第四章
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「すぐにわかるから。それじゃ」
そう言いながら部活を後にした。
「後で呼びに来るから。少し待っててね」
「ええ」
こうして早苗は部室を後にした。洋子は一人になると部室の端に置いてあった椅子に座った。何の変哲もないパイプ椅子であった。かなり古くあちこちに錆があるがそれでも座った。そして考え込んだ。
「本当に大丈夫かなあ」
正直かなり不安であった。
「何かいつも大事な時は早苗に助けてもらってるけど」
二人はそうした関係なのであった。
小学校一年の時に同じクラスになってから付き合いははじまった。遊ぶ時はいつも一緒だったし中学校も高校も一緒であった。部活も中学校でも高校でも同じバレー部であった。早苗は洋子に何かあればいつも黙って助けておくれた。洋子も早苗が困っている時には側にいた。そうした二人であったのだ。
だが今回は何か様子が少し違っていた。早苗はこうした時はいつもなら感情を露わにして相手に飛び掛からんばかりになる。しかし今回は不自然なまでに冷めていたのだ。
「どうしたんだろう、早苗」
それは洋子にもわかっていた。彼女はそれに関して不思議に思った。だがそれでも自分自身のことはわかってはいなかったのである。早苗に話している時の自分の姿を。それがわかれば早苗のそうした態度もわかったかも知れない。いや、まだ彼女には無理であろうか。
「何かあったのかな、今日」
その何かにも気付いていないのである。そのことに関して全く知らない者はある意味において無敵である。何故なら恐れも全く知らないからである。
自分のことより早苗のことを考えはじめた。そこで部室の扉が開いた。
「誰!?」
「私よ」
声は早苗のものだった。それを聞いた洋子は身構えかけていたがそれを解いた。
「何だ、よかった」
そう言って安堵の息を漏らす。
「あいつかと思ったじゃない。驚かさせないでよ」
「驚きたかったの?」
「まさか」
それには首を横に振った。
「馬鹿なこと言わないでよ」
「まあそうだけれどね」
やはり早苗の態度は素っ気無かった。そして彼女は素っ気ないまままた言った。
「それで彼だけれど」
「どうなったの!?」
洋子は思わず身を乗り出してきた。
「まだいるの!?」
「いいえ」
早苗は首を横に振って答えた。
「もういないわ。安心して」
「そう」
ほっとしたような、がっかりしたような顔であった。
「よかった」
「よかったのね」
「勿論よ」
迷わずにそう答えた。
「これで明日から元の生活に戻れるんだから。清々したわ」
「そう。それじゃあいいわ」
早苗は感情の抑制のない声でそう述べた。
「じゃあ帰りましょう。もう暗いし一緒にね」
「ええ」
こうして二人は部室を出た。確かにもう暗くな
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