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軽い男 堅い女
第六章
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「一日だけ。一行でもいいから」
「・・・・・・まあそれ位なら」
 ちらりと片目で友一を見ながらそれに応えた。
「いいわ。書いてあげるから感謝しなさい」
「本当!?」
 友一は洋子にそう言われ飛び上がらんばかりに喜んだ。
「やっと洋子君が愛の告白を!やったあ!」
「おっ、稲富に遂に彼女が!?」
「御相手は川口か」
「な、なななななななななななな」
 丁度そこに登校して来る同級生達に言われ洋子はその顔を真っ赤にさせて手を大きく振り回してそれを否定しようとする。
「私はそんなこと」
「交換日記してくれるなんて。夢みたいだ」
「だからそれは一日だけだって言ってるでしょ!」
「その一日が二日になり三日になりやがて・・・・・・」
「何かいい話だなあ」
「冗談じゃないわよ、どうしてそうなるのよ!」
「だって今交換日記するって言っただろ」
「それはこいつがあんまりしつこいから・・・・・・」
「けどやるんでしょ」
「仕方なくよ!何で皆そうやって私とこいつを・・・・・・」
「顔が真っ赤なのが何よりの証拠」
「あんたが言うな!」
 顔を真っ赤にさせたまま友一を追って学校に入る。だが逃げる友一にも追う洋子にも本当に逃げたり追い掛けたりする様子はなかった。何処か楽しんでいた。
「うまくいったみたいね」
 早苗はそんな二人を自分の教室から見ながら一人呟いていた。
「本当に。世話が焼けるんだから」
 そう言って一人苦笑した。そしてあの時のことを思い出していた。

「あれ、洋子君は?」
 その時友一は洋子を待って部室の側で待っていたのだ。そこに早苗だけが来たから残念そうな声を出したのだ。
「君には悪いけれど用はないんだ。御免ね」
「前は用があったのにね」
 早苗はそんな彼の言葉を笑って送り返した。
「あの時のこと?」
「ええ」
 彼女は頷いた。
「私に振られて次の日にはもう別の女の子に声をかけていたわね」
「まあね」
 友一は悪びれずそれに頷いた。
「あの時はね。それでいいと思っていたんだ」
「あの時は?」
「ああ。今はね、違うけれど」
「違うの」
 早苗はそれを聞いて少し考える顔をした。
「それは洋子のことね」
「うん」
「じゃあ洋子のことは本気だと思ってもいいのかしら」
「今までだって本気だったよ」
 彼はそう言い返した。
「君のことだって。あの時は本気だったんだ」
「そうだったの」
「何かね、好きな人がいると。言わずにはいられないんだ、昔から」
「けれど振られたらそれでお終いなのね」
「今まではね。けれど洋子君に気付いた時は全く別だったんだ」
「別だったの」
「そうさ」
 彼は答えた。
「何か。本当に一目見た時から振られてもいいと思ったんだ。何度でもアタックしてやるっ
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