暁 〜小説投稿サイト〜
共に立つ。
SAO編
たとえばこれが少年漫画なら
[1/3]

[8]前話 [1] 最後
 午前九時五分。知り合いとの約束にはまだ二十分以上余裕があるが、だーさんと二人でたくさんの獲物を釣り上げて、すっかりほくほく顔の俺は弾んだ気分のまま、待ち合わせである七十四層の転移門広場にやって来ていた。青い光がばあっと晴れて、居ないだろうと思いつつも連れの顔を探すと、別の知り合いがどこか気だるげなオーラを漂わせながら俺を見ていたことに気づく。

「よっ!キリト。そういや、アスナと待ち合わせしてんだっけ?」

「ああ。九時に待ち合わせてんだけど……」

「九時?もう過ぎてんぜ。珍しいな、アスナが遅刻なんて」

「もうちょい眠れたなあ……」

 ぶつぶつとぼやきながらメニューを呼び出していじるキリトの隣に立って、ぼうっと朝靄のなかでレモンイエローに染まった街を眺めた。アインクラッドの暦は今《トネリコの月》。日本なら秋にあたるこの季節は爽やかな風が吹き、過ごしやすいものだ。これであたりにイチョウやモミジが枝を広げていたなら、きっと色鮮やかな紅葉で目を楽しませてくれただろう。

「そういや霧と靄と霞って、じつは同じやつのことなんだよな。たしか」

「は?」

「うーんと……これも知り合いの受け売りなんだけどな」

 何言ってんだこいつ、と言わんばかりに眠そうな目を向けてきたキリトに苦笑して、辺りに漂う朝靄をのせるように空中に手のひらを差し出した。ふわりと湿った風が吹く。俺たちの髪をいたずらに揺らしたそれは、一瞬、あたりの朝靄を攫っていった。隣のキリトはポチポチとメニューをいじりながら欠伸まじりに流れるそれを見つめている。すげえ……ブラインドタッチだ。別にやりたいとは思わないけど。

「ほんとは変わらずに全部ただの水滴なんだよ。でも季節によって呼び方が違うって、そんだけ。春なら(かすみ)、秋なら(きり)。そんでそれ以外が(もや)らしい」

「ほう……」

「あれだな。日本のわさび?だっけ?」

「わびさび」

「おお、それそれ!」

「適当だな……」

 他愛もない話をキリト続けていると、視界の端に封筒のマークが点滅した。フレンドメッセージが届いたことを示すアイコンだ。システムウィンドウを開いて、新着メッセージのタスクを開くと待ち人から届いていたそれにざっと目を通す。そこに記されていた予想外の言葉に思わず素っ頓狂な声が漏れた。

「……はぁ!?」

「うわぁ!?いきなり大声出すなよ……」

「あ、すまん。いや、待ち合わせしてたやつから突然ドタキャンされ――――」

「きゃあああああああ!よ、避けて―――――っ!」

 ぼうっと転移門が青く光ったかと思うと、そこから飛び出てきたのはキリトの待ち人であるかの有名な血盟騎士団副団長様――――まあ要するにアスナだが――――は地上より一メ
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ