第一部
第一章
二人の仕事(2)
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せていて。夢や希望もわくわくも感じられない世界しか浮かんでこなくて。
どんな世界なんだろうなぁ……。
「……」
恭夜くんと……一緒に行けたら。
色褪せた姿で色褪せない思い出が描かれた絵日記に視線を落とすボクの頭にふと浮かんでくるのは、恭夜くんの笑っている姿。その隣で笑っている、ボクの姿。楽しく笑ってるボクたち二人の姿が、ボクの目の前の絵日記に重なっては鮮明に色褪せることのない映像となってボクの脳裏に焼き付いていく。
「……」
絵日記から視線が逸らせなくて。やがて、熱くなった目頭から滴った一滴の滴が絵日記を濡らした。
「あっ……」
ボクは咄嗟に右手で滴を拭って、近くに置いてあった布で拭き取った。それから布を掴んで、滴が落ちたところを静かに押し付けるように拭く。
だけれども、一滴。また一滴と、ボクの目からは滴が落ちて……。
「きょうやぁ……」
ボクの両方の目から、堰を切ったように涙があふれ出して止まらなくなった。
なんで……なんで!こんなに苦しまなきゃいけないのっ……?ボクだって……こんな世界に生まれたくなかったよっ!
自分でも驚くくらいに押さえきれない溜めこんでいた想いが、堰を切ったように溢れ出す。心の中に溜めていた想いは、涙となって幾筋も目尻から頬を伝って、机。ボクの腕、服を濡らしていく。布が握られた手に力が篭って、震える。
「えぐっ……ぐずっ……」
ここまで涙が止まらないのもどれくらいぶりだろう……。ここ最近じゃ、こんなに泣く機会なんてなかったから。きっと、だいぶ前のこと。
恭夜くん……ボクのこと、どう思ってるの?好き?嫌い?それとも、どっちでもないのかな……。
「ひっく……」
次々と自分自身への問い掛け、世界への問い掛けが巡り巡ってはまためぐり返してくる。神さえにもぶつけたくなるこの想い。止まらなかった。
「……」
それからようやく落ち着いたのは、家の溜め水で体を今日の汗を洗い流してからしばらく経ってのことだった。髪を洗って、体も念入りに洗って。足が気持ち悪かったこともあったから、足先までしっかり洗って。しばらくおふろ場で自問に耽りながら過ごしてから、部屋に戻って布団を敷きなおして……さっきと同じように椅子に座った時には、もうだいぶ落ち着いていた。
今は筆を右手に携えて、さっき書けなかった日記に文字を連ねている。
……仕事で得られたものは何もなかったけど、明日は何か変わるかもしれない。
日記に、思い浮かんだ今日の出来事、想いを書き綴っていく。ボロボロの鉛筆を走らせ、間違えたところは横に線を引いて修正して。今日の出来事は綴られていく。
いつも、挫けてばっかだけど……。でも、きっと未来は今とは違う、もっと素敵な世界に変えられるって信じてる。諦めないよ……ボクは。
素直に思った気持ち。出来事。今日は見開き2
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