第七章
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ゃあ信じてあげる」
「有り難う」
「けれど洋子を裏切った時は」
その首筋を掴んだ。そして下から見上げる。
「わかってるでしょうね」
「う、うん」
そんなやりとりがあったのだ。早苗は今その時のことも思い出していた。
「幸せになりなさいね、洋子」
優しい顔で洋子に対してそう声を送った。だがそれは洋子本人には全く届いていなかった。
「待ちなさいよ!」
「待ったら何かくれるの?」
「拳骨あげるわよ!だから待ちなさい!」
「拳骨なんかいらないな」
「じゃあ何が欲しいのよ」
「洋子君の日記が欲しいな。毎日交換してよ」
「それじゃあそこになおりなさい!」
「うん」
「覚悟!」
そこに洋子の鞄が飛んで来た。しかしそれは友一に受け止められてしまった。
「なっ」
「洋子君の癖はもうわかってるから。これ位はね」
彼はにこやかに笑ってそう言葉を返した。
「もう何でもないさ」
「は、離してよ!」
逆に捕まってしまった洋子は必死に鞄を取り返そうとする。しかしそれはかなわなかった。友一はその長身を生かして小柄な洋子の手の届かない場所に鞄を持ち上げていたのだ。
「返して欲しい?」
「それがないと何にもできないじゃない!その日記だって・・・・・・あ」
ここで取り返しのつかないことを言ってしまったのがわかった。
「しまった・・・・・・」
顔がまた赤くなっていく。そして動きも止まってしまった。
「それじゃあ毎日つけてくれるんだね」
「え、ええ」
彼女は頷くしかなかった。自滅してしまったのを認めざるを得なかったからだ。
「よかった。それを待ってたんだよ」
「仕方ないわ」
洋子は憮然としてそう返した。
「こうなったら。毎日よね」
「うん。交代でね」
「いいわ。じゃあそれで」
「もう一つお願いがあるんだけれど」
友一は洋子に鞄を返しながら言った。
「何かしら」
「デートしてもいいかな、これから登下校の間」
「何で?ずっと前からつきまとってたじゃない」
「そうじゃなくてさ。今度は二人で」
「・・・・・・もうしてるじゃない」
「じゃあいいんだね」
「ええ」
彼女はそれに頷いた。
「仕方ないわ。ただし」
「ただし?」
「あまりベタベタしないでよね。私だって恥ずかしいんだから」
少し友一から間を置いた。そして腕を組んで無理に照れを隠しながらそう言った。
「わかってよね、それは」
「僕は恥ずかしくはないよ」
「私は違うのよ」
「いいじゃない。今までもそうだったんだし」
「あれはあんたが」
「駄目かな、やっぱり」
「え・・・・・・」
友一は洋子の否定的な様子に少し寂しい気持ちになったようであった。
「僕、洋子君と一緒には歩いちゃ駄目なのかな、やっぱり」
「そ、そん
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