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真鉄のその艦、日の本に
第十一話 人として、人でなしとして
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えた。
格好つけて、悲鳴を我慢などできなかった。
喉がヒリヒリと痛むまでに、半狂乱になって叫んだ。

普通の人間ならば死ぬような電圧、そして帯電時間。拷問する側は遠沢の生命力を分かっていた。普通なら死ぬような事も、こいつにはやっても良い。そう考えて更に苛烈な拷問を加えてきた。

「あぁぁああああああああああ」

一時間も高圧電流を流され続け、遠沢にある思いが生まれた。

“死にたい”

拷問を“大丈夫。死にはしない”と自分を励まして耐え抜いた遠沢は、この時は死ぬ事のできない自分の身体を心から呪った。死ねば楽になれる。でも私は死ねない。この苦痛は、死ぬよりも辛い。死ぬ事が、一番辛いと思っていた。でも違う。死ぬ事はそんなに苦しくない。苦痛を受けながら生きねばならない事こそが辛い。
そこまでして、自分は生きたいのだろうか?
工作員としての、この人生を。

遠沢の目から涙がこぼれた。


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不意に、電流が止んだ。
機械の故障らしい。機械が壊れるほどの拷問とは、何ともイカれている。遠沢は壊れていないのに。

「はぁ……はぁ……」

唐突に訪れた休息の時間。
ぐったりとして、自分の身体を縛る、フレームだけのベッドに横たわる。
悪態をつきながら機械を修理する敵の姿が、ぼんやりと遠沢の視界に入ってきた。

死ね……

遠沢はぼんやりと思った。
この一言が、すっかり壊されたはずの遠沢の心に火を灯した。

死ね……死ね……死ね……

遠沢は自分の傷んだ身体の中に、何かがうごめくのを感じた。熱い滾りが、自分の中で大きくなっていく。

死ね……死ね……死ね……死ね……
「死ねっ!!」

掠れた声で叫んだ時、遠沢は人間ではなくなった。本当の“化け物”になった。


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次に日本に帰ってきた時、遠沢は確実に、自分が失ったのを感じた。
どんな酷い仕打ちでもできてしまう人間が恐ろしかった。それ以上に、そんな醜い“人間”ですらなくなった自分自身が、恐ろしかった。



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「あなたのトラウマ、見ーつけた」

遠沢の頭の中に、風呂元の声が響いた。
実に嬉しそうな声だった。

「何度でも何度でも、繰り返し体験させてあげる。朝鮮半島での、あの拷問部屋!!」

次の瞬間、遠沢は自分の記憶の中の、あの暗く湿った拷問部屋に居た。

「なっ……」

遠沢が戸惑う間もなく、電流が走る。
全身の神経に、無数の針が突き刺さった。

「……ぎゃぁああああああああああ」

遠沢は絶叫した。



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「おい、遠沢!
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