第四章
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
っていた。
洋子はその暗くなった学校を見回していた。そしてある程度見回したうえでほっと安堵の息を漏らした。
「これでいいわ」
「いいのね」
「うん。今まで鬱陶しくて仕方がなかったのよ」
その大きな目を少し怒らせて言った。
「うざくて。私の他にもどうせ声をかけまくってるんでしょうけれど」
「今はそうじゃないらしいわ」
「そうなの」
「稲富君ね、一人の女性に声はかけるけれど二人の女性には声をかけないのよ」
「そうだったんだ」
「だから今声をかけていたのは洋子だけなのよ」
「ふうん」
それを聞いて何故か複雑な気持ちになった。
「そうだったんだ」
「どうかしたの?」
「え、いや」
それを聞いて慌てて首を横に振った。
「何でもないわ、何でも」
「わかったわ」
「もういなくなったし。これで勉強にも部活にも専念できるし」
「そうね」
「ねえ、前から行きたかったラーメン屋さんがあるのよ。一緒に行かない?」
「いいわよ」
「それじゃあ今から行きましょう。とっても美味しいんだって」
洋子は朗らかな声で早苗を誘って学校を後にした。そこに友一はいなかった。それが洋子にとってはこれ以上にない喜びであった。今のところは。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ