第十一話 人として、人でなしとして
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後である。
こうして、東機関での日々が始まった。
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事故以来、遠沢は自分の変化が怖くなった。
学力が上がった。習った事がすぐ理解できる。自分でも不自然に思うくらい進度が上がり、一年足らずで中学の内容などは全て終わらせてしまった。
体力も上がった。こちらは学力以上にびっくりした。そんなにスポーツは得意では無かったのに、スポーツテストの数値は高校生男子の基準でもオールAに。機関の大人と柔道の試合をしても、全く相手にならない。遠沢が軽く大人たちをいなしてしまう。明らかにそれは異常な光景だった。
「……どうやら、私たちが投与した薬は、あなたに効きすぎたようです。」
上戸は遠沢に言った。
「……もうあなたは普通の人ではありません。それは分かりますね。」
「……はい」
遠沢は頷いた。自分でも自分が恐ろしくなっていた。もう元には戻れない。漠然と、そんな気がしていた。
「……でも、あなただからこそできる事も、この世にはあるのよ」
あれよあれよと、気がついたら、こうして遠沢は東機関の工作員になっていた。
13歳の遠沢には、親代わりの上戸の言うことに逆らう選択肢は無かった。逆らったとして、どうなったかは分からない。やはり、選択肢は無かった。遠沢は今でもそう思っている。
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「朝鮮半島へ?」
「ええ、中共が朝鮮半島にどれだけの兵力を割いているか確かめてきて」
工作員として実戦投入され始めてから3年目の、18歳の時。遠沢は中共の支配下にある朝鮮半島に行く事になった。この時には、何故か上戸もメチャクチャに見た目が若くなっていた。自分自身にも幸せ草を使ったらしい。そのせいで暫く休んでいたが、復帰した上戸は実に若く美しく、そして恐ろしくなっていた。上戸はただの上司ではなく、戦士としても一流になっていた。
「分かりました。すぐに行きます。」
その作戦は遠沢が初めて実行するハニートラップの作戦だった。
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遠沢がターゲットにした相手は、実にうだつが上がらなさそうな人民解放軍利川基地の、朝鮮系の将校だった。流暢な中国語、そしてプライベートでは朝鮮語で話しかけ、一気に接近した。
それほど一気に接近する気は遠沢には無かったが、相手の側が女を求めている様子だった。見た目は全く好みではなく、身体を重ねるのも苦痛でしか無かったが、そんな自分の本音をおくびにも出さないくらいには、この頃の遠沢はよく訓練された工作員だった。
「親族からは、中共に媚びるのかと言われるし、職場では朝鮮系だと言って虐められるし、大変だよ。せめて家族には労って欲しいよ、独立運動なんかで飯は食え
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