第十一話 人として、人でなしとして
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第十一話 人として、人でなしとして
「うわぁあーーーっ!」
長岡を営倉にぶち込む時、気を遣ってくれた名越船務長。その人の良さそうな顔が恐怖に歪み、手に持ったマシンガンを撃ちまくるが、迫り来る触手にはたかがマシンガンでは心もとなく、鋭く尖った触手がその胸を深々と貫いた。
「ごぁっ……」
口から大量の血を吐き出して、名越船務長はぐったりと動かなくなった。触手はスルスルと引っ込んで、遠沢の下へと帰っていく。
返り血にまみれた遠沢は表情一つ変えなかった。
その後ろに、何とも言えない表情の長岡がついてきていた。
遠沢は圧倒的である。
幹部達が襲いかかるが、全くそれを寄せ付けない。そもそも、人体改造を施された辻達でも一瞬で屠られてしまったのだから、皮下装甲を仕込んでいる訳でもない潜入型の複製人間達にはもうどうしようも無いだろう。遠沢は遠慮会釈なく、堂々と、ゆっくりと歩みを進めていく。機関室で長岡と決めた、荷電粒子重砲の管制室を陥落するという計画はどこへやら、遠沢はCICに向かって歩いていた。回りくどい事はせず、幹部達が集うCICに一直線。明らかに、皆殺しにする気であった。
ガチャッ
遠沢と長岡の進むその先に、マシンガンと拳銃が投げ出された。ハッチの陰から、両手を上に挙げて脇本航海長が出てきた。太い眉、鷲鼻、クリクリとした大きな目は充血し、唇は震えていた。
「も……もう嫌だ…………助けてくれよ……命だけはとらないでくれ……」
幹部達の中で最も気が弱く、大人しかったのはこの脇本だ。気が弱いというのは、作られた記憶でもキャラでもなく、この男の本性だったようだ。長岡はイマイチ当てにならなくなった自分の記憶の、それでも当てになる部分を振り返った。建御雷乗艦前の研修でも、いつも本木にバカにされていた。そんな気がする。
「俺……俺は廃棄処分にさえならなかったら良かったんだよぉ……例えこの命が短くったって、その命を穏やかに全うできたら良かったんだぁ……本木も風呂元もどうかしてる……俺は日本を変えたいとか、そんなんじゃなくて、普通に普通の生き方がしたかっただけなんだよぉ……降参だっ……降参…………もう俺もこんなのまっぴらなんだぁ…………」
脇本は床に両手をついて、顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、懇願の目つきで、冷たく尖った遠沢の顔を見つめる。遠沢は実に、モノを見るような目つきで脇本を睨んでいるが、その啜り泣きに対して一瞬で命を奪うような事もせず、歩みを止めて見下ろしていた。長岡は、脇本の情けない姿を見るに見かねた。遠沢の後ろから前に出て、脇本を怒鳴りつけた。
「うるせぇっ!そんなに嫌だったんなら、どうして本木らと袂を分かたんかったんや!それが出来んかった、仲間と離れる勇気が無かったんなら、結局お前も同
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