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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第95話 オメガの扉
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の人間と大切な相手。どちらか片方しか救えない場合にどう言う行動を取る人間か、と言う事をね」

 東洋風の整った顔に貼り付いた笑顔の所為で、何故か非常に楽しそうに聞こえるその言葉は俺に取って簡単な答えしか出し得ない言葉であった。
 その答えは……。

「そんなモン決まっている。見も知らん他人よりも自分に取って大切な相手」

 俺は別に世界を救う英雄に成りたい訳じゃない。まして、神に選ばれるのも御免被る。
 少なくとも、英雄や救世主と呼ばれた連中が最終的にどうなったのかを知って居たら、神に選ばれたと言って喜ぶ事は出来ないと思いますしね。
 先ほどまで、俺やタバサの相手をしていた元東薔薇騎士団所属の騎士殿が、その典型的な例。神に選ばれた存在と言うべきでしょうし……。

 しかし、

「いいえ、違います」

 それまでは柔らかな口調。確かに、多分に毒を含んだ内容ながらも、口調自体は非常に柔らかな口調だった物が、少し強い断定系の言葉使いに変わる。
 もっとも、違うと否定されたトコロで、俺が優先するのは身近な人間の方だと思うのですが……。

 ヤツ。ヴィルヘルムが知って居る相手と言うのが、すべて俺ならば。

「確かに大切な人を優先するのは変わりませんが、貴方はその他大勢を見捨てた事などありません。ふたつの選択肢しか与えていないはずなのに、何故か三つ目の選択肢を選んで仕舞う」

 それが貴方の(サガ)と言えば、性なのかも知れませんが。
 それまでの顔に貼り付いた作り物めいた笑顔などではなく、本当にヤツ自身が苦笑したかのような気さえして来る笑顔をこちらに見せ、そう続けるヴィルヘルム。

 そう。何故かその瞬間だけは目の前に居る黒い闇を纏う存在が、ごく当たり前の人間であるかのように俺には感じられた。

「大切な人を護り、更にその他大勢も護ろうとする。代わりに自らの生命を生け贄と捧げて」

 正に、英雄の魂を持つ存在としての面目躍如と言った所ですか。最後の最期の瞬間に、愛する人たち以外のその他大勢さえも護った上で、自分は生命を落とすのですから。

 本当の俺を知らない……。明らかに買いかぶり過ぎの台詞を続けるヴィルヘルム。しかし、もし、ヤツが言うのが俺……の前世の姿ならば、それは間違いなく買いかぶり過ぎ。
 おそらく、大切な相手を護ろうとするのも、ギリギリまでその他大勢を護ろうとするのも間違いではないでしょう。見も知らない他人の生命だとは言え、簡単に見捨てて仕舞うと流石に目覚めが悪いでしょうから。但し、最後の最期の瞬間に自らの生命を落とす事が多いのは、自らが望んで……大切な相手を含む世界全てと自分の生命を秤に掛け、これならば見合う対価だと判断。その結果、世界と自らの生命を等価交換した訳などではなく、甘い見通し…
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