第十一話 人として、人でなしとして
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ないんだから。」
相手の将校の愚痴を聞いているうち、遠沢は悲しいな、と思った。この将校は暮らしの為に働いているのに誰にも認められない。チンケなナショナリズムと現実の間に挟まれて、現実を見ようともしていない連中に責められる。人でなしと詰られる事の多い自分たちと同じではないか。
そういった同情、共感。それが命取りになったのかどうかは、遠沢には分からない。
遠沢は身柄を拘束されてしまった。
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暗く湿った、臭い部屋に遠沢は両手を天井に縛られていた。ライトの光が眩しい。服は全て剥ぎ取られた。捕まるまでに12人の敵を殺したが、拘束そのものは避けられなかった。よって、こんな惨めな姿で縛り付けられている。
捕虜の扱いの規定、人権擁護の国際社会のルールは一応、存在するが、そんなものは今関係なかった。敵は“人間”ではない。化け物だ。殺すべき生き物だ。だから人権も何もあったものではない。
違法?違法というなら、スパイ行為も違法なのだ。
「ぐ……あッ…………あああッ……」
どこの国の工作員なのか。協力者は誰か。
そういった事を聞かれ、勿論答えなかった遠沢は拷問にかけられた。が、最初から拷問される事自体は決まっていただろう。中共の敵偵処からしたら、若い女が捕まったのだから、凄惨なゲームを楽しむ事は決定事項だった。
ひとまずされた事は爪剥がし、殴打、水責め。どれもこれも、平気で居られるような仕打ちではなかった。が、遠沢はそれ以上の苦痛を味わった事があった。あの事故の怪我と、幸せ草の投与。それを知っているからと言って、拷問の苦痛が薄れる訳では無かったが、しかし生来の我慢強さもあいまって、この程度の仕打ちで情報を漏らしはしなかった。この程度では死なない。そう思うと、気持ちを強く持てた。
ビシッ!
「ウウッ……」
バシッ!
「グウッ……」
ゴシゴシ
「あぁぁあああああッ…………!!」
次に始まったのは鞭打ち。古典的だが、有効な手段である。細い鞭に打たれる衝撃は重く、遠沢の華奢な身体がみるみる内に傷だらけになっていく。この鋭い痛みは、何度か遠沢を失神させた。傷に塩を塗り込まれた時は、悲鳴を堪え切れなかった。
拷問担当の連中は、遠沢の回復の早さに気づいた。異常だった。遠沢の身体についた傷はみるみるうちに塞がっていく。
化け物だ。
華奢な女をいたぶっても、何の躊躇いもない化け物達は、遠沢を化け物と呼んだ。
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「ぎゃぁああああああああッ!!」
「あーーーっ!あぅーーーっ!」
拷問は電気ショックに移行していた。
全身の神経に針を刺され続けるような痛みは、気が狂わんばかりの苦しみを遠沢に与
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