第十一話 人として、人でなしとして
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罪じゃい!一体何人死んだと思ってやがる!今更俺は違う、許して下さい、そげな理屈が通る訳なかろうが、このボケ!」
「すみませんすみませんすみませんすみません…………」
長岡に詰られながらも、脇本は土下座して震えて許しを乞うばかり。怒鳴りながらも、長岡は段々と脇本に同情し始めていた。自分が無い。周囲に流される。流された結果、とんでもない事をしでかす。それが、どうしようもなく弱い、他人の話だとは長岡には思えなかった。例えば、二神島海戦で死んだ曹士達に、「なぜさっさと敵ヘリを撃ち落とさなかった?」と聞かれれば、自分は「俺はそうすべきだと言ったんだが……」と言うだろうが、それで曹士達が納得するだろうか?結局、彼らから自分は、「俺たちを見殺しにした幹部達の一人」と思われるだろう。自分一人の意思なんて、集団の中では紛れて消える。そして集団に全く帰依せず一人で生きるというのも、それはそれで不安にならずには居られない……
「なぁ、お前の……確かにお前に人は殺せそうもないわい、だけどの……その片棒を立派に担いでしもうた時点で、お前は罪人なんだけん」
土下座して頭を床に擦りつけて震えている脇本に長岡は歩み寄り、膝をついて語りかける。
「だから、何も無しに許されるはずは無いんだ。だけどの、かといってお前をこのまま殺すんも気持ちが良くはないわい。だからの……」
その時、長岡の肩越しに触手が飛んできた。
その触手は鋭く尖って脇本の右手を抉り、手首から先を切り裂いた。
「うぎゃぁあああああああああ」
「!!遠沢ッ!」
悶絶する脇本。長岡は背後の遠沢を振り返る。
「遠沢ッ!こいつは無抵抗だろーがや!無抵抗の、こんな情けない奴を嬲るのは止せ!」
「無抵抗?違いますよ副長。これを見て下さい。」
遠沢は触手を器用に動かして、千切れた脇本の右手を拾った。その右手には拳銃が握られていた。どうやって隠していたのか、長岡には全く気がつかなかった。
「同情を誘って、無抵抗を装って、滑稽ですね……泣き落としとは……」
「…………」
無くなった右手を押さえて転げ回る脇本を見て、長岡は怒りが湧いてきた。同情していた。また俺は、騙されたのか。いや、こんな奴らに同情するのがおかしい。そもそもおかしい。こいつらは人を殺すのに何のためらいもない。自分の信頼をのっけから裏切っていた連中なのだ。絶対に許さないと決めたはずだった。それが……少し泣かれるだけでつけ込む隙をくれてやってしまうとは。情けない泣き落としに走った脇本なんかより、自分自身への怒りが湧いてくる。
「脇本ォ!お前ホンマに情けねぇ奴だなぁ!自分の誇りもかなぐり捨てて騙し討ちか!卑怯だのぉ!お前みたいな奴ぁ生かしちゃおけんわい!複製人間か何か知らんが、そんなのはどうでもいい!卑怯者
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