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真鉄のその艦、日の本に
第十一話 人として、人でなしとして
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とやってられなかった。複製人間の連中にも腹が立つし、東機関にも腹が立つ。どうして、こんな!

中野をボコボコにしていると、ズボンの裾を掴まれた。遠沢が四つん這いのままで、長岡のズボンの裾を引っ張っていた。

「やめて下さい……中野さんを殴ってもどうにもなりませんから……」
「遠沢……」
「はぁ……さすがに堪えましたね、あれは……」

遠沢はうつ伏せに崩れ落ちる。
長岡はすぐさま手を貸して、仰向けに寝かせてやり、膝を立ててやった。楽な姿勢である。

「……いってぇなぁ……」

長岡にボコボコにされた中野は端正な顔を鼻血で汚し、顔をしかめていた。
顔をしかめながら、その手に拳銃を持った。

「なぁ、遠沢聞いてくれ」
「……何ですか……」
「俺、この任務から降りる」

中野の突然の言葉に、遠沢は少し戸惑ったが、すぐに穏やかな表情に戻った。

「そうですか……私も降りたいです……」
「おいおい、お前はしっかりしてくれよ。俺はどっちにせよ耐用年数あと5年ぽっきりだからな。でもお前はまだ、生きていかなくちゃならんだろ。生きていく上で東機関は無視できないだろ?」
「そうですね……それも悲しいですけど……」
「あいつらと一緒に居たらな、俺も複製人間だし、何だかこう、あいつらの事が敵に思えなくなる時があった。こんな俺が東機関に居ちゃ、いつか俺も何かやらかすよ。あいつらと違って、東機関を潰したいとも思わねぇけど……協力したいとも思えなくなった。」

中野は銃口を、自分の頭に向けた。
長岡は中野が何をしようとしているかに気がついた。

「おい!何する気だ!止めろ!」

長岡が中野に飛びかかるが、足蹴にされて吹っ飛ばされる。中野は笑っていた。笑いながら、銃口を自らに向けていた。

「日本の役に立つ為だけに生まれ、生きてる間はまずまず、役に立った自信はある。……あの世では、もっと好き勝手するよ。やっと自由だ。」
バァーーン!

中野は引き金を引き、頭から血を吹き出して絶命した。長岡は蹴飛ばされた姿勢のまま、口を開けてワナワナと震えながらその光景を見ている事しか出来なかった。

「死ぬなんて……良いなぁ……私は死ぬ事も出来ないのに……」

遠沢は呟いて、ぐったりと寝たまま動かない。
長岡も、そのままへたり込みたかった。
が、それはできない。
もう幹部……テロリスト達は殆どが死んだ。
この建御雷の叛乱は、収束に向かっていると言えよう。この艦に残って、生きているのは、長岡と遠沢と、あと一人だけである。

その“あと一人”は、長岡がどうしても決着をつけねばならない相手だった。

長岡は自分を奮い立たせて、重い腰を上げる。
床に落ちている拳銃を拾い、ポケットに入れる。

「おい、遠沢」

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