それでもキュルケが現われてから、少なくとも十分以上は経過して居るはず。
しかし、未だルルド村に残して来た戦力が此方に辿り着く気配はなし。
更に、リュティスに残して来た湖の乙女やティターニアがオルニス族のシャルを伴って増援に現われたとしても不思議ではないのですが……。
彼女らには、茜色に染まったルルド村でラバンとの会話を始める前に連絡を取ってあるので、ある程度の俺やタバサの巻き込まれている事件の予測は付いて居るはずなのですが。
「そうそう。ルルド村に残して来た方々は、ここに現れるには後しばらくは時間が掛かると思いますよ」
何気ない。本当に明日の天気に付いて語るような、何気ない雰囲気でそう話し掛けて来るヴィルヘルム。
しかし、その内容はまるで俺の心を読んだかのような内容。
そうして、
「伝承の中の一節。数多の魔獣を操り、と言う部分をお忘れですか」
……と言葉を続けた。
その瞬間、俺の脳裏に一人の青年の姿と、ラ・ロシェール、ゴアルスハウゼンの事件が浮かぶ。
いや、港町ブレストの事件もそうでしたか。
ただ、もしそうだとすると……。
其処から更に不吉な予想が俺の脳裏に浮かぶ。魔物が騒ぐ理由が月の魔力だけでなかった場合は。
いや、ラ・ロシェールの事件以外の時には、明らかに聞こえて来てはいけない召喚用の呪文が聞こえて来ていましたか。
但し、今の俺には何も感じない。少なくとも彼女らは何十キロも離れた場所で戦って居るはずはない――ルルド村周辺での戦いを俺やタバサが感じないはずはない。
……と言う事は、
「彼は慈悲深き副王。彼に従わない魔の物は存在しませんよ」
それが例え、本来はミーミルの井戸を護る為に配置された黒龍だったとしてもね。
俺の考えを補足するかのように、ヴィルヘルムはそう言った。
成るほど。あの
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