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軽い男 堅い女
第四章
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っていた。
 洋子はその暗くなった学校を見回していた。そしてある程度見回したうえでほっと安堵の息を漏らした。
「これでいいわ」
「いいのね」
「うん。今まで鬱陶しくて仕方がなかったのよ」
 その大きな目を少し怒らせて言った。
「うざくて。私の他にもどうせ声をかけまくってるんでしょうけれど」
「今はそうじゃないらしいわ」
「そうなの」
「稲富君ね、一人の女性に声はかけるけれど二人の女性には声をかけないのよ」
「そうだったんだ」
「だから今声をかけていたのは洋子だけなのよ」
「ふうん」
 それを聞いて何故か複雑な気持ちになった。
「そうだったんだ」
「どうかしたの?」
「え、いや」
 それを聞いて慌てて首を横に振った。
「何でもないわ、何でも」
「わかったわ」
「もういなくなったし。これで勉強にも部活にも専念できるし」
「そうね」
「ねえ、前から行きたかったラーメン屋さんがあるのよ。一緒に行かない?」
「いいわよ」
「それじゃあ今から行きましょう。とっても美味しいんだって」
 洋子は朗らかな声で早苗を誘って学校を後にした。そこに友一はいなかった。それが洋子にとってはこれ以上にない喜びであった。今のところは。




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