第一部
第一章
二人の仕事(2)
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ページが、ぎっしりと埋まりそうだった。
そして。
「……書けた。」
どれほどの時間書いていたかもわからない。一時間ほども書いてた気がするけれども……。つい白熱してしまっていたボクはゆっくりと筆を置き、書き綴った内容を一通り見直してみた。
出来事はもちろん、ボクの気持ちも今日に限ってはたくさん書かれていて。今日はいろんな想いが巡っては消えて、解消されてはまた巡っての繰り返しで。その一つ一つというわけじゃないけど。でもたくさんの想いについて、いろいろ書き記されていた。
でも、それだけじゃない。それだけじゃないどころか、大体はある一人のことについて書かれていて……。
……恭夜くんのことで、半分くらい埋まってるね。
ふと見返してみれば、数行仕事のことについて書かれているかと思えば、すぐに恭夜くんの名前が顔を出す。そのまま数行連ねて、仕事への思いについて書かれてるなーなんて思ってると、またすぐに恭夜くんのことについて書かれ始めて……。無意識のうちに恭夜くんのことについて書いているみたいな……そんな感じがする。
ふと気づけば、恭夜くんのことばかりを考えていて……。いつからだろう。ずっと気になってたど、ようやく最近になってこれが『好き』の気持ちだってわかった。
今まで『好き』なんて気持ちに触れることなんてなかったから……。触れる機会なんて、これからもないんだろうなって。そう、ずっと思ってた。
でももう、自分の心に嘘をついてまで否定したりしないよ。否定したって。どうせ、いつでも恭夜くんのこと考えちゃってるから……。
「……」
日記を置いて、机に腕を乗せて顔を突っ伏す。横を向いて、ランタンをじっと見る。
……大好きな彼のことで埋まっていく日記。
このまま、どこまで埋まっていくのかな。最後のページの前まで。きっと恭夜くんの名前が消えることなんてないけど。
ボクは顔を上げ、椅子から立ち上がって、机上に灯るランタンの火を鉄のフタで覆い消した。少し、薄暗くなる部屋。
うん……明日も忙しいし、もう寝よう。
少し重い足腰を上げてベッドまで移動し、腰かけ、脇の台上でも部屋を仄暗く染め上げるランタンの灯火をフタで覆いかぶせて消す。パッと火は消え、部屋は一瞬で暗く闇に染められる。
部屋の窓から差し込む明かりは、ほとんど唯一と言ってもいい。だけど、煌びやかな灯りを放つ巨大なビル。家の中を、部屋の全景を映し出すくらいには明るく染める。
「……」
ボクは腰かけたベッドに転がるようにして横になった。暗い天井。真っ白い壁と、点くことはない電気式の吊りランタンだけがボクの視界に映り込む。
恭夜くん……。
目を閉じる。
明日は、恭夜くんとちょっとしたお仕事が待ってる。今日よりは、楽なお仕事。明日も……恭夜くんと一緒にお仕事。
恭夜くんも……ボクのこと好きでいて
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