第三章
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第三章
「まだよ、もう一回!」
レシーブの練習において叫んでいた。長い髪を後ろで束ね、ジャージ姿で練習していた。
「こんなのじゃ。まだ駄目よ!」
「先輩今日はやけに不機嫌ね」
一心不乱に練習に打ち込む洋子の後ろ姿を見て後輩の一人がそう呟いた。
「あの人にいつもつきまとわれてるからね。当然じゃない?」
それに別の後輩が答えた。
「いつもこっちにまで来てるしね」
「そういえばまたいるね」
「ええ」
「お〜〜〜〜い洋子くぅ〜〜〜〜〜ん」
また友一の声が聴こえてきた。見れば洋子に向けて手を振っている。
「ミサンガのこと、よく覚えておいてね」
だが彼女はそれには答えようとしない。あえて無視して練習に励む。
「ミサンガ!?」
それを聞いて後輩達が顔を見合わせる。
「一体何のことなのかしら」
「さあ」
「ほら、そこ」
それを見た洋子の同級生の一人が後輩達を注意する。
「無駄なおしゃべりはしない。練習に集中しなさい」
「はあい」
「はい、もっとしっかりと」
「はい」
「宜しい」
見れば背の高い少女であった。目は奥二重で一重にも見えなくはないがその白く細長い顔に合っていて悪くはない。それに黒く長い髪を持っていてそれが実に似合っている。彼女は稲野早苗、洋子の部活仲間であり友人でもある。洋子と一緒にバレー部のレギュラーでもあった。
その早苗に言われると後輩達も私語は止めた。そしてまた練習に熱中しだした。
「よしよし」
早苗はそれを見て満足そうに頷く。だがそれでもどうにかならないものもあった。
(それでもこっちはどうしようもないわね」
見れば友一は相変わらず洋子の方ばかり見ている。だが洋子はそれを必死に無視するふりをしていたのだ。
「どうなるのかな、これ」
そうは思っていても口には出さない。結局友一はバレー部の部活が終わるまで洋子を見ていたし洋子は無視を続けた。そして部活の後で洋子は部室に残ろうとしていた。
「彼のことなの?」
それに気付いた早苗が声をかけてきた。
「わかるかしら」
「わからない筈がないじゃない」
見れば二人はもう制服に着替えている。もう何時でも帰ることができる。
「けれどここにいても同じよ」
「それはわかってるわ」
洋子は彼女の言葉に頷いた。
「けれどね」
「けれど・・・・・・何?」
「あいつ、何でいつも私にまとわりついてくるのよ」
忌々しそうにそう言った。
「いつもいつも。確かあいつって一度ふったらもう声はかけてこないのよね」
「私の時もそうだったわ」
「そういえばそうだったわね」
「ええ」
早苗は頷いた。彼女は一年の時に友一に声をかけられた。面倒臭いので断ったらそれで終わりであった。見れば友一は次の日にはもう別の女の子に
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