クズノハ提督再会
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水平線より光が奔り始める頃。葛葉は就任初日に提督執務室に備え付けた簡素なベッドを這い出た後、カーテンを緩慢な動作で開いた。
平日は大学の授業が終わり次第日帰りで、土日や祝日は鎮守府に泊りがけで職務をこなす。それが葛葉がのこの二週間の日常である。
「しれーかーん! ちゃんと起きてるー?」
執務室の扉から元気の良い声が響いた後、間髪入れず扉も元気良く開く。
「……雷、もう少し声を抑えてくれといつも言ってるだろ? 朝は弱いんだから」
「ダメよ、司令官油断するとすぐに二度寝しちゃうじゃない」
休日の朝は決まって雷が執務室へと赴き、油断すれば昼過ぎまで寝続ける司令官の起床を確認することになっている。
「着替えはここに置いておくわ。あと、顔洗ったら寝癖も直すわよ。司令官いつも身だしなみに疎いんだから……」
葛葉が初めて鎮守府の扉を開いてから二週間程しか経っておらず、この日を合わせて未だに三回しか鎮守府で夜を越す機会が無かったのだが、雷は慣れた様な手捌きで葛葉の着替えを用意し寝癖を整えた。
「ゴホゴホ……いつもすまないねぇ……こんなーー」
「それは言わないお約束よ? 司令官」
「雷……ちょっとだけ早かった」
葛葉の寝癖が整い終わると二人は朝食の香り漂う食堂へと向かった。
「あ、おはようなのです司令官さん」
食堂の厨房では大本営のマスコット艦『ぷかぷか丸』が刺繍されたエプロンを着けた電が味噌汁の入った鍋をかき混ぜていた。
「ありがと電! あとは私がやっておくわ」
「では私は食器を持ってーー」
「あとは私がやっておくわ」
「りょ、了解なのです」
雷は電からエプロンを受け取ると、食器戸棚から三人分の器を取り出した。
「……危うく余分な食器代がかかるところだった。グッジョブだ雷」
「あの子、何も無いところで転ぶから……」
葛葉と雷は、電に聞こえぬよう声を潜めて呟いた。
三人揃っての朝食を済ませると、葛葉は玄関へ郵便物を取りに向かった。大抵は勧誘やチラシなどの取り留めも無い物ばかりだが、時々重要な伝令が届くこともある為毎日こまめに確認している。
「今日は……何かあるかな?」
葛葉は一人呟きながら、玄関の扉を開けてポストへと向かった。
「ん? おいおい!」
ポストの中……ではなくその下には、まだほんの少しだけ残っていた眠気も即座に吹き飛ぶような物……正確には者が倒れていた。
「だ、大丈夫か!?」
「ぅ……ん」
黒い帽子、日本人離れした白い肌、泥まみれの見慣れたデザインのセーラー服、そして土埃を被っても尚美しく輝く白銀色の髪。それは紛れもなく、一週間程前にこの場所で出会った
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